4HDN国内ニュース3月21日配信2

ビールの苦み成分がアルツハイマー病の予防に有効 ――Aβ脳内沈着を抑制し、認知機能改善に働く

ホップ由来のビール苦み成分「イソα酸」がアルツハイマー病の予防に有効である可能性が、マウスを用いた実験で判明した。イソα酸はアルツハイマー病の原因物質であるAβの脳内沈着を抑制し、認知機能の改善に働く可能性があるという。東京大学大学院農学生命科学研究科の中山裕之氏らの研究グループが学習院大学、キリン株式会社との共同研究で明らかにしたもので、詳細は「Journal of Biological Chemistry」3月3日号に掲載された。

超高齢社会となった日本では認知症対策は喫緊の課題であるが、根本的な治療法はいまだ確立されていない。そこで、日常生活でできる認知症予防への取り組みが注目されている。その1つとして赤ワインに含まれるポリフェノールの摂取が認知症予防に効果がある可能性が報告されているが、ビールの成分については十分に検討されていなかった。そこで、研究グループは古来より薬用植物として利用されてきたポップ由来のビール苦み成分である「イソα酸」に着目し、アルツハイマー病モデルとして用いられている遺伝子改変マウスを使って実験を行った。

研究グループは、イソα酸がマウスの初代培養ミクログリア(脳内の免疫を担う細胞の一種)のAβ貪食能を亢進し、炎症性サイトカインの産生を抑制する作用をもつことを見いだした。次に、通常マウスにイソα酸を含有する食餌を3日間摂取させたところ、脳内ミクログリアの貪食活性が亢進して抗炎症型へと変化したことから、脳の炎症が抑制されることも明らかにされた。

さらに、アルツハイマー病モデルマウスにイソα酸を含有する食餌を3カ月間摂取させたところ、対照マウスに比べて脳内ミクログリアの機能が活性化し、脳内に生じるAβなどの老廃物の沈着や炎症を抑制することがわかった。また、イソα酸の摂取により海馬における神経細胞のシナプス量が有意に増加し、記憶学習機能が改善することも判明した。

研究グループは、適量のビールやノンアルコールのビールテイスト飲料の摂取が認知症予防につながる可能性があるとしている。(HealthDay News 2017年3月21日)

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4HDN国内ニュース3月21日配信1

身体活動量が糖尿病網膜症リスクと関連 ――日本人2型糖尿病患者1,814人を解析

運動量が多い人ほど糖尿病の3大合併症の1つである糖尿病網膜症の発症リスクが低下することが、奈良県立医科大学糖尿病学講座の石井均氏らの研究グループの調べでわかった。日本人の2型糖尿病患者を対象とした大規模研究でこれらの関連を調べたのは初の試み。細小血管合併症の予防において運動が重要である可能性が示唆された。詳細は「PLOS ONE」オンライン版に3月3日掲載された。

これまでの研究で、身体活動量が増えると心血管イベントの発症リスクが低下することや、2型糖尿病患者では身体活動量の減少は全死亡の独立した予測因子であることが報告されている。一方で、運動量が減ると糖尿病の細小血管合併症の1つである糖尿病網膜症の発症リスクが増加するのかは明らかにされていなかった。研究グループは今回、2型糖尿病患者を対象に、ベースライン時の身体活動量とその後の糖尿病網膜症の新規発症との関連を前向きに検討するコホート研究を行った。

対象患者は、天理よろづ相談所病院(奈良県)の内分泌内科に通院する糖尿病患者を対象とした大規模レジストリー(Diabetes Distress and Care Registry at Tenri;DDCRT)から抽出した調査開始時点に網膜症を有さない2型糖尿病患者1,814人。平均年齢は65.5歳、平均BMIは24.5、HbA1c平均値は7.2%であった。身体活動量は国際標準化身体活動質問票(IPAQ)を用いて調査し、対象患者をMET-hours/週で評価した身体活動レベルで第1~第5群に分類し(MET-hours/週の中央値はそれぞれ0、4.8、13.2、26.4、77)、2年間追跡した。

その結果、追跡期間中に184人(10.1%)が新たに糖尿病網膜症を発症した。新たに糖尿病網膜症を発症した患者では、発症しなかった患者に比べて2型糖尿病の罹病期間が有意に長く(14.7年対11.0年、P<0.0001)、収縮期血圧値が高く(139.2mmHg対135.1mmHg、P=0.0012)、推算糸球体濾過量(eGFR)が低く(74.0mL/分/1.73m2対77.1mL/分/1.73m2、P=0.0382)、尿中アルブミン/クレアチニン比が大きく(4.00mg/mmoL対2.45mg/mmoL、P<0.0039)、HbA1c値が高かった(7.5%対7.2%、P=0.0006)。

また、運動習慣と糖尿病網膜症の新規発症との関連を、運動習慣がない群(第1群)と比較したCox比例ハザードモデルを用いて解析したところ、多変量調整モデルにおいて第2~第5群のハザード比はそれぞれ0.87(95%信頼区間0.53~1.40、P=0.557)、0.83(同0.52~1.31、P=0.421)、0.58(同0.35~0.94、P=0.027)、0.63(同0.42~0.94、P=0.025)と第4群および第5群で有意な低下が認められた。(HealthDay News 2017年3月21日)

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4HDN国内ニュース3月13日配信2

運動効果を妨げる肝臓ホルモンの働きを解明 ――金沢大の研究グループ

運動の効果には個人差が大きいことが知られているが、これには肝臓から分泌される「ヘパトカイン」と呼ばれるホルモンの1つ、セレノプロテインPが骨格筋に作用することで運動効果を無効にしている可能性があることを、金沢大学大学院内分泌・代謝内科学の御簾博文氏とシステム生物学の金子周一氏らの研究グループがマウスを用いた実験で突き止めた。運動してもなかなか効果が得られない人ではこのセレノプロテインPの血中濃度が高いこともわかった。詳細は「Nature Medicine」オンライン版に2月27日掲載された。

肥満や2型糖尿病、高血圧、脂質異常症といった生活習慣病の治療ではまず運動療法などの生活習慣の是正が勧められているが、運動療法の効果には個人差が大きいことが知られている。研究グループは今回、2型糖尿病患者や脂肪肝患者、高齢者において発現が増えることが報告されているセレノプロテインPに着目し、マウスを用いた実験でセレノプロテインPが運動に与える影響を検討した。

研究グループはまず、セレノプロテインPを欠損したマウスと正常マウスに1日30分の走行トレーニングを1カ月間行ったところ、運動の強度と時間は同じだったにもかかわらず、セレノプロテインP欠損マウスでは運動効果が倍増していることを見いだした。また、セレノプロテインP欠損マウスでは運動後にインスリンの効きが良くなっていることもわかった。

また、正常マウスにセレノプロテインPを投与すると運動後の筋肉でのAMPKリン酸化が低下したが、セレノプロテインPの受容体であるLRP1(low density lipoprotein receptor-related protein 1)を欠損したマウスではセレノプロテインPを投与しても筋肉に取り込まれず、運動によるAMPKリン酸化は影響を受けないことがわかった。

さらに、健康な女性31人を対象に有酸素運動を8週間行ってもらう臨床研究を行ったところ、血液中のセレノプロテインP濃度が高い人では、濃度が低い人に比べて運動による効果が向上しにくいことも明らかにされた。

以上の結果を踏まえて、研究グループは「セレノプロテインPを過剰に発現すると受容体LRP1を介して筋肉に作用することで、運動してもその効果が得られにくい『運動抵抗性』という病態を引き起こしている」と結論づけ、セレノプロテインPと受容体LRP1を標的とした新しい生活習慣病対策の開発やセレノプロテインPの血中濃度の測定が個々人の運動効果の出やすさの判定に応用できる可能性があるとの期待を示している。(HealthDay News 2017年3月13日)

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4HDN国内ニュース3月13日配信1

糖尿病患者の診察時間に影響を及ぼす因子とは? ――日本人の糖尿病患者約1,100人を解析

医師が糖尿病患者を診察する時間は患者のHbA1c値が高いほど長くなり、また、1型糖尿病患者やインスリン注射、睡眠導入薬、抗不安薬を使用している患者の場合も医師は診察に時間をかける傾向がみられることが、東海大学医学部付属八王子病院総合内科の壁谷悠介氏らの研究グループの調査でわかった。医師側の因子としては女性であることと、40歳未満の医師に比べて40~60歳、60歳以上と年齢が高まるにつれて診察時間が長くなる傾向がみられた。詳細は「Diabetes Research and Clinical Practice」4月号に掲載された。

医師と患者が対面する診察時間は糖尿病診療の質に大きな影響を及ぼし、医師と患者間の関係を良好に保つためにも十分な診察時間を設けることが重要とされている。しかし、実際の臨床現場では診察時間をコントロールすることは困難である。そこで研究グループは、糖尿病患者の診察時間に影響を及ぼす患者側および医師側の因子について検討した。

研究グループは、東京都内にある某病院の大規模糖尿病外来において、2014年4~5月に22人の医師(このうち15人が男性、16人が糖尿病専門医)が診察した糖尿病患者1,197人を対象に横断研究を行った。医療記録を用いて患者の臨床的特徴や診察時間を調べ、患者側および医師側の因子と診察時間との関連を調査した。対象患者の平均年齢は66歳、25%が女性で、2型糖尿病患者が9割を占めており、HbA1c平均値は7.6%であった。

解析の結果、対象患者全体の診察時間は平均で10.1分であった。多変量解析の結果、診察時間に影響を及ぼす因子として「1型糖尿病」「インスリン注射を使用」「睡眠導入薬または抗不安薬の使用」が浮かび上がった。患者の年齢や性、服用している血糖降下薬の数、治療に対する満足度や外来受診の間隔と診察時間との間には有意な関連はみられなかった。

また、診察時間には「HbA1c値」との間にも有意な関連がみられ、HbA1cが高値なほど診察時間が長くなることがわかった。HbA1c値が「7.0%未満」の患者に比べて、「7.0%以上8.0%未満」、「8.0%以上9.0%未満」、「9.0%以上」の患者ではHbA1c値が高値なほど診察時間が長くなり、「7.0%未満」に対する比はそれぞれ1.03、1.16、1.17であった。「BMI」との間にも有意な関連がみられ、BMIが「20以上25未満」の患者がもっとも診察時間が短く、それよりもBMIが低い場合も高い場合も診察時間は長くなることがわかった。

さらに、医師側の因子をみると「女性」であることと40歳未満の医師に比べて40~60歳、60歳以上と年齢が高まるにつれて診察時間が長くなる傾向がみられた。

研究グループは、この知見を糖尿病患者の診療予約に活かすことで待ち時間を減らして外来の混雑緩和を図れるほか、医師の診察時間を効率的に配分するための対策にも活用できるのではないかと話している。(HealthDay News 2017年3月13日)

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4HDN国内ニュース3月6日配信2

脳の酸化ストレス増加が糖尿病発症につながる機序を解明 ――東北大と筑波大の共同研究

東北大学大学院医化学分野の山本雅之氏らの研究グループは、筑波大学とのマウスを用いた共同研究で、脳の酸化ストレスが増えると糖尿病や肥満の発症につながる機序を解明したと発表した。全身の代謝調節の司令塔として働く脳視床下部領域で酸化ストレスが増加すると神経細胞が減少し、インスリンやレプチンといったホルモンの作用が減弱することで糖尿病や肥満を引き起こす可能性があるという。視床下部領域における酸化ストレスの抑制が、糖尿病や肥満の新しい治療標的になりうるものと期待される。詳細は「Cell Reports」オンライン版に2月21日掲載された。

糖尿病では酸化ストレスが亢進することが知られているが、とくに代謝調節に重要な役割を果たす脳視床下部領域における酸化ストレスの亢進がどういった意味をもつのかは、研究手法の限界もあり十分な知見が得られていなかった。

研究グループは既に遺伝子組換え法により、酸化ストレスを抑えるために重要なセレンを含有する一群のタンパク質(セレノプロテイン)群の合成に必須なセレノシステイン転移RNA(Trsp)遺伝子の発現を特異的に低下させることができるマウスを作製していた。今回の研究では酸化ストレスを増加させる手法として、このセレノプロテイン群に着目。視床下部領域と膵臓ランゲルハンス島の両方で、または膵臓ランゲルハンス島のみで特異的にTrsp遺伝子の発現を低下させたマウスを比較し、視床下部領域における酸化ストレスの役割を調べた。

その結果、視床下部領域と膵臓ランゲルハンス島でTrsp遺伝子発現を低下させたマウスは肥満と糖尿病を発症していることがわかった。詳細な解析により、酸化ストレスが増加したマウスの脳では視床下部領域での神経細胞死が促され、代謝調節に重要な役割を果たす神経細胞が減少した結果、インスリン抵抗性と肥満抑制ホルモンであるレプチンへの抵抗性が生じていた。

次に、研究グループは、酸化ストレスに曝露したマウスの視床下部領域において酸化ストレスに防御的に働く転写因子であるNrf2を活性化させた。その結果、酸化ストレスは低下し、肥満や糖尿病の予防につながることが明らかになった。(HealthDay News 2017年3月6日)

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Confused Senior Man With Adult Daughter At Home

加齢に伴うインスリンシグナルの変化が記憶低下と関連 ――千葉大の研究グループ

記憶を維持するには、血糖値の調節に重要なインスリンと脂肪細胞内のインスリンシグナル伝達が必要とされることを、千葉大学大学院薬学研究院生化学研究室の殿城亜矢子氏らの研究グループがショウジョウバエを用いた実験で突き止めた。加齢に伴いインスリンシグナルに変化が生じ、シグナル伝達が低下することが記憶低下を引き起こしている可能性がある。詳細は「Cell Reports」オンライン版に2月14日掲載された。

インスリンは細胞膜の上にあるインスリン受容体に結合して細胞内にシグナルを伝える。このインスリンシグナルは哺乳類から昆虫を含む無脊椎動物の発生や成長、代謝の制御などに重要な役割を果たしている。最近ではインスリンが記憶や学習に影響を及ぼし、また糖尿病などの代謝性疾患でみられるインスリン調節の異常が認知症のリスク因子になりうることが示唆されているが、インスリンが果たす役割については明らかにされていなかった。

そこで研究グループは今回、ショウジョウバエを用いてインスリンが記憶を制御する機序や加齢に伴う記憶能力の低下とどのように関連するのかを調べた。ショウジョウバエを用いたのは、匂いと電気刺激を条件づけすることで学習能や記憶能を簡単に測定できることと、老化すると記憶能力が低下することが知られていることによるという。

研究グループはまず、発生や成長の時期にかかわらず、一過的にインスリンシグナルを抑制したショウジョウバエを作製し、学習能や記憶能を測定したところ、インスリンシグナルを抑えると記憶が維持されないことがわかった。次に、筋肉や脂肪組織、神経細胞などさまざまな組織に発現するインスリン受容体のうち、脂肪組織における受容体の発現が記憶の維持に必要であることも判明した。

さらに、ショウジョウバエではインスリンとインスリン様成長因子(IGF)の機能はDilpという分子群がまかなっており、Dilp1からDilp8までの8種が機能分担しているが、今回の研究でとくにDilp3が記憶の維持に必要であることが明らかにされた。Dilp3は加齢に伴って特異的に低下しており、老化したショウジョウバエにDilp3を過剰に発現させると記憶力が向上した。

以上から、研究グループは「若いショウジョウバエではDilp3と脂肪組織におけるインスリンシグナルの活性化により記憶が維持される一方で、老化したショウジョウバエではDilp3の発現が低下することで記憶力の低下が引き起こされていることがわかった」と述べている。(HealthDay News 2017年3月6日)

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4.1.1

ブロッコリーの新芽の成分に肥満や糖尿病予防効果 ――金沢大の研究グループ

ブロッコリーの新芽(ブロッコリースプラウト)に多く含まれる「スルフォラファン」が肥満を抑え、また、インスリン抵抗性や血糖値の上昇を抑制し糖尿病の予防に働く可能性があることを、金沢大学脳・肝インターフェースメディシン研究センターの太田嗣人氏らの研究グループがマウスを用いた実験で突き止めた。スルフォラファンは脂肪細胞の褐色化を促してエネルギー消費量を増やすほか、肥満型の腸内細菌叢を改善することがわかった。

この知見はカゴメ株式会社との研究で明らかにしたもので、ブロッコリースプラウトを食べることで肥満や2型糖尿病といった生活習慣病の改善や予防につながる可能性が期待される。詳細は「Diabetes」オンライン版に2月17日掲載された。

「スルフォラファン」とはブロッコリーや大根、ケールなどのアブラナ科の植物に含まれる辛み成分の一種。普通のブロッコリーよりもスプラウトに多く含まれている。これまでの研究で、このスルフォラファンは体内の毒を排出する解毒作用や健康に害を及ぼす活性酸素の発生を抑える抗酸化作用などをもち、がんや肝機能障害などのさまざまな疾患予防に効果がある可能性が報告されている。

今回、研究グループはスルフォラファンの肥満に対する効果に着目し、マウスを用いた実験で検討した。

研究グループは、マウスを、高脂肪食または通常食にスルフォラファンを「混ぜる」あるいは「混ぜない」4群に分けて14週間観察した。その結果、通常食を摂取した2群に比べて高脂肪食を摂取した2群では体重増加がみられたが、高脂肪食+スルフォラファンを摂取した群では高脂肪食だけを摂取した群に比べて体重増加率が15%抑えられたほか、内臓脂肪も20%減少した。スルフォラファンを摂取すると、高脂肪食の摂取で上昇したインスリン抵抗性や空腹時血糖値が改善することもわかった。

また、高脂肪食+スルフォラファンを摂取した群では、高脂肪食だけを摂取した群に比べて皮下脂肪、内臓脂肪ともに脱共役タンパク質(uncoupling protein-1、UCP-1)の発現が増え、エネルギー消費量も増加していた。研究グループはスルフォラファンの摂取でエネルギーの消費量が増えて脂肪燃焼を促進する「脂肪細胞の褐色化」が促されると説明している。

さらに、スルフォラファンを摂取すると、高脂肪食の摂取で増加したデスルフォビブリオ科と呼ばれる悪玉の腸内細菌が減少し、肥満型の腸内細菌叢を改善することもわかった。腸内の毒素が減少し、慢性的な炎症を抑えることでインスリン抵抗性を改善し、糖尿病などの生活習慣病の予防に働くという。(HealthDay News 2017年2月27日)

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Close-up Of Hand Holding Device For Measuring Blood Sugar

SGLT2阻害薬の安全性に炭水化物比率が影響 極端な炭水化物制限下で重篤な副作用を生じる可能性

2型糖尿病患者において、SGLT2阻害薬のルセオグリフロジンは、毎日の食事の炭水化物比率が40~55%であれば、炭水化物比率やグリセミック指数(GI)にかかわらず血糖値を改善することが、関西電力医学研究所の矢部大介氏らの研究グループの検討でわかった。

しかし、炭水化物比率を40%に制限すると、比率が55%だった場合に比べて、同薬の使用により血中のケトン体が有意に上昇することも判明した。これにより、極端な炭水化物制限を行うと正常血糖糖尿病ケトアシドーシスを引き起こす可能性があることが示唆された。同薬の適切な使用にあたっては、患者の習慣的な食事の内容や量を把握することが重要になるという。詳細は「Diabetes, Obesity and Metabolism」オンライン版に12月19日掲載された。

2014年4月に日本でも発売開始されたSGLT2阻害薬は、不適切な使用に関連した重篤な副作用が報告されており、日本糖尿病学会および日本糖尿病協会は、同薬の適正使用に関するRecommendationを公表している。副作用には、脱水や脳梗塞、心筋梗塞のほか、重症低血糖やケトアシドーシスなどが報告されているが、とくに血糖値が正常に近くてもケトアシドーシスをきたす「正常血糖糖尿病ケトアシドーシス(eDKA)」は進行すると死に至る場合もあり、重要な課題とされている。

研究グループは今回、厳格な炭水化物制限を行っている2型糖尿病患者において、SGLT2阻害薬の使用開始後にeDKAをきたした症例が報告されていることから、日常的な食事の炭水化物比率別にルセオグリフロジンの有効性と安全性を比較検討した。

2型糖尿病患者23人を対象に、炭水化物比率とGIが異なる3群-(1)炭水化物比率55%+高GI、(2)炭水化物比率55%+低GI、(3)炭水化物比率40%+高GI-にランダムに割り付け、同じ内容の食事を14日間継続してもらった。対象患者には、後半の1週間にはルセオグリフロジンを服用してもらい、同薬の服用前後に持続血糖測定(CGM)を行った。

その結果、3群すべてにおいて、ルセオグリフロジンを服用するとCGMによる血糖の平均値および曲線下面積が有意に改善していた。一方で、炭水化物比率が40%だった群では、比率を55%とした2群に比べて、同薬を使用すると血中ケトン体が有意に上昇することもわかった。

SGLT2阻害薬により尿糖排出が促進されると、肝臓におけるグリコーゲン分解、糖新生が活性化されるとともに、脂肪分解が促進される。脂肪分解の際に放出される遊離脂肪酸によって肝臓でのケトン体合成が促進されるが、研究グループによると、過度な炭水化物制限を行うと、同薬に対するこうした生体反応が促され、eDKAの発症につながる可能性があるとの見解を示している。(HealthDay News 2017年2月27日)

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33058

前向きな心理や社会とのつながりが糖尿病腎症リスクに影響 ――阪大の研究グループ

幸福感が高く、心理的ストレスをあまり感じず、社会とのつながりも強いことは、2型糖尿病患者において細小血管合併症である糖尿病腎症のリスク低下と関連する可能性のあることが、大阪大学大学院内分泌・代謝内科の片上直人氏と二宮浩世氏らの研究グループによる検討でわかった。患者が自己申告した心理・社会的な因子と細小血管合併症との関連を日本人で検討した研究は初めてだという。詳細は「Journal of Diabetes Investigation」オンライン版に2月8日掲載された。

自己効力感や心理的な負担に対する抵抗力が強く、また社会的サポートが充実していると、糖尿病患者では積極的に運動や食事管理を行うようになり、これが良好な血糖コントロールをもたらし、結果的に転帰の改善にもつながると考えられている。一方で、こうした心理・社会的な因子が糖尿病腎症などの細小血管障害に及ぼす影響については明らかにされていなかった。

研究グループは、同大学病院に通院中の30~79歳の2型糖尿病患者343人(平均年齢は65.1歳、男性が約56%)を対象とした前向き観察研究のベースライン調査結果を用いて、対象患者を糖尿病腎症の有無で分けて心理・社会的因子による影響を調べた。評価した因子は「幸福感」「楽観性」「笑う頻度」「自覚しているストレスの程度」「社会とのつながり」「社会的支援」の6つとし、自記式アンケートの結果に基づいて評価した。

その結果、糖尿病腎症をもたない患者に比べて、糖尿病腎症を合併した患者では幸福感や楽観性が低く、社会とのつながりや社会的支援が不十分であることがわかった。年齢や性で調整したロジスティック回帰分析によると、検討した6つの因子のうち、「笑う頻度」を除く5つの因子が糖尿病腎症リスクの低減と関連していた。また、腎症の古典的なリスク因子である糖尿病罹病期間、高血圧や脂質異常症の有無、HbA1c値、喫煙習慣などで調整した解析でも、これらの因子は腎症のリスク因子であり続けていた。(HealthDay News 2017年2月20日)

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33011

「第三の脂肪」の蓄積が高齢者のサルコペニアと関連 ――筋肉内の脂肪蓄積に悪影響、名大研究グループ

高齢者では筋肉内に脂肪が蓄積すると、筋肉量や筋力が低下するサルコペニアと強く関連し、運動機能にも悪影響を及ぼすことが、名古屋大学総合保健体育科学センターの秋間広氏らの研究グループによる検討でわかった。

心臓や肝臓、筋肉といった通常はほとんど脂肪が蓄積することのない臓器に蓄積した「異所性脂肪」は、近年では“第三の脂肪”として健康障害を引き起こすものと注目を集めている。研究グループは、今回の知見から、若年・中年層だけでなく高齢者でも健康を維持するには、定期的な運動で筋肉量を維持し、筋内脂肪と呼ばれる筋肉内の脂肪蓄積を抑える必要があることが示唆されたとしている。詳細は「Archives of Gerontology and Geriatrics」オンライン版に1月14日掲載された。

これまでの研究で、筋内脂肪が増えるとインスリン抵抗性を引き起こし糖尿病発症の引き金になることや、運動機能に悪影響を及ぼすことなどが報告されていた。そこで今回、研究グループは、高齢の日本人において筋内脂肪を超音波画像を用いて計測し、運動機能や体組成などの因子と関連するのかを検討した。

対象は高齢の男女64人で、太ももの超音波横断画像を撮影し、画像を分析して筋肉内の脂肪蓄積の度合いを数値化した。また、この画像から筋肉の厚さ(筋量の指標)、皮下脂肪の厚さ(脂肪量の指標)も同時に計測した。さらに、椅子の座り立ちを連続10回行う際に要する時間や寝た状態から立ち上がるまでに要する時間、6分間歩行距離などを測定し、運動機能を評価した。

その結果、超音波画像から計測した筋量・脂肪量の指標から、男性では筋肉量が多く、一方で女性では皮下脂肪量が多いことがわかった。また、運動機能を評価したところ、ほとんどの種目で男性が女性より有意に優れていた。

次に、筋内脂肪の指標と筋肉の厚さまたは皮下脂肪の厚さとの関連を検討した結果、男女ともに筋内脂肪の指標と筋肉の厚さとの間には有意な負の関連がみられた。研究グループによると、この結果は、筋内脂肪が増えると筋肉量が減少することを意味しており、筋内脂肪が多い高齢者ではサルコペニアになりやすい可能性あるとしている。筋内脂肪の指標と皮下脂肪の厚さについては、女性でのみ有意な関連がみられ、脂肪組織が体に蓄積するパターンには性差がみられることが判明した。

さらに、筋内脂肪の指標と関連する因子として、高齢男性では筋肉の量、脚の筋力指標となる座り立ち機能に加えて年齢も強く関連することがわかった。(HealthDay News 2017年2月20日)

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