1HDN9月20日「パッケージニュース」No.1

自殺者の約10人に1人に慢性疼痛

米国では、慢性的に続く疼痛が耐えがたく自殺を選ぶ人も少なくないことが、新たな研究で示唆された。研究の詳細は「Annals of Internal Medicine」9月11日オンライン版に掲載された。

米国では2500万人を超える成人が慢性的な痛みを抱えており、このうち1050万人は憂慮すべき痛みに毎日耐えているとされる。米国立傷害予防管理センター(NCIPC)のEmiko Petrosky氏らは今回、全米暴力死報告制度(National Violent Death Reporting System)に登録している米国18州で2003~2014年に発生した12万3,181件の自殺のデータを分析した。

その結果、自殺者の8.8%(1万789人)は慢性的な痛みを抱えていたことが明らかになった。これらの多くは腰痛やがん性疼痛、関節炎が占めていた。また、慢性疼痛を抱えている自殺者の割合は、2003年の7.4%から2014年には10.2%へと増加していた。

さらに、自殺者でも慢性疼痛のない人に比べて、慢性疼痛を伴う人では不安症やうつ病と診断される割合が高かった。慢性疼痛のある自殺者の半数以上(約54%)が拳銃自殺であり、オピオイドの過剰摂取による死亡も約16%に達していた。薬物検査の結果を入手できた自殺者では、慢性疼痛のある人はない人に比べて死亡時にオピオイドが検出される確率が大幅に高かった。

米ミシガン大学精神科のMark Ilgen氏は同誌の付随論評で、事態はもっと複雑だとの見方を示している。同氏は「今回の研究では、疼痛を訴えていた自殺者の3分の2以上が自殺への誘因として、痛みやそれによる長期にわたる苦痛を挙げていた」と指摘する。その上で、「今回の結果は、疼痛の治療では痛みを軽減するだけでなく、慢性疼痛を抱えている患者に生きる希望を与えることも重要なことが示された」と話している。

また、Ilgen氏は、自殺とオピオイド使用の関連については今後、より詳しく研究する必要があるほか、慢性疼痛患者のケアの一環として自殺予防対策を組み入れることが重要だと付け加えている。(HealthDay News 2018年9月10日)

https://consumer.healthday.com/bone-and-joint-information-4/pain-health-news-520/chronic-pain-may-drive-some-to-suicide-737451.html

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1HDN9月20日「パッケージニュース」No.2

高齢者の転倒予防に「太極拳」が有効?

高齢者の転倒予防には、筋力トレーニングやエアロビクスよりも太極拳の方が優れている可能性があることが、約600人の高齢者を対象に行ったランダム化比較試験で明らかになった。詳細は「JAMA Internal Medicine」9月10日オンライン版に掲載された。

米国では、年間に高齢者の約28%が転倒を経験し、5件のうち2件は救急受診や入院を要し、最悪の場合には死亡に至るとされる。また、65歳以上で転倒すると自立した生活が送れなくなったり、早期死亡や医療費の増大と有意に関連することが知られている。

太極拳は古代から伝わる中国武術の一種で、一定のリズムでバランスを取りながら一連のポーズを流れるように行う。論文著者の一人で米ウィラメット大学運動・健康科学科教授のPeter Harmer氏によると、太極拳による転倒リスクの低減効果については長年、検討されてきたという。

しかし、伝統的な太極拳には100種類以上の動きがあり、一般人が覚えるのは難しい。そこで、研究チームは転倒予防に関連した8種類の基本的な動きに絞った簡略版を開発。米オレゴン州に在住し、転倒の既往があるなど転倒リスクが高い70歳以上の高齢者670人(平均年齢77.7歳、女性65%)を対象に、太極拳プログラムを行う群または筋力トレーニングとエアロビクスを組み合わせた従来の運動プログラムを行う群、ストレッチのみを行う対照群の3つの群にランダムに割り付けて比較検討した。それぞれ60分の運動クラスを週に2回、24週間続けてもらった。

その結果、6カ月後の転倒の発生率は、ストレッチのみを行う対照群に比べて、太極拳を行った群では58%低かったのに対し、従来の運動プログラムを行った群では40%低いことが分かった。また、太極拳を行った群では、従来の運動プログラムを行った群に比べて転倒の発生率は31%低いことも明らかになった。

従来の運動プログラムは前後方向の動きが中心なのに対し、太極拳ではあらゆる方向への動きが求められる。論文の共著者で米オレゴン健康科学大学看護学部教授のKerri Winters-Stone氏は「転倒の起こり方はさまざまで予測できない。太極拳では体を重心の外側へ移動させ、また引き戻す動きを行う。そのため、太極拳を経験している人は転びそうになると、その動きに逆らって素早くバランスを取り戻せるのではないか」と説明している。

今回の結果からは、高齢者の転倒予防には太極拳が優れていることが示された。しかし、理学療法やリハビリテーションを専門とする米メイヨー・クリニックのNathan LeBrasseur氏は「転倒を予防するには従来の運動でも十分に有効であるため、筋肉トレーニングやエアロビクスを行っている人はぜひ続けてほしい」と話している。

Harmer氏によると、転倒した経験のある人は、再び転ぶことを恐れて体を動かさなくなることも転倒のリスク因子であることが分かっているという。「今回行った太極拳プログラムは、こうした負のサイクルを断ち切るのに適している」と同氏は話している。LeBrasseur氏もこの考えに同意し、「高齢者は自分の健康のためには種類は問わず、もっと運動をすべきだ」と述べている。(HealthDay News 2018年9月10日)

https://consumer.healthday.com/alternative-medicine-information-3/exercise-t-ai-chi-or-oriental-283/an-ancient-art-may-work-best-to-prevent-falls-in-old-age-737581.html

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1HDN9月20日「パッケージニュース」No.3

日中の眠気はアルツハイマー病の徴候か

日中に眠気を感じる人は、アルツハイマー病を発症するリスクが高い可能性があることが、米ジョンズ・ホプキンス大学公衆衛生大学院メンタルヘルス科准教授のAdam Spira氏らによる研究から示唆された。平均年齢60歳の男女123人を対象としたこの研究では、日中の眠気がある人では、眠気のない人に比べてアルツハイマー病に関与するとされるアミロイドβと呼ばれるタンパク質が脳内に蓄積する確率が高いことが分かった。詳細は「Sleep」9月5日オンライン版に発表された。

この研究は、認知機能が正常な地域住民を対象に、日中の眠気や昼寝の習慣と平均で15年以上経過した時点の脳画像に基づく脳内のアミロイドβの蓄積との関連を検討したもの。対象は、米ボルチモアで実施された加齢に関するコホート研究の脳画像検査を用いたサブスタディ(Baltimore Longitudinal Study of Aging Neuroimaging Substudy)に参加し、研究開始時に日中の眠気や昼寝の習慣について自己申告し、平均で15.7年後にPittsburgh Compound B(PiB)-PETによる脳画像検査を受けた男女123人。研究開始時の平均年齢は60.1歳で、24.4%に日中の眠気が、28.5%に昼寝の習慣があった。

解析の結果、日中に眠気がない群と比べて眠気がある群では脳画像検査で脳内にアミロイドβの蓄積が認められる確率が高いことが分かった(調整後オッズ比は2.75)。一方、昼寝の習慣については、交絡因子で調整後の解析でアミロイドβの蓄積との間に有意な関連は認められなかった。

Spira氏は「アルツハイマー病を予防するには食事や運動、脳トレーニングなどが重要な要素であることが知られているが、睡眠はこれまでそれほど注目されてこなかった。しかし、今後は、睡眠不足はアルツハイマー病のリスク因子であるというように見方が変わるかもしれない」と話している。

今回の研究はこれらの因果関係を証明するものではないが、Spira氏によれば、睡眠時無呼吸などによって引き起こされた睡眠不足が何らかのメカニズムで脳内にアミロイドβの蓄積をもたらした可能性が考えられるという。その一方で、同氏は「睡眠を評価した時点で既に脳内のアミロイドβが蓄積しており、そのことが眠気をもたらした可能性も否定できない」としている。

なお、これまでに動物実験で夜間の睡眠時間を制限すると脳内や脊髄液のアミロイドβの蓄積につながることや、ヒトを対象とした研究で睡眠不足が脳内のアミロイドβの蓄積と関連することが報告されている。Spira氏は「アルツハイマー病の治療法はいまだ確立されておらず、予防に最善を尽くす必要があるが、今後、治療法が開発されたとしても予防を重視すべきだ」と強調。「十分な睡眠を取ることは認知機能の低下に対する予防策の一つになりうるだろう」と付け加えている。(HealthDay News 2018年9月11日)

https://consumer.healthday.com/cognitive-health-information-26/alzheimer-s-news-20/daytime-drowsiness-a-sign-of-alzheimer-s-737531.html

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1HDN9月20日「パッケージニュース」No.4

オピオイド処方例の3分の1に疼痛の診断歴なし

米国ではオピオイド系鎮痛薬(以下、オピオイド)の依存症の蔓延が問題となっているが、米ハーバード大学医学部内科/米ブリガム・アンド・ウィメンズ病院のTisamarie Sherry氏らが実施した調査から、外来患者のオピオイド処方例の3分の1近くで疼痛と診断された記録がないことが明らかになった。この結果を受け、同氏らは「依存性の高い薬剤を処方する際には、処方時の記録に関する規制を強める必要がある」と指摘している。調査結果は「Annals of Internal Medicine」9月11日号に発表された。

米疾病対策センター(CDC)によると、2016年に米国で薬物の過剰摂取が原因で死亡した人は6万3,600人を超える。このうち3分の2がオピオイドに関連した死亡だった。また、米国では毎日平均115人がオピオイドの過剰摂取により死亡していると推定されている。

Sherry氏らは今回、全米の外来患者の調査データを用いて、2006~2015年の外来患者(18歳以上)の約8億900万件に上る医療記録を調べた。その結果、このうち3万1,943件でオピオイドが処方されており、5.1%はがん性疼痛に、66.4%は腰痛や糖尿病性神経障害、変形性関節症などの非がん性疼痛に対して処方されていた。

しかし、残る28.5%では疼痛や疼痛に関連した疾患と診断された記録がなく、高血圧や脂質異常症、オピオイド依存症(全体の2.2%)などに対してオピオイドが処方されていた。疼痛と診断された記録がないオピオイド処方例の割合は、新規処方例(22.7%)と比べて継続処方例(30.5%)で高いことも分かった。

Sherry氏らは、過去20年にオピオイド処方は劇的に増加しており、その増加率は人口における疼痛患者の増加率を上回っているとし、「オピオイドが適応ではない疾患に対しても高頻度で処方されている可能性がある」との見方を示している。

依存症の専門家で米スタテン・アイランド大学病院のHarshal Kirane氏は「度重なる政策の変更にもかかわらず、米国内のオピオイド処方率に意味のある減少は認められていないとする分析結果が報告されている」と指摘する。その上で、Sherry氏らの調査結果について、「ずさんな処方の習慣が依然としてまかり通っていることを示した結果であり、憂慮すべきだ」と話している。

オピオイド中毒の惨状を目の当たりにしてきた米レノックス・ヒル病院の救急医であるRobert Glatter氏は「疼痛の緩和を求める患者に、なぜ最初からオピオイドを処方する必要があるのか、われわれは自問すべきだ」とした上で、副作用や依存症のリスクが低いオピオイド以外の治療薬の選択を考慮することを勧めている。また、正当な理由でオピオイドが処方された症例に対しても、継続処方の妥当性を疑うべきだと強調している。(HealthDay News 2018年9月10日)

https://consumer.healthday.com/mental-health-information-25/addiction-news-6/no-documented-reason-for-1-in-3-outpatient-opioid-rxs-study-737534.html

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1HDN9月18日「パッケージニュース」No.1

世界成人14億人に運動不足による疾患リスク、WHO調査

世界で成人の4人に1人が運動不足による疾患リスクに直面しているとみられることが、世界保健機関(WHO)の研究チームの調査で明らかになった。14億人を超える成人が座りがちな生活による運動不足が原因で心疾患や糖尿病、認知症、一部のがんを発症しやすい状態にあるという。詳細は「The Lancet Global Health」9月4日オンライン版に掲載された。

WHO非感染性疾患予防部門のRegina Guthold氏らは今回、世界168カ国、計190万人の18歳以上の成人を対象に実施された358件の調査データを用いて、国や地域別の運動不足の人の割合について分析を行った。

その結果、2016年には世界の女性の約3人に1人(31.7%)、男性の4人に1人(23.4%)が推奨される身体活動レベル(中強度運動を週に150分以上または高強度運動を週に75分以上)に達していないことが分かった。また、東アジアと東南アジアを除く全ての地域で、女性は男性に比べて運動量が少ないことも明らかになった。

そのほか、高所得国では、2001年から2016年にかけて運動不足の成人の割合は約5ポイント増加し36.8%に達したのに対し、東アジアや東南アジアといった低所得国では0.2ポイント増の16.2%にとどまっていた。この結果について、Guthold氏らは、高所得国ではデスクワークなどで座りがちな仕事が増えたことや車社会の発達で運動不足が加速しているのではとの見方を示している。

これらの結果を踏まえ、Guthold氏らは「自転車や徒歩で通勤したり、積極的にスポーツを楽しめるようなインフラ整備を国レベルで進めることが重要だ」と指摘している。論文の共著者でWHO同部門のFiona Bull氏は、こうした取り組みにおいては、特に女性が運動できる環境を整備して運動量の男女差を解消することが不可欠だと付け加えている。

この研究論文の付随論評を執筆したシドニー大学(オーストラリア)のMelody Ding氏によれば、一部の国や地域では女性が運動するのを妨げる社会的、文化的な障壁があり、例えば、女性の活動が著しく制限されるサウジアラビアやイラクでは成人の約半数が運動不足であると推計されるという。同氏はまた、「今回の調査では低所得国よりも高所得国で運動不足の蔓延が深刻化しているという結果が得られたが、運動不足に関連する疾患の負荷は低中所得の国でより大きいことにも注意が必要だ」と話している。(HealthDay News 2018年9月5日)

https://consumer.healthday.com/fitness-information-14/misc-health-news-265/over-1-4-billion-of-world-s-adults-face-disease-because-of-inactivity-who-says-737408.html

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1HDN9月18日「パッケージニュース」No.2

消防士に勤務中の心臓突然死が多い理由

勤務中に突然の心停止で死亡した消防士の多くでは、冠動脈の狭窄や心肥大、左心室壁の肥厚といった心臓の構造的な異常がみられることが、剖検記録を分析した新たな研究で明らかになった。詳細は「Journal of the American Heart Association」9月5日オンライン版に掲載された。

米国では勤務中の消防士の死因として心臓突然死の頻度が最も高く、7人に1人が心停止により命を落としているとされる。米スキッドモア大学のDenise Smith氏らは、消防士が心臓突然死を来すリスクが高い理由を探るため、1999~2014年に勤務中に死亡した18~65歳の男性消防士627人の剖検記録を分析した。対象者のうち心臓突然死を来した276人と心臓以外の外傷が原因で死亡した351人を対照群として、心臓の剖検結果を比較した。

その結果、心臓突然死を来した群の82%には冠動脈の狭窄(冠動脈疾患)や心肥大、左室肥大といった心臓の異常が認められることが分かった。心臓突然死群では対照群に比べて、心臓の重量が450gを超える心肥大や左心室壁の厚さが1.2cm以上となる左室肥大、75%以上の重度の冠動脈狭窄病変を有する割合が高かった。さらに、多変量解析の結果、重度の心肥大と冠動脈の狭窄病変、心筋梗塞の既往はそれぞれが心臓死の独立したリスク因子であることも明らかになった(オッズ比はそれぞれ6.1、9.3、6.2)。

今回の結果を受けて、Smith氏は「現場の消防士は多くの危険に直面しているが、最大のリスクは心血管疾患と作業に伴う心理的負担が重なることだ」と強調し、消防士はこうした負荷の大きい作業に耐えうる健康状態であることを事前に確認する必要があるとしている。

また、消防士を対象とした検診では、これまで主に冠動脈疾患のリスク因子に焦点が当てられていたが、Smith氏は「今後はそれ以外にも、心肥大や左室肥大などの評価も考慮することが重要になるだろう」と付け加えている。(HealthDay News 2018年9月5日)

https://consumer.healthday.com/cardiovascular-health-information-20/misc-stroke-related-heart-news-360/why-so-many-firefighters-die-from-cardiac-arrest-737406.html

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1HDN9月18日「パッケージニュース」No.3

単回経口投与型の抗インフル薬で有望な結果

単回経口投与型の抗インフルエンザウイルス薬は、プラセボに比べて咳や喉の痛み、頭痛などのインフルエンザ症状の軽減に優れ、その効果はオセルタミビルと同程度であるとする2件の臨床試験の結果が「New England Journal of Medicine」9月6日号に発表された。この坑インフルエンザウイルス薬はバロキサビル マルボキシル(以下、バロキサビル)と呼ばれ、日本国内ではゾフルーザの製品名で2018年2月に製造販売承認を取得している。

論文の筆頭著者で米バージニア大学医学部教授のFrederick Hayden氏によれば、流行中のインフルエンザウイルスは、アマンタジンやリマンタジン(日本国内未承認)といった古いタイプの抗インフルエンザウイルス薬に耐性を示し、オセルタミビルやザナミビルにも耐性を獲得しつつあることから、現行の治療には限界があると指摘する。そのため、これまでの薬剤とは作用機序が異なる、より効果の高い新たな坑インフルエンザウイルス薬の開発が待たれていたという。

今回報告された2件の臨床試験のうち1件は第2相試験で、2015/2016シーズンにインフルエンザに罹患した、普段は健康で合併症リスクの低い20~64歳の患者約400人を対象としたもの。対象患者を3用量のバロキサビル(10~40mg)投与群とプラセボ投与群にランダムに割り付けて比較した結果、バロキサビルを投与した3つの群ではプラセボ群よりも早くインフルエンザ症状の緩和がみられた。

また、次のインフルエンザシーズンに、12~64歳のインフルエンザ患者約1,100人を対象に実施した第3相試験では、対象患者をバロキサビル群またはオセルタミビル群にランダムに割り付けて比較した。その結果、両群でほぼ同時期にインフルエンザの症状が緩和され、副作用リスクも同程度であることが分かった。

Hayden氏によると、今回の臨床試験ではバロキサビルによってインフルエンザの症状が迅速かつ効果的に、また安全に緩和され、その程度は既存の治療薬と同程度であっただけでなく、耐性の問題も認められなかった。さらに、バロキサビルには強力な抗ウイルス作用も認められたという。しかも、タミフルは1日2回、5日間の服用を必要とするのに対し、バロキサビルはたった1回服用するだけで済むという利便性の高さも注目されている。

今回の臨床試験はバロキサビルを開発、製造した塩野義製薬の助成を受けて実施された。同薬は日本で既に承認されているが、米国ではまだ開発中の薬剤として位置づけられており、年内にも米食品医薬品局(FDA)の審査結果が出る見込みだという。

米疾病対策センター(CDC)インフルエンザ部門チーフメディカルオフィサーのTimothy Uyeki氏は同誌の付随論評で、バロキサビルの利点について、単回投与で済むため服薬コンプライアンスの向上が期待できることを挙げている。ただ、今回報告された臨床試験は、健康で合併症リスクの低い患者を対象としていたことから、「子どもや高齢者、妊婦、持病のある人などリスクが高い人でも同様に有益なのかどうかは、さらなる研究で検証する必要がある」と述べている。(HealthDay News 2018年9月6日)

https://consumer.healthday.com/infectious-disease-information-21/flu-news-314/new-one-dose-flu-drug-shows-promise-737470.html

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1HDN9月18日「パッケージニュース」No.4

トランプ氏勝利の背景に「絶望による死」の増加

健康状態の悪さや早期死亡率の高さに対する有権者の絶望感が、2016年の大統領選でドナルド・トランプ氏を勝利に導いた可能性があることが、米コロンビア大学のLee Goldman氏らの研究で明らかになった。同氏らの分析から、前回の大統領選から共和党の得票率が伸びた郡では、民主党の得票率が伸びた郡と比べて年齢調整死亡率が15%高く、特にトランプ氏の支持率が顕著に上昇した郡では「絶望による死」が大幅に増加していたことが分かった。詳細は「Journal of General Internal Medicine」9月5日オンライン版に発表された。

この研究では、共和党が勝利した郡では、アルコールや薬物、自殺を原因とした死亡者数が、民主党が勝利した郡の2.5倍であることも明らかになった。Goldman氏は「死亡率は不満や落胆、絶望感の重要なマーカーである可能性がある。また、文化的な超越性(cultural displacement)に対する恐怖心が、特に都市部以外の地域に住む白人労働者をトランプ大統領の支持に向かわせたと考えられる」と話す。

Goldman 氏らは今回、全米の3,112郡の選挙データを用いて2008~2016年に行われた大統領選の投票パターンの変化について分析した。次に、投票パターンの変化を各郡の死亡率の変化と照らし合わせた。

その結果、2008年の前回の大統領選と比べて2016年に民主党の得票率が下がり、共和党の得票率が上がった郡では、年齢調整死亡率が高いことが分かった。Goldman 氏らは、研究では関連が認められたに過ぎないとしながらも、「死亡率による影響力は、2016年の大統領選でいくつかの州において投票をトランプ氏に向かわせるには十分だった」と主張している。

一方、今回の研究からは、民主党の支持率が高まった郡では、アルコールや薬物、自殺に関連した死亡が全死亡に占める割合は5%程度であることも明らかになった。この点について、Goldman氏は「共和党の支持率が高まった郡では全体的な死亡率が高かったが、こうした絶望による死への有権者の怒りが時間をかけて地域中に広がっていったのではないか」と推測している。

なお、この研究では、トランプ氏によって共和党の得票率が上昇した郡は、ヒラリー・クリントン氏によって民主党の得票率が上昇した郡と比べて住民の平均年齢や白人の割合、貧困率が高く、教育レベルが低いことも分かった。

Goldman氏らのこの報告を受け、米ノースウェル・ヘルスのシニアバイスプレジデントであるIra Nash氏は「この論文が妥当であるなら、極めて皮肉な結果だ。ソーシャルサービスやヘルスケアの利用を必要とする層が、いずれも削減しようとしている政党に投票したと言える」とコメントしている。(HealthDay News 2018年9月5日)

https://consumer.healthday.com/general-health-information-16/misc-alcohol-news-13/deaths-of-despair-may-have-helped-fuel-trump-s-victory-study-737411.html

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1HDN9月13日「パッケージニュース」No.1

液体窒素を添加した食品で重傷例、米FDAが注意喚起

米食品医薬品局(FDA)は8月30日、液体窒素を添加した食品を食べたり触れたりして重傷を負ったり、蒸気を吸い込んで呼吸困難に陥った症例の報告数が増えているとして、こうした液体窒素を加えた食品の安全性に対する注意喚起を行った。

カラフルなシリアルやコーンスナックなどの菓子や飲料に液体窒素を加えて煙状の蒸気を発生させた食品は、食べると口や鼻から白い煙を吐き出せることから、“Dragon’s Breath(ドラゴンの息)”、“Heaven’s Breath(天国の息)”などの名称で人気を集めている。

FDAによれば、液体窒素そのものに毒性はないが、極めて低温であるため、残っていた液体窒素に触ったり、口に入れたりすると皮膚や内臓の損傷といった重傷を負う危険性がある。また、液体窒素の蒸気を吸い込むと、特に喘息患者などは呼吸困難に陥ることもあるという。専門家の一人で米レノックス・ヒル病院の救急医であるRobert Glatter氏は「こうした菓子や飲料を販売する際には、購入客の手に渡る前に液体窒素を完全に蒸発させることが重要だ」と強調している。

また、Glatter氏は「液体窒素を液体の状態のまま口に入れると、口腔内や食道、上気道のやけどの原因となり、内臓に穿孔や破裂が生じて最悪の場合には死に至る危険をはらんでいる。また、液体の状態で触れば、手や指をやけどする可能性もある」と説明する。さらに、喘息などの呼吸器疾患のある患者が液体窒素の蒸気を吸い込むと、気道が収縮し、喘息発作の引き金となったり、呼吸器疾患の悪化につながることがある。「肺に炎症を引き起こし、誤嚥から肺炎などの感染症を誘発する危険性もある」と同氏は付け加えている。

FDAは、菓子や飲料に添加した液体窒素を原因とするけがや呼吸困難の症例は増加傾向にあるとしている。「親も子どもも液体窒素を加えたポップコーンやシリアルは危険であることを認識しておく必要がある。このような製品は楽しさやスリルを味わえるが、救急を受診する原因にもなりかねない」とGlatter氏は注意を促している。

FDAは、液体窒素を添加した食品でけがをした場合は医師の診察を受けるとともに、安全報告プログラム(MedWatch)に報告するよう広く呼び掛けている。(HealthDay News 2018年8月31日)

https://consumer.healthday.com/public-health-information-30/food-safety-news-589/fda-warns-of-dangers-of-liquid-nitrogen-in-food-drinks-737315.html

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1HDN9月13日「パッケージニュース」No.2

体外受精で生まれた子どもは高血圧リスクが高い可能性

体外受精や顕微授精などの生殖補助医療(ART)によって生まれた子どもは高血圧になりやすいことが、10歳代の若者を対象とした新たな研究で示唆された。詳細は「Journal of the American College of Cardiology」9月11日号に掲載された。

ベルン大学(スイス)のEmrush Rexhaj氏らが実施した今回の研究では、ARTによって生まれた健康な10歳代の若者54人と、年齢と性をマッチさせた自然妊娠により生まれた43人(対照群)を対象に24時間自由行動下血圧測定(ABPM)を行った。その結果、ARTにより生まれた若者の群では、対照群に比べて24時間血圧の平均値が高く、血圧変動も大きいことが分かった。また、ART群では8人(約15%)が高血圧の診断基準(130/80mmHg超)に達していたのに対し、対照群では1人に過ぎないことも明らかになった。

これまでの研究で、ARTによって生まれた子どもは早い時期から血管の老化が進み、動脈硬化が進展しやすいことが報告されている。このことが高血圧の早期発症をもたらしている可能性があると、専門家らは指摘している。このうちの一人で米フロリダ大学ヘルスの循環器内科医であるKi Park氏は「この研究は非常に重要だ。ARTで生まれた子どもには、長期的に血管が変化している徴候が確かに認められ、それがごく早い時期に現れている」と述べている。

米国では10歳代の高血圧の有病率は3.5%と推定されており、この研究論文の付随論評を執筆した米ハーバード大学医学部のLarry Weinrauch氏は「今回示された15%という数値は注目すべきものだ」と強調する。「ARTで生まれた子どもは高血圧のリスクが高いことを知っておく必要がある」と同氏は述べ、定期的な血圧測定の方法などについて小児科医に相談するよう助言している。

ARTには主に体外受精(IVF)や卵細胞質内精子注入法(ICSI)といった顕微授精などがある。Weinrauch氏によれば、米国では毎年、出生児の約1.7%がARTにより誕生している。同氏は「ARTは不妊に悩むカップルにとってすばらしい技術だ。これまでに600万人を超える子どもがこの技術により誕生している」と述べる一方で、成長に伴って現れる健康への影響について、今後も徹底した研究を続けることが重要だとしている。

また、今回対象とした子どもの母親は比較的若く健康で、早産や低出生体重児などもみられなかった。このことから、ParkとWeinrauchの両氏は、ARTによって生まれた子どもで血管機能の低下がみられた原因は、両親の健康状態ではなくARTそのものによる影響ではとの見方を示している。Rexhaj氏も、研究に参加した子どもの兄弟には血管機能に異常はみられなかったほか、これまでの動物実験でARTが血管の発達に影響を及ぼす可能性が示唆されていると指摘している。

ただ、今回の結果はARTと子どもの高血圧の因果関係を証明するものではない。Weinrauch氏によればARTの歴史は1978年に始まったばかりで、ARTで生まれた人が心疾患や脳卒中を発症するリスクが平均を上回るかどうかはまだ結論づけられないという。Rexhaj氏は「ただ一つ言えることは、誰もがそうであるように、ARTで生まれた人も健康的な生活習慣を守るべきということだ」と話している。(HealthDay News 2018年9月4日)

https://consumer.healthday.com/cardiovascular-health-information-20/high-blood-pressure-health-news-358/ivf-may-put-children-at-risk-for-high-blood-pressure-737305.html

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