気候変動や大気汚染物質が脳卒中、片頭痛などの神経疾患に悪影響を及ぼす可能性のあることが、「Neurology」に2022年11月16日掲載されたレビューで明らかになった。.気候変動がヒトの健康に影響することはよく知られているが、気候変動による神経疾患患者や神経疾患発症リスクへの影響はあまりよく分かっていない。気候変動に関与し神経系に影響を及ぼす因子には、気温上昇、大気汚染物質、感染症のパターンの変化などが挙げられる。.そこで、米クリーブランド・クリニックのShreya Louis氏らは、気候変動、大気汚染物質に関連する成人の神経疾患に関する文献のスコーピングレビューを実施した。PubMed、OVID MEDLINE、Embase、PsycInfoの各データベースに1990年1月1日~2022年3月30日に収載された刊行物から、3つのテーマ〔異常気象と気温変動(38件)、新興神経感染症(37件)、大気汚染物質の影響(289件)〕で分類した計364件の論文を同定した。.レビューの結果、極端な気温の上昇で、虚血性脳卒中の発症率が上昇することが分かった。また、気温上昇で頭痛の相対リスクが上昇していた。気温の上昇と、認知症患者の入院リスクの上昇、多発性硬化症の増悪との間にも関連が認められた。これとは対照的に、周囲温度の高さはてんかん発作のリスク低下と関連していた。.新興神経感染症については、同定された37件の研究のうち、11件が西ナイルウイルス、6件が髄膜炎菌性髄膜炎、5件が日本脳炎ウイルス、13件がダニ媒介脳炎、1件が特定不能ウイルス性髄膜炎、1件がコクシジオイデス症に関する研究であった。自然災害、社会経済活動の変化、感染症検出能力の向上などさまざまな要因が新興感染症に影響を及ぼしているが、気温上昇などの気候変動により、北米で西ナイルウイルス感染症が増加することや、欧州におけるダニ媒介脳炎の流行が遷延し、スカンジナビア半島にまで拡大することが予測された。.また、大気汚染物質、特に粒子状物質(PM2.5)と二酸化窒素(NO2)への曝露により、虚血性・出血性脳卒中のリスクおよび重症度が高まり、片頭痛による救急科の受診頻度が増加することが示された。大気汚染物質は、認知症、パーキンソン病、多発性硬化症などの幅広い神経疾患とも疫学的に関連していた。.著者らは、「気候変動や大気汚染物質は神経疾患に影響を及ぼすことが明らかであり、今後さらに影響が拡大すると考えられる。気候変動を緩和するため、神経科医や医療従事者が声を上げることが非常に重要である」と述べている。(HealthDay News 2022年11月17日).https://consumer.healthday.com/physician-s-briefing-climate-2658648674.html.Copyright © 2023 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
気候変動や大気汚染物質が脳卒中、片頭痛などの神経疾患に悪影響を及ぼす可能性のあることが、「Neurology」に2022年11月16日掲載されたレビューで明らかになった。.気候変動がヒトの健康に影響することはよく知られているが、気候変動による神経疾患患者や神経疾患発症リスクへの影響はあまりよく分かっていない。気候変動に関与し神経系に影響を及ぼす因子には、気温上昇、大気汚染物質、感染症のパターンの変化などが挙げられる。.そこで、米クリーブランド・クリニックのShreya Louis氏らは、気候変動、大気汚染物質に関連する成人の神経疾患に関する文献のスコーピングレビューを実施した。PubMed、OVID MEDLINE、Embase、PsycInfoの各データベースに1990年1月1日~2022年3月30日に収載された刊行物から、3つのテーマ〔異常気象と気温変動(38件)、新興神経感染症(37件)、大気汚染物質の影響(289件)〕で分類した計364件の論文を同定した。.レビューの結果、極端な気温の上昇で、虚血性脳卒中の発症率が上昇することが分かった。また、気温上昇で頭痛の相対リスクが上昇していた。気温の上昇と、認知症患者の入院リスクの上昇、多発性硬化症の増悪との間にも関連が認められた。これとは対照的に、周囲温度の高さはてんかん発作のリスク低下と関連していた。.新興神経感染症については、同定された37件の研究のうち、11件が西ナイルウイルス、6件が髄膜炎菌性髄膜炎、5件が日本脳炎ウイルス、13件がダニ媒介脳炎、1件が特定不能ウイルス性髄膜炎、1件がコクシジオイデス症に関する研究であった。自然災害、社会経済活動の変化、感染症検出能力の向上などさまざまな要因が新興感染症に影響を及ぼしているが、気温上昇などの気候変動により、北米で西ナイルウイルス感染症が増加することや、欧州におけるダニ媒介脳炎の流行が遷延し、スカンジナビア半島にまで拡大することが予測された。.また、大気汚染物質、特に粒子状物質(PM2.5)と二酸化窒素(NO2)への曝露により、虚血性・出血性脳卒中のリスクおよび重症度が高まり、片頭痛による救急科の受診頻度が増加することが示された。大気汚染物質は、認知症、パーキンソン病、多発性硬化症などの幅広い神経疾患とも疫学的に関連していた。.著者らは、「気候変動や大気汚染物質は神経疾患に影響を及ぼすことが明らかであり、今後さらに影響が拡大すると考えられる。気候変動を緩和するため、神経科医や医療従事者が声を上げることが非常に重要である」と述べている。(HealthDay News 2022年11月17日).https://consumer.healthday.com/physician-s-briefing-climate-2658648674.html.Copyright © 2023 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock