Kidney

「腎細動脈硝子化」所見は糖尿病性腎症早期のアルブミン尿増加およびGFR低下を予測する 北里大の研究グループ

腎病理所見の1つである腎細動脈硝子化(arteriolar hyalinosis)の重症度は、正常~微量アルブミン尿期の日本人2型糖尿病患者において、尿中アルブミン排泄量(UAE)の増加と糸球体濾過量(GFR)低下の予測因子となり得ることが、北里大学健康管理センターの守屋達美氏らの研究グループによる検討で分かった。詳細は「Diabetes Care」8月3日オンライン版に掲載された。

これまでの研究では、糖尿病性腎症(腎症)の典型的な組織所見である糸球体基底膜(GBM)の肥厚やメサンギウム領域の拡大などは、正常アルブミン尿期の段階で既に認められることが報告されている。守屋氏らは今回、腎組織変化の中でも腎細動脈硝子化に着目し、日本人2型糖尿病患者を対象に、この所見が腎症の進展予測に有用な因子であるかどうかを検証する研究を行った。

対象は、顕性アルブミン尿を有さない正常血圧の2型糖尿病患者29人(男性が22人、平均年齢49±10歳、平均GFR値119±27mL/分/1.73m3)で、15人は正常アルブミン尿(UAEが20μg/分未満)、14人は微量アルブミン尿(UAEが20~200μg/分)を呈していた。

対象患者には経皮的腎生検を行い、電子顕微鏡検査や光学顕微鏡検査によりメサンギウム拡大率〔mesangial volume fraction;Vv(Mes/glom)〕や糸球体輸出入細動脈の硝子化インデックス(index of arteriolar hyalinosis;IAH)スコア、平均糸球体体積などの組織学的な因子を算出した。8.0±3.5年間追跡し、観察開始時と終了時のUAEおよびGFRの値と関連する組織学的因子を調べた。

解析の結果、組織学的因子はいずれも観察開始時のUAEとは関連を示さなかったが、Vv(Mes/glom)は観察開始時および終了時のGFRと負の関連を示した。一方、IAHスコアは終了時のUAEと有意な正の相関を示し、GFRとは有意な負の相関を示した。なお、IAHスコアは観察開始時のUAEとGFR双方との関連は示さなかった。

また、GFRの推移をみると、IAHスコアが観察開始時に2.0未満だった患者では、観察開始時と終了時のGFRに有意差はみられなかったが、IAHスコアが2.0以上を示した患者では、観察開始時に比べて終了時のGFRは有意に低下したほか、2.0未満であった患者と比べて終了時のGFRは有意に低かった。

以上の結果から、守屋氏らは「腎細動脈硝子化は腎症に特有な所見ではないが、光学顕微鏡検査のみで重症度を判定できる。この所見は正常~微量アルブミン尿期の2型糖尿病患者における腎機能低下の有用な予測因子となる可能性がある」と結論づけるとともに、腎症の進展における腎機能の変化とIAHスコア上昇との関連を、そのメカニズムも含めてさらに詳細に検討する必要があるとしている。(HealthDay News 2017年8月21日)

Abstract
http://care.diabetesjournals.org/content/early/2017/08/02/dc17-0209

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4HDN国内ニュース8月21日配信1

日本の医療費増加に最も影響する心血管危険因子とは? 獨協医大の研究グループ

健康診断を受診した茨城県の住民を対象とした研究から、心血管危険因子の中でも「高血圧」が医療費の増加に最も影響を及ぼす因子であり、その影響度は糖尿病や脂質異常症よりも大きく、腹部肥満の有無にかかわらないことを、獨協医科大学公衆衛生学准教授の西連地利己氏らの研究グループが明らかにした。生活習慣病に関連した医療費を抑えるには、腹部肥満の有無にかかわらず高血圧の予防が肝要だという。詳細は「Journal of Epidemiology」8月号に掲載された。

これまで糖尿病や脂質異常症、高血圧といった心血管危険因子と腹部肥満が医療費に及ぼす影響は明らかにされていなかった。そこで、西連地氏らは、茨城県の健康診断を受診した住民を対象とした茨城県健康研究(Ibaraki Prefectural Health Study)のデータを用いて、肥満に関連した心血管危険因子の医療費への影響度を腹部肥満の有無別に比較検討した。

対象は、同研究の第2コホートの参加者のうち、国民健康保険に加入する40~75歳の住民4万3,469人。2009~2013年の対象者の診療報酬データを追跡し、糖尿病、LDL-コレステロール(LDL-C)高値、HDL-コレステロール(HDL-C)低値、高血圧の各心血管危険因子による医療費への影響度を腹部肥満の有無別に比較検討した。なお、腹部肥満はウエスト周囲長が男性で85cm以上、女性で90cm以上と定義した。

その結果、心血管危険因子および腹部肥満がない場合と比べた医療費比(health expenditure ratio;HER)は、腹部肥満を伴わない場合には糖尿病が1.58倍、高血圧が1.31倍、HDL-C低値が1.27倍、LDL-C高値が1.06倍であり、肥満を伴う場合にはそれぞれ1.42倍、1.26倍、1.11倍、1.03倍、腹部肥満のみで他に心血管危険因子がない場合には1.15倍であった。また、腹部肥満を伴うLDL-C高値を除いて、各危険因子と医療費との間には有意な関連が認められた。

一方で、各心血管危険因子の人口寄与割合(population attributable fraction;PAF)を比較したところ、腹部肥満を伴わない場合には高血圧が6.5%と最も高く、糖尿病(2.8%)、LDL-C高値(0.8%)、HDL-C低値(0.7%)が続き、腹部肥満を伴う場合でも高血圧が5.0%と最も高く、糖尿病(2.3%)、腹部肥満(1.0%)、HDL-C低値(0.4%)が続いた。

以上の結果から、西連地氏らは「肥満に関連するとされる心血管危険因子の中でも高血圧は、腹部肥満の有無にかかわらず医療費の増加に最も大きく寄与すると考えられる」と結論づけている。(HealthDay News 2017年8月21日)

Abstract/Full text
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0917504017300242?via%3Dihub

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4HDN国内ニュース8月16日配信1

「味噌」が血圧上昇や脳卒中に抑制的に働く可能性 日本人が長寿である一因か 広島大の研究グループ

日本人の食生活に欠かせない「味噌」を摂取すると、食塩含有量が多いにもかかわらず血圧上昇が抑えられ、脳卒中の予防効果をもたらす可能性のあることを、広島大学名誉教授の渡邊敦光氏と同大学大学院心臓血管生理医学教授の吉栖正生氏らの研究グループがラットを用いた実験で突き止めた。研究グループは、発酵熟成の過程で産生される何らかの物質が食塩の作用を抑制している可能性を想定し、「塩分摂取量が多い日本人が長寿であるパラドックスを解明する一因となるのではないか」と述べている。詳細は「American Journal of Hypertension」7月31日オンライン版に掲載された。

 

米や麦、大豆麹にして大豆と塩で発酵させて作る味噌は、昔から健康に良いものと考えられてきた。これまでの疫学研究では味噌の摂取量が多いと乳がんや早期の前立腺がん、大腸がん、肝臓がん、胃がんなどになりにくい可能性が示され、基礎研究でもその効果が証明されている。一方で、味噌の摂取は食塩の過剰摂取につながる恐れがあるとされてきたが、最近では、味噌汁の摂取頻度と血圧の間に関連は認められないとする研究報告のほか、同氏らの食塩感受性ラットを用いた実験でも味噌による塩分摂取は血圧を上昇させないことが示されている。

 

さらに、閉経後の女性では大豆イソフラボンを多く摂取すると脳卒中や心筋梗塞が抑えられることが示されているが、味噌の効果については明らかにされていない。そこで研究グループは今回、味噌の摂取による脳卒中への影響を検討するため、ラットを用いた実験を行った。

 

研究グループは、脳卒中易発性高血圧自然発症ラット(SHRSP)36匹を用いて、(1)味噌由来の2.8%の食塩を含む餌(味噌群)と(2)同量の食塩を含む餌(高食塩群)、(3)0.3%の食塩を含む普通餌(低食塩群)を摂取させ、1日に3回、63日間観察し、歩行障害や異常がみられた場合には剖検してその原因を特定した。なお、このSHRSPは、低食塩群でも血圧は200mHgを超える。

 

その結果、カプランマイヤー生存曲線で3群を比べたところ、味噌群および低食塩群と比べて高食塩群では生存率が有意に低下していた(それぞれP=0.02、P<0.001)。また、高食塩群では低食塩群よりも血圧が上昇し、早期から歩行障害などの脳卒中症状が現れたのに対し、味噌群の血圧は低食塩群との間に差はみられず、脳卒中による死亡率は低食塩群よりやや高かったものの有意差は得られなかった。さらに、高食塩群には大脳に大出血を生じたラットもあったが、味噌群と低食塩群には認められなかった。

 

渡邊氏らは、動物実験の結果をヒトに応用するには慎重さが必要としながらも、「料理の味付けを食塩から味噌を含む発酵食品に代えることで、脳卒中の発症率がわずかでも下げられるのではないか。がんを減らし、生活習慣病を改善するには、昔ながらの『ご飯と味噌汁』の食生活を再評価することが有用かもしれない」との考えを示している。(HealthDay News 2017年8月16日)

 

Abstract

https://academic.oup.com/ajh/article-abstract/doi/10.1093/ajh/hpx129/4056350/Protective-Effects-of-Japanese-Soybean-Paste-Miso?redirectedFrom=fulltext

 

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4HDN国内ニュース8月16日配信2

平均寿命や健康寿命に地域格差 医療資源の増加や生活習慣因子以外の要因も、東大ら

日本では1990年から25年の間に平均寿命は4.2歳延びた一方で、都道府県間の「健康格差」には拡大傾向がみられることが、東京大学大学院国際保健政策学の野村周平氏と主任教授の渋谷健司氏らの研究グループの調べで分かった。こうした地域における健康格差の拡大には医療資源の増加や死亡に寄与する生活習慣因子は強く影響していない可能性も示唆されたことから、研究グループは今後、格差が生じる要因を検証し、適切な対策を講じる必要があると強調している。詳細は「Lancet」7月19日オンライン版に掲載された。

 

国民皆保険制度を保つ日本は、世界でも健康政策に成功した国の1つに数えられているが、健康の増進レベルには地域格差が存在し、しかもこの格差は年々広がっていると懸念されている。研究グループは今回、世界の疾病負荷研究(The Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study;GBD)の一環として、米ワシントン大学保健指標・保健評価研究所(IHME)と共同で、1990~2015年における日本の健康指標の変化と各都道府県の健康指標の改善状況について分析を行った。

 

研究グループは、GBDの研究データを用いて死亡、疾病、外傷の315の原因と79の危険因子について発生率と有病率を調べ、各都道府県における疾病負荷(各種の健康指標)の1990~2015年の推移を評価した。健康指標には、死亡率、死亡原因、損失生存年数(YLL)、障害生存年数(YLD)、障害調整生存年数(DALY)、平均寿命、健康寿命を用いた。

 

その結果、平均寿命は1990年から25年の間に79.0歳から83.2歳へと4.2歳延びた一方で、都道府県の格差(最も長い県と短い県の差)も2.5歳から3.1歳へと拡大していた。同様に、健康寿命の格差も2.3歳から2.7歳へと拡大していた。年齢調整死亡率はこの25年間で全体では29.0%低下したが、都道府県間のばらつきは大きく、低下率が最も大きい県は32.4%、最も低い県は22.0%と開きがあった。同期間中、年齢調整DALYは19.8%減少したが、YLDは3.5%の減少に止まり、疾患や障害を抱えながら生きている人の割合が増えている傾向がみられた。

 

また、死亡に寄与する因子を分析したところ、2015年における死亡の33.7%が食習慣や喫煙などの生活習慣、24.5%が代謝系のリスクを原因としており、特に「不健康な食生活」と「喫煙」が死亡や疾病負荷と関連していることが分かった。

 

さらに、地域で健康格差が拡大している要因を分析したところ、1人当たりの医療費や人口当たりの医師・看護師・保健師の数、全死亡に大きく寄与していた生活習慣と都道府県間の健康格差との間には有意な関連はみられなかった。そのため、研究グループは「保健システム上の因子や従来の危険因子以外に健康格差を生じうる要因が存在する可能性が示唆されており、さらなる研究が必要だ」と述べている。(HealthDay News 2017年8月16日)

 

Full Text

http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(17)31544-1/fulltext

 

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4HDN国内ニュース8月7日配信2

特定健診受診率、2015年度に初の50%超も目標届かず――厚労省

厚生労働省はこのほど、2008年度から40~74歳を対象に行っている「特定健康診査」(メタボ健診)の受診率が、2015年度には昨年度から1.5ポイント上昇の50.1%となり、初めて50%を超えたことを公表した。開始当時(38.9%)に比べて受診率は大幅に増加したものの、政府が掲げる目標(70%)には遠く及ばなかった。

2015年度の特定健診の対象者は約5396万で、このうち約2706万人が受診した。受診率には保険者間でばらつきがみられ、大企業の従業員が加入する健康保険組合(73.9%)と公務員などが加入する共済組合(75.8%)では目標を達成したのに対し、中小企業の従業員が加入する全国健康保険協会(協会けんぽ;45.6%)、自営業者などが加入する国民健康保険組合(46.7%)、市町村国民健康保険(36.3%)では昨年度よりわずかに増加したものの、依然として低いことが分かった。また、受診率が高い健康保険組合や共済組合でも従業員の家族(被扶養者)の受診率は40%台にとどまった。

なお、特定保健指導の対象者は約453万人(健診受診者の16.7%)で、このうち約79万人が指導を終了し、受診率は17.5%と昨年度に比べて0.3ポイント減少。目標とする45%は達成されなかった。(HealthDay News 2017年8月7日)

厚生労働省ホームページ
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000173038.html

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4HDN国内ニュース8月7日配信1

2型糖尿病患者の腎症リスク、正確な評価には血圧手帳よりも血圧計の記録値を

2型糖尿病患者が家庭血圧計で血圧を測定後に血圧手帳に記録した報告値は、血圧計が記録した測定値に比べて正確性に欠けており、その血圧変動はアルブミン尿と関連しない可能性のあることが、京都府立医科大学大学院内分泌・代謝内科学教授の福井道明氏、牛込恵美氏、松本しのぶ氏らの研究グループの検討で分かった。2型糖尿病患者が合併する腎症リスクを正しく評価するには、血圧手帳よりも血圧計が記録した測定値を参照する必要があるという。詳細は「American Journal of Hypertension」7月31日オンライン版に掲載された。

これまでの研究で、2型糖尿病患者では外来血圧よりも家庭血圧の方が血管障害と強く関連することが報告されている。研究グループは既に、家庭血圧計が記憶した血圧の平均値と変動(変動係数;coefficient of variation)は2型糖尿病患者のアルブミン尿と関連する一方で、患者自身が血圧計で測定後に血圧手帳に記録した報告値と血圧計が記録した測定値の平均一致率は78.6%であり、血圧手帳で報告した値の方が有意に低く、変動も少ないことを見出している(Hypertens Res 2014; 37: 741-745)。

そこで今回、福井氏らは、既報の横断研究データを用いて、2型糖尿病患者自身が血圧手帳に記録した報告値(平均値と変動)が、血圧計が記録した測定値と同様にアルブミン尿と関連するのかについて事後解析を行った。

対象は、外来通院中の2型糖尿病患者276人(平均年齢65.9歳、男性が156人)。対象患者には、メモリー機能を搭載した血圧計を用いて起床時と就寝前の血圧測定(各3回)を14日間連続して行ってもらい、測定結果を血圧手帳に記載させた。

その結果、患者自身が血圧手帳で報告した早朝の収縮期血圧(SBP)は平均値および変動係数ともに、血圧計が記録した測定値に比べて有意に低かった(いずれもP<0.0001)。また、早朝SBPの平均値は、血圧手帳の報告値と血圧計が記録した測定値の双方でlog尿中アルブミン排泄量(UAE)と有意に関連したが、早朝SBPの変動係数については、血圧計が記録した測定値のみがUAEと有意に関連していることが分かった。

以上の結果について、福井氏らは「患者は血圧記録時に自身の予測した血圧値から外れた測定値を、高くても低くても削除する傾向があるため、SBPの平均値は血圧手帳と血圧計が記録した測定値による差はわずかだったのに対し、変動は両者の間で差が顕著に表れやすかったことが影響している可能性がある」と指摘しつつ、「2型糖尿病患者が血圧手帳に記載する報告値は、患者による選択が影響して不正確となる可能性があり、変動が過小評価されやすい。そのため、SBP値の変動とアルブミン尿との関連が減弱した可能性がある」と考察。糖尿病腎症リスクを正確に評価するには、血圧計で記録した測定値を参照する必要があると述べている。(HealthDay News 2017年8月7日)

Abstract
https://academic.oup.com/ajh/article-abstract/doi/10.1093/ajh/hpx095/4056619/Home-Blood-Pressure-Variability-From-the-Stored?redirectedFrom=fulltext

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Illustration of Human Internal Kidney Anatomy

拡散テンソル画像MRIで腎臓線維化の画像化に成功 糖尿病腎症モデルラットで、阪大の研究グループ

大阪大学大学院先端移植基盤医療学准教授の貝森淳哉氏と先端移植基盤医療学教授の高原史郎氏らの研究グループは、拡散テンソル画像(diffusion tensor imaging;DTI)と呼ばれる拡散MRIの一手法を用いて、糖尿病腎症モデルラットの腎臓の線維化を画像化することに成功したと発表した。腎臓の組織障害を非侵襲的に正しく評価できるようになれば、糖尿病腎症や慢性腎臓病(CKD)の予防のほか、透析患者数の減少にも寄与するものと期待されるという。詳細は「Scientific Reports」7月18日オンライン版に掲載された。

腎疾患の進行度を評価するには腎臓の線維化が重要な指標とされるが、その評価には腎生検が必要とされ、非侵襲的なMRIやエコー検査では評価は難しいとされている。これまでの報告で、拡散MRIにより腎臓の線維化を評価できる可能性が示唆されているが、評価法の確立には至っていない。特に、日本国内の透析導入原因の第1位に位置づけられる糖尿病腎症に関しては、浮腫の影響もあり、腎臓組織の線維化の評価は困難とされている。

そこで今回、研究グループは、拡散MRIを多方向から撮影する「拡散テンソル画像MRI」という撮影法に着目。より感度が高い撮影方法であるスピンエコー法と組み合わせた新しい撮影方法を開発し、糖尿病モデルラットを用いて腎臓の線維化の撮影を試みたところ、その画像化に成功した。

また、従来のMRIでは3時間ほどの撮影中、腎臓を静止させる必要があったが、研究グループは、腎臓の血流と温度を長時間変えることなく腎臓を静止させることができる特殊な器具を開発したとしている。今回の結果を踏まえ、研究グループは今後、生体で腎臓を固定する方法や撮影方法を改良し、糖尿病による腎障害の進行度を非侵襲的かつ正確に評価する手法の実用化につなげたいとしている。(HealthDay News 2017年7月31日)

Abstract
https://www.nature.com/articles/s41598-017-06111-4

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4.1.1

生活習慣の欧米化でアディポネクチンに質的および量的な異常 遺伝的素因が共通する日系人と日本人を比較検討

遺伝的素因が同じ日本人であっても、生活習慣が日本式から米国式に変化すると、脂肪細胞から分泌されるホルモンの「アディポネクチン(APN)」に量的および質的な異常がもたらされ、インスリン抵抗性が惹起される可能性があることが、日本在住の日本人と米国在住の日系人とを比較した研究で分かった。広島大学病院内分泌・糖尿病内科の米田真康氏らと大阪大学内分泌・代謝内科学との共同研究によるもので、詳細は「Cardiovascular Diabetology」7月6日オンライン版に掲載された。

日本から米国に移住した日系人は日本人と共通した遺伝的素因を持つ一方で、生活習慣は異なるため、「生活習慣の欧米化」という環境要因の変化が日本人の生活習慣に関連した代謝疾患に与える影響について検討する対象として最適とされる。広島大学の研究グループはこれまでに、血清中のAPN濃度が低いことは2型糖尿病発症の危険因子であることを報告している。APN濃度の低下はインスリン抵抗性と関連することも指摘されているため、APNは生活習慣の欧米化によって生じるインスリン抵抗性に関与している可能性がある。

そこで同氏らは、疫学研究「ハワイ・ロサンゼルス・広島スタディ」で2009~2010年の医学調査の受診者のうち、30~70歳の広島在住の日本人325人およびロサンゼルス在住の日系人304人を対象に、生活習慣の違いがAPNの量的および質的な変化をもたらし、インスリン抵抗性に起因しているのかどうかを検討した。

75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)で評価したインスリン分泌能、血清総APN濃度、さらにメタボリックシンドロームや動脈硬化性疾患のマーカーとして報告されている、血清総APN濃度に対するC1q-APN複合体濃度の比(C1q-APN/総APN比)を日本人と日系人で比較した。

その結果、日本人と比べて日系人では正常耐糖能(NGT)群および耐糖能異常(IGT)群においてMatsuda indexが有意に低く、OGTTにおける血清インスリン濃度の総和、濃度-時間曲線下面積(AUC)が増大していた。一方、糖尿病群では同様の結果は得られなかった。また、日本人と比べて日系人ではNGT群およびIGT群で血清総APN濃度が有意に低く(量的変化)、C1q-APN/総APN比は有意に高いこと(質的変化)が示されたが、糖尿病群ではそのような結果は示されなかった。

以上を踏まえ、米田氏らは「日本人において、生活習慣の欧米化はAPNの量的のみならず質的な変化をもたらし、インスリン抵抗性を惹起することが示された」と結論。また、糖尿病群ではこうした変化が認められなかった点については「APNは糖尿病自体による強い影響を受けるため、生活習慣の違いによる影響は検出されにくかった可能性がある」とし、さらには「日本在住の日本人であっても、糖尿病を発症した人たちの生活習慣は日系人の生活習慣とほとんど違いがなかった可能性がある」とも指摘している。(HealthDay News 2017年7月24日)

Full Text
https://cardiab.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12933-017-0565-z

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4HDN国内ニュース7月24日配信2

朝食前の運動は24時間総脂肪酸化量を増大させる 筑波大の研究グループ、日本人女性を対象に検討

男性と同様に、女性が朝食前の空腹時に運動を行うと24時間総脂肪酸化量が増大し、これは24時間のエネルギーや炭水化物バランスが負になったことが影響している可能性のあることが、筑波大学運動栄養学の徳山薫平氏らの検討で分かった。一時的な負のエネルギーバランスを大きくするように運動を行うタイミングを調整すると、24時間の総脂質酸化量を増やせる可能性があるという。詳細は「PLOS ONE」7月10日オンライン版に掲載された。

24時間のエネルギーバランスが保たれている条件下では、運動を行っても24時間の総脂肪酸化量には影響を及ぼさないことが報告されている。しかし、これまでの徳山氏らの検討で、健康な男性では一晩絶食した翌朝の朝食前に運動を行うと、朝食や昼食、夕食を摂取後の運動に比べて運動後24時間の総脂肪酸化量が増大する可能性が示唆されている。そこで今回、同氏らは健康な女性を対象に、朝食前の運動が24時間の総脂肪酸化量に及ぼす影響を検討する研究を行った。

対象は、日常的に中強度の運動を行っている健康な女性9人(平均年齢23.9±1.3歳、平均体脂肪率26.9±1.2%)。参加者には試験初日の22時に代謝測定室に入室してもらい、就寝は23時~翌朝6時とし、食事は朝食(8時)、昼食(12時)、夕食(18時)を提供した(総エネルギー量は、参加者の24時間エネルギーバランスがとれるように設定した)。また、参加者には6時30分に60分間のトレッドミル走行を最大酸素摂取量(VO2max)の50%に相当する強度で行う、あるいは座位で安静状態を保つことをランダムに行ってもらった。

その結果、朝食前に運動を行うと、座位で過ごした場合と比べて24時間のエネルギー消費量、総炭水化物酸化量とともに総脂肪酸化量が増大することが分かった(519±37kcal/日対400±41kcal/日)。

また、相対的な24時間エネルギーバランスの経時変化には、運動を行った場合と安静状態を保った場合では推移に差があり、朝食前には一時的な減少がみられた。相対的な24時間エネルギーバランスが最も低下した値は、安静時よりも運動時で有意に大きかった(-124±4kcal対-507±20kcal、P<0.01)。また、24時間炭水化物バランスの推移についても同様な傾向がみられた。

以上の結果から、徳山氏らは「過去の報告と合わせて、一時的な負のエネルギーバランスを大きくするように運動を行うタイミングを調整すると24時間の総脂質酸化量を増やせる可能性が示唆された。朝食前の運動を継続した場合に効果が持続するのかどうかなどは、今後検討する必要がある」と述べている。(HealthDay News 2017年7月24日)

Abstract
http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0180472

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4HDN国内ニュース7月24日配信1

内臓脂肪と皮下脂肪の面積比は心血管疾患の予測因子 東京医歯大ら、2型糖尿病患者で検討

2型糖尿病患者では、腹部CT検査で求めた内臓脂肪面積(VFA)と皮下脂肪面積(SFA)の比〔visceral fat area(VFA)/subcutaneous fat area(SFA);V/S比)は心血管疾患(CVD)発症の予測因子としてBMIよりも優れる可能性のあることが、東京医科歯科大学大学院分子内分泌代謝学の福田達也氏と国立国際医療研究センター糖尿病内分泌代謝科の坊内良太郎氏らの検討で分かった。詳細は「Journal of Diabetes Investigation」7月7日オンライン版に掲載された。

坊内氏らは既に、2型糖尿病患者では、皮下脂肪が少なく内臓脂肪が多い状態は動脈硬化の進展と強く関連する一方で、皮下脂肪が多いと動脈硬化の進展に保護的に働く可能性があることを報告している。同氏らは今回、V/S比に着目し、2型糖尿病患者を対象にV/S比がCVDの初回発症率または再発率とどのように関連するのかを検討する後ろ向き観察研究を行った。

同氏らは、外来の2型糖尿病患者682人(平均年齢64±13歳、女性が約41%)を対象に、デュアル生体インピーダンス解析(BIA)によりVFAとSFAを評価した。対象患者をV/S比で四分位に分けて、CVDの初回発症率または再発率との関連を比較検討した。CVDは脳卒中、不安定狭心症、心筋梗塞、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)または冠動脈バイパス術(CABG)、血管造影の施行、末梢動脈疾患(PAD)による下肢切断、CVD死と定義した。

中央値で2.5年の追跡の結果、対象患者のうち21人がCVDを発症した。CVDを発症した患者数はV/S比の上昇に伴って増加した。共変数を調整した多変量モデルにおいて、V/S比の1標準偏差(SD)上昇はCVD発症率の増加と有意に関連した(ハザード比1.82、95%信頼区間1.09~3.04、P=0.021)。同モデルにおいて、推算糸球体濾過量(eGFR)、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、抗血小板薬の使用、HbA1c値はCVD発症の有意な予測因子であったが、VFA、SFAおよびBMIとCVD発症率との間には有意な関連はみられなかった。

年齢やeGFR、BNP、抗血小板薬の使用、HbA1c値にV/S比を加えた場合には、CVD発症のnet reclassification improvement(NRI)とintegrated discrimination improvement(IDI)はともに有意に改善したが、VFA、SFAおよびBMIによる予測能の改善は有意ではなかった。

以上の結果を踏まえ、坊内氏らは「2型糖尿病患者において、BIAで評価したV/S比はCVDの独立した予測因子となる可能性がある」と結論づけている。(HealthDay News 2017年7月24日)

Abstract
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jdi.12713/full

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