Nutritional label with focus on fats.

脂質の摂取がDPP-4阻害薬の血糖降下作用に影響する可能性 関電研究所

関西電力医学研究所糖尿病研究センターの清野裕氏と矢部大介氏らの研究グループは、日本人の2型糖尿病患者において、脂質の中でも飽和脂肪酸の摂取はDPP-4阻害薬の単剤治療による血糖降下作用を減弱させる可能性があると発表した。同薬を服用する2型糖尿病患者は脂質の摂取量を制限することで血糖降下作用を保てる可能性が示唆された。詳細は「Journal of Diabetes Investigation」11月24日オンライン版に掲載された。

DPP-4阻害薬の服用を開始した2型糖尿病患者の中には、服用開始から3~6カ月後に血糖降下作用が減弱する患者がみられることが報告されている。こうした患者ではDPP-4阻害薬の服用開始後に体重増加が認められることから、健康的な食生活が守れていない可能性があり、研究グループは今回、食習慣による影響に着目した。そこでDPP-4阻害薬の単剤治療を受けている2型糖尿病患者を対象に日常的な食習慣について聞き取りを行い、食事に含まれる各栄養素がDPP-4阻害薬の血糖降下作用に与える影響を検討した。

対象は、関西電力病院における2006年9月~2017年6月の医療記録から、あらかじめ規定した条件に従い、DPP-4阻害薬の単剤治療を1年間継続した2型糖尿病患者63人のデータを抽出して後ろ向きに解析した。対象患者を、DPP-4阻害薬の服用開始半年後から1年後にかけてHbA1c値の推移に変化がみられなかった群(同期間のHbA1c変化量が0.4%未満の患者、53人)と半年後から1年後にかけてHbA1c値が上昇していた群(同期間のHbA1c変化量が0.4%以上の患者、10人)に分けて体重の変化や食習慣の状況を比較検討した。

その結果、服用開始半年後から1年後にHbA1c値が上昇していた群は、変化がみられなかった群と比較して有意な体重増加が認められた。

また、食習慣の状況をみると、HbA1c値が上昇していた群では総カロリー摂取量が有意に多く、栄養素別にみると脂質、特に飽和脂肪酸と一価不飽和脂肪酸の摂取量が有意に多かった。一方で、炭水化物とたんぱく質については、両群間で摂取量に差はみられなかった。多変量回帰分析の結果、服薬開始半年後から1年後のHbA1c変化量は飽和脂肪酸の摂取量と独立して有意に関連していることが分かった(P<0.01)。

以上の結果を踏まえて、研究グループは「脂質の種類と摂取量はDPP-4阻害薬の血糖降下作用に影響を及ぼす可能性があり、同薬を服用する2型糖尿病患者は摂取する脂質の種類や量に注意する必要があるかもしれない。また、これまで民族間でみられてきた同薬の血糖降下作用の違いは、食習慣の違いによる可能性も考えられる」と述べている。(HealthDay News 2017年12月11日)

http://www.physiciansbriefing.com/Article.asp?AID=728917

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4HDN国内ニュース12月11日配信1

厚労省推奨の全身持久力を達成すると2型糖尿病予防につながる 継続的な達成が重要、東北大

厚生労働省が推奨する全身持久力(cardiorespiratory fitness)の基準を継続的に達成すると2型糖尿病リスクが低減できる可能性があると、東北大学大学院医工学研究科健康維持増進医工学分野の門間陽樹氏らが発表した。この研究は60歳未満の男性会社員を最大で23年間追跡したもの。2型糖尿病の予防には、厚労省が勧める全身持久力の基準を一時的にではなく、継続的に達成することがより重要であることが分かった。詳細は「Journal of Epidemiology」11月25日オンライン版に掲載された。

全身持久力は定期的な中強度~高強度の身体活動によって高まることが知られており、2型糖尿病などの生活習慣病を予防するには全身持久力を高く保つことが有効であることは世界的にも認められている。日本では、2013年に厚労省が公表した「健康づくりのための身体活動基準2013」において、例えば40~59歳の男性の場合、167m/分(10km/時)の速度のランニングを3分間以上継続できる程度の全身持久力が推奨されている。

しかし、2型糖尿病のリスクを減らすためには、この基準をどのくらいの期間満たすべきなのか、また全身持久力は一時的に達成すればよいのか、最初に達成し、その後は達成できなくてもリスク低減に有効であるのかなどは明らかにされていなかった。そこで、門間氏らは今回、全身持久力を複数回測定した2型糖尿病を発症していない男性会社員を長期にわたり追跡し、全身持久力の基準達成状況と2型糖尿病の発症リスクとの関係を調べた。

対象は、追跡調査を開始する以前の8年(1979年4月~1987年3月)の間に全身持久力を4回以上測定し、1986年4月~1987年3月に登録した糖尿病のない21~59歳の男性会社員2,235人。参加者それぞれの全身持久力の曲線下面積(AUC)を算出し、厚労省の基準に基づいて算出された面積を超えているか否かで2群に分け、2型糖尿病の発症率を2010年まで最大で23年(中央値で15年)間追跡した。

追跡期間中に400人が2型糖尿病を発症した。複数の因子を調整した解析の結果、全身持久力の面積が基準に基づく面積を超えていた群と比べて、超えていなかった群では2型糖尿病の発症リスクは33%高いことが分かった(ハザード比1.33、95%信頼区間1.06~1.65)。

また、初回の測定で基準に達し、その後も継続的に基準を満たしていた群(参照群)と、初回は基準に達していなくてもその後、継続的に基準を満たした群は2型糖尿病リスクが同程度であった。一方、参照群と比べて、初回からその後も基準に達しなかった群では糖尿病リスクは約40%高いことも分かった。なお、同様に初回は基準を達してもその後、継続的に基準を満たさなかった群の場合も糖尿病リスクは約40%高い値を示したが、これらは統計学的な差は認められなかった。

以上の結果を踏まえて、門間氏らは「今回の結果から、厚労省が勧める全身持久力の基準を継続的に達成すると中年期の男性は2型糖尿病リスクを低減できる可能性があることが分かった。厚労省が公表している全身持久力の基準は、2型糖尿病予防の観点から妥当なものだと言えるだろう」と述べている。(HealthDay News 2017年12月11日)

Abstract
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jea/advpub/0/advpub_JE20160199/_article

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4HDN国内ニュース12月4日配信2

2型糖尿病と肥満の併存は駆出率保持心不全のリスク因子 神戸大

2型糖尿病患者は肥満を伴うと左室拡張機能が悪化しやすく、左室駆出率が保持された心不全(HFpEF)のリスクが高まる可能性のあることが、神戸大学大学院循環器内科学講師の田中秀和氏らの検討で分かった。左室長軸方向の心筋収縮能と左室拡張能は密接に関連しているが、健康な人では肥満による左室長軸方向の心筋収縮能への影響は認められなかったのに対し、2型糖尿病患者では肥満により左室長軸方向の心筋収縮能は有意に障害されていた。詳細は「Cardiovascular Diabetology」11月9日オンライン版に掲載された。

2型糖尿病と肥満はHFpEF発症の重要なリスク因子であることが知られている。また、2型糖尿病と肥満があると左室拡張機能は悪化することも示されているが、糖尿病や肥満と心機能との関連は明らかにされていない。田中氏らは今回、左室駆出率が保たれた無症候性の2型糖尿病患者を対象に、肥満が左室拡張機能といった心機能に及ぼす影響を検討した。

対象は、2013年7月~2015年9月に同大学病院に入院し、左室駆出率が55%以上に保たれ、冠動脈疾患が認められない無症候性の2型糖尿病患者145人と、年齢と性、左室駆出率をマッチさせた健康な成人90人(対照群)。参加者には標準的な心エコー図検査を行い、左室長軸方向の心筋収縮能の指標として、心尖部3断面からGlobal Longitudinal Strain(GLS)を計測した。2型糖尿病患者群と対照群をそれぞれ肥満(BMI 25以上)の有無で分けて左室拡張機能を比較検討した。

解析の結果、肥満のある2型糖尿病患者では、肥満のない2型糖尿病患者と比べてGLS値が有意に低かったが(17.9±2.4%対18.9±2.6%、P<0.05)、対照群では肥満の有無でGLS値に差はみられなかった(19.8±1.3%対20.4±2.1%、P=0.38)。また、2型糖尿病患者においてGLS値はBMIと有意な正相関を示したほか、多変量回帰分析からBMIは左室心筋重量係数とともにGLS値の独立した決定因子であることが分かった。

以上の結果を踏まえて、田中氏らは「2型糖尿病と肥満を合併すると心機能により悪影響を及ぼし、HFpEFの発症リスクを高めることが分かった。こうした心不全を予防するためにも2型糖尿病患者では厳格な体重管理が必要になると考えられる」と述べている。(HealthDay News 2017年12月4日)

Abstract/Full Text
https://cardiab.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12933-017-0632-5

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4HDN国内ニュース12月4日配信1

腹部肥満で拡張不全型心不全患者の死亡リスク上昇 国立国際医療研究センター

左室駆出率が保たれた心不全(拡張不全型心不全、HFpEF)患者は、腹部肥満を併存すると死亡リスクが高まる可能性があることが、国立国際医療研究センター(東京都)糖尿病内分泌代謝科の辻本哲郎氏らの検討で分かった。詳細は「Journal of the American College of Cardiology」12月号に掲載された。

HFpEF患者はしばしば高血圧、糖尿病、心房細動を併存することが知られているが、腹部肥満による生命予後への影響を調べた研究はほとんどない。辻本氏らは今回、HFpEF患者を対象に、腹部肥満と死亡との関連を調べる研究を行った。

研究では、HFpEF患者に対するアルドステロン拮抗薬の有効性を検討した国際多施設共同のランダム化比較試験、TOPCAT(Treatment of Preserved Cardiac Function Heart Failure with an Aldosterone Antagonist)試験に参加した3,445人の患者のうち、この研究の基準を満たした3,310人が対象となった。対象患者は腹部肥満のある群(2,413人)と腹部肥満のない群(897人)に分けられ、死亡リスクについて比較検討された。

平均3.4年間の追跡期間中に500人の死亡が確認された。解析の結果、1,000人年当たりの死亡率は、腹部肥満のある群で46.1、腹部肥満のない群で40.7であった。多変量解析の結果、腹部肥満のない群と比べて、腹部肥満のある群で全死亡リスクは有意に高かった(調整後ハザード比1.52、95%信頼区間1.16~1.99、P=0.002)。また、腹部肥満のない群と比べて、腹部肥満のある群では心血管死や非心血管死のリスクもそれぞれ有意に高いことが認められた(それぞれの調整後ハザード比1.50、1.08~2.08、P=0.01および1.58、1.00~2.51、P=0.04)。

以上の結果を踏まえて、辻本氏らは「腹部肥満を伴うHFpEF患者は、腹部肥満のない患者と比べ死亡リスクが高い可能性がある。HFpEF患者の生命予後を改善するには内臓脂肪に注目した体重管理が重要かもしれない」と結論づけている。(HealthDay News 2017年12月4日)

Abstract/Full Text
http://www.onlinejacc.org/content/70/22/2739?sso=1&sso_redirect_count=1&access_token=

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尿pH測定が糖尿病の高リスク者発見に有用 低値で耐糖能異常リスク上昇、愛媛大

健診を受けた成人男女約4,900人を調査した結果、日本人の男女は尿pH値が低いほど耐糖能異常を有する確率が高い可能性があると愛媛大学大学院消化器・内分泌・代謝内科学(第三内科)の三宅映己氏らが発表した。特にこれらの関連は男性で強く、尿pH測定は糖尿病リスクが高い人を早期発見するのに有用な指標になり得るという。詳細は「Journal of Diabetes Investigation」11月16日オンライン版に掲載された。

これまでの研究で、尿pHはBMI値やインスリン抵抗性と負の相関を示し、尿pHが低値であることは2型糖尿病の発症とも関連する可能性が示されているが、詳細は明らかにされていない。三宅氏らは今回、尿pH値と耐糖能異常との関連を調べる住民ベースの横断研究を実施し、尿pH値が糖尿病前症や2型糖尿病の予測因子となり得るのかを男女別に検討した。

対象は、2013年4月~2014年3月に健康診断を受診した23~86歳の男女4,945人(うち男性が2,490人)。対象者を空腹時血糖(FPG)値で(1)110mg/dL未満群(4,494人)、(2)110mg/dL以上126mg/dL未満群(269人)、(3)126mg/dL以上群(182人)の3群に、あるいはHbA1c値で(1)5.8%未満群(4,494人)、(2)5.8%以上6.2%未満群(269人)、(3)6.2%以上群(182人)の3群に分けて、それぞれ尿pH値との関連を調べた。さらに、対象者を尿pH値で5つの群(5.0、5.5、6.0、6.5および7.0以上)に分けて耐糖能異常との関連を男女別に解析した。

年齢やBMI、収縮期血圧、トリグリセライド、HDL-コレステロール、尿酸、クレアチニンの各値、糖尿病治療薬の使用の有無を調整した多変量解析の結果、男性では尿pH低値(5.5以下)はFPG高値およびHbA1c高値と有意に関連した(傾向P値はそれぞれ0.0260、0.0075)。また、男性では同様に調整した多変量解析により耐糖能異常の有病率は尿pH値が低下するに伴って有意に上昇した(同0.0483、0.0181)。

さらに、女性では尿pH低値でFPG値およびHbA1c値はいずれも上昇傾向が認められたが有意ではなかった。こうした男女差がみられた点について、三宅氏らは耐糖能異常を有する女性が少なく、十分な症例数が確保できなかったほか、体脂肪の分布やエストロゲン値の性差が影響した可能性を指摘している。(HealthDay News 2017年11月27日)

Abstract/Full Text
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jdi.12777/full

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4.1.1

適度な飲酒で全死亡リスクが低減 多目的コホート研究から

国立がん研究センターなどの多目的コホート研究(JPHC Study)グループは、適度な飲酒は全死亡のほか、がんや心臓病、脳血管疾患の三大死因による死亡リスクの低下と関連するとの研究結果を「Journal of Epidemiology」11月11日オンライン版に発表した。一方で、男女ともに飲酒量が多過ぎると死亡リスクは有意に上昇したことから、適量飲酒の重要性も再確認された。

研究グループは今回、JPHC研究に参加した一般住民を前向きに約18年間追跡したデータを用いて、飲酒量と休肝日の有無や日数などの飲酒パターンが全死亡や心臓病、脳血管疾患、呼吸器疾患、病気を除いた傷害といった死因別の死亡リスクにどのような影響を及ぼすのかを調べた。

対象は、1990年および1993年にがんや循環器疾患の既往がない40~69歳の住民10万2,849人。平均18.2年の追跡期間中に1万5,203人の死亡が確認された。研究開始時と5年後および10年後の調査時に行った質問紙調査への回答から、週当たりのエタノール換算した飲酒量を算出し、飲酒量で男性は7つの群に、女性は6つの群に分けて各死亡との関連を分析した。また、休肝日の有無や日数で(1)休肝日なし群、(2)週1~2日群、(3)週3~4日群、(4)週5~6日群の4群に分けて分析した。

なお、飲酒量による分類は、男性は(1)飲酒しない群、(2)月に1~3日程度飲む群、(3)1週間当たりエタノール換算量で1~149g飲酒する群、(4)同150~299g群、(5)同300~449g群、(6)同450~599g群、(7)同600g以上群に分け、女性は男性の1週間当たりエタノール換算量で450g以上群をまとめた6つの群とした。エタノール換算した飲酒量の目安は、週150gがビール大瓶では約7本、日本酒では約7合に相当するという。

その結果、全死亡リスクは、男性では飲酒しない群と比べて、月に1~3日程度の少量飲酒する群と中程度(エタノール換算量で週に500g未満)の飲酒をする群で低下したが、飲酒量が多い群(週600g以上)ではリスクは上昇していた。女性でも少量から中程度(エタノール換算量で週に150g未満)の飲酒をする群で全死亡リスクは低下したが、飲酒量が多い群(週450g以上)ではリスクは有意に上昇し、男女ともに飲酒と全死亡はJ字型曲線(Jカーブ)の関係にあること分かった。

また、死因別の分析では、男性はがんと脳血管疾患による死亡と飲酒量との間にはJカーブの関係がみられたが、心疾患と呼吸器疾患による死亡との間にはU字型曲線(Uカーブ)がみられた。一方、女性はがんと心臓病、脳血管疾患による死亡と飲酒量との間にJカーブの関係がみられた。

さらに、週に1日以上飲酒する男性に限定して週当たりの飲酒量別に3つの群(週150g未満、150~299g、300g以上)に分け、休肝日がない群と比べた休肝日のある群の死亡リスクを分析した。その結果、休肝日を週に1~2日取り、かつ飲酒量が週150g未満の群では全死亡リスクが低下したほか、飲酒量にかかわらず休肝日を週に1~2日取る男性は脳血管疾患による死亡リスクが低下していた。

これらの結果から、研究グループは「今回の研究で、多量飲酒を避けて適量飲酒をすることが健康には重要なことが再確認されたほか、休肝日を取ることが健康に好影響をもたらすことが示された」と述べている。(HealthDay News 2017年11月27日)

Abstract/Full Text
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jea/advpub/0/advpub_JE20160200/_article

Press Release
http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/8045.html

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4HDN国内ニュース11月20日配信2

動脈スティフネスの進行度に遺伝的要因が影響か 進行抑制には有酸素運動が効果的、産総研

血管収縮因子であるエンドセリン(ET)受容体の遺伝子多型に特定のパターンを持つ人は、加齢に伴う動脈壁の硬化(動脈スティフネス)が増大しやすい可能性があることを産業技術総合研究所(茨城県)人間情報研究部門の菅原順氏らの研究グループが突き止めた。一方で、この10年間に及ぶ観察研究からは、動脈スティフネスが進行しやすい遺伝的要因があっても、有酸素運動を習慣的に行うことでこのリスクを低減できる可能性があることも示唆された。詳細は「Journal of Applied Physiology」11月2日オンライン版に掲載された。

心血管疾患のリスク因子である動脈スティフネスは加齢とともに増大することから、心血管疾患の一次予防には動脈壁の硬化をいかに予防するかが重要と考えられている。また、これまで動脈スティフネスの進行予防や改善には習慣的な運動が有効とする報告がなされているが、同じ対象者を長期にわたって観察した研究はほとんど行われていなかった。研究グループは今回、動脈スティフネスの進行度への遺伝的な要因による個人差や習慣的な有酸素運動による影響を調べるため10年間の追跡調査を行った。

対象は、2003~2005年に動脈スティフネスの指標である上腕足首間脈波伝播速度(brachial-ankle pulse wave velocity;baPWV)を計測したボランティアの成人男女92人。初回参加時の平均年齢は52歳で、51人が男性であった。参加者には習慣的な運動習慣について尋ね、有酸素運動量を1週間当たりの消費カロリー(METs×時間)として推定した。また、血管の緊張度の制御に関わるET-A受容体(血管収縮作用に関与)とET-B受容体(血管拡張作用に関与)の遺伝子多型のパターンを調べた。

解析の結果、10年間のbaPWVの増加量は、ET-A受容体の遺伝子多型がT/T型の場合と比べて、T/C型とC/C型の場合に有意に高く、ET-B受容体の遺伝子多型ではA/A型およびA/G型の場合と比べてG/G型の場合に有意に高かったことから、動脈スティフネスの進行度にはET受容体の遺伝子配列パターンが関係することが分かった。また、ET-A受容体がT/C型またはC/C型の場合とET-B受容体がG/G型の場合をETに関連する遺伝子リスクと仮定すると、これらのリスク因子の保有数が増えるほどbaPWVの増加量が増えていた。

さらに、参加者を1週間の有酸素運動量で(1)運動量が少ない群(5METs×時間未満)、(2)運動量が中程度の群(5METs×時間以上、15METs×時間未満)、(3)運動量が多い群(15METs×時間以上)の3群に分けて10年間のbaPWVの増加量を比較したところ、運動量が最も多い群では他の2つの群と比べてbaPWVの増加量が3分の1程度に抑えられていた。有酸素運動量とET関連遺伝子の保有リスク数はいずれも独立した動脈スティフネス進行のリスク因子であることも分かった。

以上の結果から、菅原氏らは「ETに関連する遺伝子多型に特定のパターンを持つ人は加齢に伴う動脈スティフネスの進行度が高い一方で、こうした人でも有酸素運動を習慣的に行うことで動脈硬化の進行を抑制できる可能性がある」と結論づけている。また、15METs×時間以上の活動量は速歩やジョギングを1日30~60分、週4~5日行うことに相当し、今回の調査で運動量が多かった参加者は運動を過去10年間継続していると回答していたことから、「こうした有酸素運動の効果は短期的なものではなく、日々の積み重ねによる継続的な効果だと考えられる」と付け加えている。(HealthDay News 2017年11月20日)

Abstract/Full Text
http://jap.physiology.org/content/early/2017/10/31/japplphysiol.00697.2017

Press Release
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2017/pr20171107/pr20171107.html

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4HDN国内ニュース11月20日配信1

細小血管合併症の重症化や重複でQT間隔延長リスク高まる 日本人2型糖尿病患者219人のデータを解析、日本医大

日本人の2型糖尿病患者において、糖尿病網膜症や腎症といった細小血管合併症が重症化する、もしくは神経障害を含めた3つの細小血管合併症が重複すると、致死的な不整脈につながる心電図のQT間隔延長リスクが高まることが、日本医科大学付属病院糖尿病・内分泌代謝内科の小林俊介氏と長尾元嗣氏らの研究グループの検討で分かった。2型糖尿病患者の死亡リスクを低減するためには、QT間隔といった心電図所見にも注意する必要があるという。詳細は「Journal of Diabetes Investigation」11月2日オンライン版に掲載された。

心電図のQT間隔延長は致死的な不整脈を引き起こし、心臓突然死のリスク因子になることが知られている。また、大血管合併症や細小血管合併症は糖尿病患者における心臓突然死の独立したリスク因子であり、これらを合併した患者ではQT間隔延長リスクが高いことも知られている。研究グループは今回、2型糖尿病患者の細小血管合併症(糖尿病神経障害、網膜症、腎症)に着目し、これらの合併症の重症度や重複数とQT間隔との関連を調べる観察研究を行った。

対象は、同大学病院に血糖コントロールのために入院した2型糖尿病患者219人(平均年齢は60歳、31%が女性、平均HbA1c値は9.5%)。QT間隔は、入院当日に行った12誘導心電図の第II誘導の記録で評価し、Bazett法の補正式を用いて心拍数の影響を補正した。糖尿病神経障害、網膜症、腎症の有無や重症度は、それぞれ神経障害症状やアキレス腱反射の有無、眼底検査、尿中アルブミン排泄量で評価した。

全ての対象患者のQT間隔は430±22msecであり、35%(76人)にQT間隔延長が認められた。単変量解析の結果、QT間隔延長と関連する患者の特徴として女性(P=0.025)、2型糖尿病の罹病期間(P=0.041)、BMI(P=0.0008)、収縮期血圧(P=0.0011)、インスリンの使用(P<0.0001)が浮かび上がった。

また、糖尿病神経障害または網膜症、腎症を合併した患者群では、これらの合併症がみられない患者群と比べてQT間隔が有意に延長していた(それぞれP=0.0005、0.0019、0.0001)。特に網膜症と腎症の病期が進行するにつれてQT間隔は有意に延長したほか(いずれも傾向のP<0.001)、3つの細小血管合併症が重複するとQT間隔は有意に延長した(傾向のP<0.001)。さらに、多変量回帰分析の結果、神経障害または腎症の合併と細小血管合併症の重複数がQT間隔延長と独立して関連することも明らかにされた。

以上の結果から、研究グループは「日本人2型糖尿病患者における心電図のQT間隔延長には細小血管合併症の重症化や重複が影響することが分かった。QT間隔延長は心臓突然死のリスク因子であることから、2型糖尿病患者の死亡リスクを低減するためには心電図所見にもっと注意を払う必要がある」と述べている。(HealthDay News 2017年11月20日)

Abstract
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jdi.12772/abstract

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4HDN国内ニュース11月13日配信2

飲酒量が多いほどインスリン分泌不全や抵抗性になりやすい 日本人男女2,100人の解析、帝京大

日本人の成人男女は飲酒量が多いほどインスリン分泌不全やインスリン抵抗性になりやすく、2型糖尿病の発症リスクが高まる可能性があると、帝京大学衛生学公衆衛生学の辰巳友佳子氏らの研究グループが発表した。30歳以上の男女2,100人の検査データを解析したもので、これらの関連には性差はみられないことも分かった。詳細は「Diabetes Research and Clinical Practice」10月27日オンライン版に掲載された。

日本人を対象に、飲酒によるインスリン分泌不全とインスリン抵抗性への影響を検討した研究はほとんど行われていない。国外では飲酒量が多いほどインスリン抵抗性のリスクは低いという研究結果が報告されているが、これは過剰な飲酒が2型糖尿病の発症リスクを上昇させるという国内外の多数の報告と合致しない。そこで、辰巳氏らは人間ドックを受けた成人男女を対象に前向きに追跡し、これらの関連を調べる観察研究を行った。

対象は、2008年4月~2009年3月に75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)を含む検査を受け、2型糖尿病とインスリン分泌不全、インスリン抵抗性が認められなかった30~74歳の男女2,100人。対象者を純アルコール摂取量で(1)非飲酒群、(2)軽度の飲酒群(週に男性では1~139g、女性では1~69g)、(3)中等度の飲酒群(それぞれ週に140~274g、70~139g)、(4)過度な飲酒群(それぞれ週に275g以上、140g以上)の4群に分けてアルコール摂取量と追跡時に毎年行った75gOGTTで評価したインスリン分泌不全(インスリン分泌指数が51.7以下)またはインスリン抵抗性(HOMA-IRが2.5以上)の発症との関連を調べた。

4.3年(中央値)の追跡期間中に708人がインスリン分泌不全を発症し、5.0年(中央値)の追跡期間中に191人がインスリン抵抗性を発症した。解析の結果、インスリン分泌不全になるリスクは、全く飲酒をしない群と比べて軽度の飲酒群では1.16倍、中等度の飲酒群では1.35倍、過度な飲酒群では1.64倍であり(傾向P<0.001)、インスリン抵抗性のリスクについても同様にそれぞれ1.22倍、1.42倍、1.59倍(傾向P=0.044)であったことから、飲酒量の増加に伴ってこれらのリスクは有意に上昇することが分かった。

また、追跡期間中に89人が2型糖尿病を発症しており、そのリスクは飲酒量の増加に伴い上昇していたが(非飲酒群と比べて軽度群で1.05倍、中等度群で1.46倍、過度な飲酒群で1.83倍、P=0.014)、糖尿病リスクと飲酒量の量反応関係は多変量調整後の解析では消失していた。

以上の結果から、辰巳氏らは「全く飲酒をしない人と比べて、飲酒量が多い人ほどインスリン分泌不全やインスリン抵抗性になるリスクは上昇することが分かった。過度な飲酒は、インスリン分泌不全とインスリン抵抗性の両方を介して糖尿病の発症に影響を及ぼしている可能性がある」と述べている。(HealthDay News 2017年11月13日)

Abstract/Full Text
www.diabetesresearchclinicalpractice.com/article/S0168-8227(17)31228-7/abstract

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4.1.1

メトホルミンががん予防につながる可能性 マウス実験で検証、岡山大グループ

2型糖尿病の治療薬として世界で最も多く処方されているメトホルミンが、がんに対する免疫反応を抑制する制御性T細胞の増殖と機能を抑えてがんの予防や治療に有用な可能性があることを、岡山大学大学院免疫学教授の鵜殿平一郎氏らの研究グループが突き止めた。メトホルミンにより制御性T細胞の働きを抑えることで、がん細胞を攻撃する細胞傷害性T細胞の機能を妨げることなく、がんに対する免疫作用を増強する可能性があるという。詳細は「EBioMedicine」10月15日オンライン版に掲載された。

免疫細胞の一種である制御性T細胞は、体に対する過剰な免疫反応を抑える一方で、がんに対する免疫反応を抑制し、がん細胞を攻撃する細胞傷害性T細胞の機能も抑えてしまうことが知られている。そのため、がんの予防や治療には、がんの中に存在する制御性T細胞だけを抑制し、がん以外の部分にある制御性T細胞の数や機能には影響を及ぼさないことが理想とされていた。

研究グループは既に、正常なマウスにがん細胞を移植して作製した担がんマウスを用いた検討で、メトホルミンががんを攻撃する免疫細胞の疲弊を回復させ、腫瘍の塊を縮小させることを見出していた。今回の検討でも担がんマウスにメトホルミンを飲料水に混ぜて投与したところ、一般には腫瘍の塊の中で増殖するはずの制御性T細胞(CD4+CD25+T細胞)にアポトーシス(細胞死)が起こり、制御性T細胞の数が著しく減少することを見出した。

また、制御性T細胞が生存するには本来、エネルギー代謝の過程で脂肪酸を取り込んでクエン酸回路と酸化的リン酸化反応(細胞内で起こる呼吸に関連した現象で、高エネルギー化合物のATPを産生する回路の一つ)に依存している。しかし、詳細な解析の結果、糖代謝の改善に働くメトホルミンを投与すると、糖を起点とした解糖系が亢進し、それまで脂肪酸を取り入れて生存していた制御性T細胞の代謝バランスが崩れて、結果的に細胞死に至る可能性が示唆された。

研究グループは、新しいがん治療として注目を集めている免疫療法は進行期のがんでの奏功率が20%弱にとどまり、自己免疫疾患などの副作用の課題が残されている点を指摘しつつ、「メトホルミンは免疫細胞の代謝バランスを変化させることで、がん局所だけの制御性T細胞を抑制する可能性を示した今回の知見は、今後のがん免疫療法に新しい展開をもたらすのではないか」と期待を示している。(HealthDay News 2017年11月13日)

Abstract/Full Text
http://www.ebiomedicine.com/article/S2352-3964(17)30405-X/fulltext

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