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薬剤溶出ステント、FDAは継続の姿勢(2006.12.08掲載)

Image 薬剤溶出性のステント(血管を開いた状態に保つ円筒形の金属メッシュ)が、凝血や心臓発作による死亡リスクを増大させることが複数の研究で示されたことを 受けて、米国食品医薬品局(FDA)諮問委員会によって2日間にわたる討議が行われた。その結果、同委員会は、しかるべき警告を表示した上で、薬剤溶出ス テントの市販を継続するべきであるとの見解を発表した。

薬剤溶出ステントは、薬剤を溶出することにより血管形成術後の再狭窄を防止する。従来の金属ステントでは頻繁に再狭窄が生じ、 再施術を要することが多かったが、数年前より薬剤溶出ステントが主流となり、これまでに世界で約600万人が同ステントを留置していると推定されている。 しかし、最近の研究では長期的なリスクが示唆されており、同ステントが米国で毎年2,160人の死亡数増加をもたらしているという報告もある。

諮 問委員会は今回、薬剤溶出ステントと各リスクとの間に相関はみられるものの、因果関係については証拠不十分とした。ただし同ステントを留置した患者は、少 なくとも1年間は抗血液凝固薬を使用する必要があると示唆。専門家からは、認可外使用の多い点が問題という指摘もある。薬剤溶出ステントの使用は2個まで が認可されており、3個以上は認可外使用となるが、この処置を受ける患者の60%は認可外使用だという。諮問委員会は、認可外の使用について医師への警告 を説明書に表示することを勧告しているとAP通信は報じている。

これに対し、FDAの対応は根拠の不確かさを反映する ものであり、同ステントによる処置を受ける患者数を考えれば憂慮すべきことであると指摘する専門家もいる。別の専門家は、抗血液凝固薬使用に関する勧告は 不十分と指摘しているほか、従来の冠動脈バイパス術を採用するべき症例にステントが使用されることへの懸念を挙げている。しかし同時に、薬剤溶出ステント のおかげで再狭窄の問題が完全に解消され、臨床の場に劇的な変化がもたらされたことも事実であり、全体として、問題の発生率はきわめて少ないとも述べてい る。

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高蛋白(たんぱく)食は癌(がん)リスクを高める(2006.12.07掲載)

Image 低蛋白(たんぱく)食はある種の癌(がん)から身体を守り、高蛋白食は癌リスクを上昇させることが、米医学誌「American Journal of Clinical Nutrition」12月号掲載の研究で明らかになった。

研 究は、①低蛋白・低カロリーの未加工食品や野菜を摂取する痩せ型の群、②週平均48マイル(約77km)のランニングをする人で、食事は①よりカロリーや 蛋白質の多い、標準的な西洋食を摂取する群、③糖分、加工精製した穀物、動物性食品が多い標準的な西洋食を摂取する運動量の少ない群-の3つのグループを 対象に行われ、各群それぞれ21人が割り当てられた。

1群は、体重1kgに対して1日平均0.73gの蛋白質を、2群 は1.6g、3群は1.23g摂取した。研究著者で米ワシントン大学(ミズーリ州)医学助教授のLuigi Fontana博士は、蛋白質の1日推奨摂取量は0.8gとしている。研究の結果、1群の人では、2群と3群に比較してインスリン様成長因子1(IGF- 1)値が有意に低いことが明らかになった。IGF-1高値は、閉経前乳癌、前立腺癌、大腸癌に関与していることが知られている。

Fontana 博士は「IGF-1高値では、変異細胞が癌化する可能性がより高い。低カロリー、低蛋白食の人では、西洋食を摂取する痩せ型のアスリートよりIGF-1値 が低いことが示されたが、このことは体重とは無関係に、低蛋白食がIGF-1値を低下させることを示唆している」と述べている。

米ハーバード大学(ボストン)公衆衛生学部疫学教授のDimitrios Trichopoulos博士も、高蛋白食は特定の癌リスクを上昇させると指摘。同博士らは、医学誌「European Journal of Clinical Nutrition」11月29日号オンライン版掲載の研究で、健康な成人2万2,944人のデータを集約し、低炭水化物・高蛋白食を摂取する人では死亡率が増加することを明らかにしている

し かし、こうした研究結果にもかかわらず、Tricholopolos氏は、癌リスクを軽減し、長生きするために低蛋白食を勧めるには時期尚早とし、その理 由として、「最近の研究で相反する結果が報告されており、現時点では相互関係が解明されるのを待つべきであろう」と述べている。

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抜け毛防止薬が前立腺癌(がん)検査値に影響(2006.12.05掲載)

Image 抜け毛防止用の内服薬プロペシア(商品名)によって、前立腺癌(がん)のスクリーニングに用いられる前立腺特異抗原(PSA)検査の結果が変化し、疾患の 有無が不明確になるという知見が報告された。米ブリガム・アンド・ウィメンズ病院(BWH、ボストン)のAnthony D'Amico博士らによるこの報告は、英医学誌「Lancet Oncology」オンライン版12月5日号に掲載されたもので、同博士は、プロペシアを使用している男性は、このことを知っておくべきだと述べている。

男性は主に40~50代から定期的にPSA検査を受け始める。PSA値は通常は低いが、前立腺癌または良性の症状によって上昇す る。プロペシアの有効成分はフィナステリドという薬剤で、元来は前立腺肥大症の治療のために開発されたもの。その後、抜け毛治療に使用されるようになり、 米国では現在、約100万人が抜け毛を食い止めるためにこの薬剤を使用している。

2003年に発表された大規模研究で は、前立腺肥大症治療を目的とするフィナステリド製剤Proscar(日本国内未承認)に、前立腺癌の減少との関連がみられることがわかった。 D'Amico博士によると、ProscarによってPSA値が変化することもここ数年知られていたが、プロペシアのフィナステリド含有量は Proscarの5分の1であるため、プロペシアに同じ作用があるかどうかはわかっていなかった。

今回の研究では、男性型脱毛症の40~60歳の男性355人にプロペシアまた
はプラセボ(偽薬)のいずれかを投与し、PSA値の変化を調べた。48週間後、プロペシア服用群では、PSA値が40~49歳で40%、50~60歳では50%減少した。一方、プラセボ群ではPSA値に平均13%の増大がみられたという。

こ の知見から、長期間プロペシアを使用している男性については、Proscarの場合と同じようにPSA値の読み方を調整する必要があるという。測定値を2 倍するという方法もあるが、完全とはいえない。毎年のPSA値に注目し、数値が0.3上昇した場合は、生検を検討する必要があるという。なお、プロペシア によってPSA値が変化する理由については、前立腺に作用するテストステロンが阻害されることによるものだとD'Amico博士は説明している。

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誤解を招きやすい処方薬の服用指示(2006.12.01掲載)

Image 大学教育を受けた人も含めて、多くの人が処方薬の指示内容の解釈に苦労していることが、米国内科学会誌「Annals of Internal Medicine」12月号掲載の研究で明らかになった。研究者は、米国では医薬品の指示書の誤解が原因で、毎年50万件の有害事象が発生していると推定 している。

研究者の米ノースウェスタン大学(シカゴ)フェインバーグ医学部内科助教授のMichael S. Wolf氏らによると、「経口で2錠を1日2回服用」の指示で1日の服用量を正しく理解できたのは、低識字能力層では34.7%のみだった。また、全被験 者の9%が「経口で1錠を毎日1回服用」という指示の解釈に苦労していたという。

Wolf氏は、より多くの人がとまどったのは、「2錠を毎日2回」という指示。これは「1日2錠」と誤解されることが多かった。また、指示に数字が多いほど誤解の危険性も高くなるという。同氏は「ティースプーン1さじを1日2回7日間」などは特に混乱させると述べている。

研 究筆頭著者で米ルイジアナ州立大学健康科学センター内科・小児科教授のTerry C. Davis氏は、米国人は以前にも増して多くの治療薬を服用するようになっており、この問題は重要だと述べている。同氏はまた、問題は診察室から始まって いるという。「ほとんどの医師は、患者に対し処方薬の服用方法を説明しない。医師は、いつ、1日何回、何日間服用するかをもっと正確に伝えられるはずであ る」と述べている。

問題を解決するために、米国内科学財団(AAPF)は、Wolf氏を委員長とする新しい諮問委員会 を組織した。同委員会の使命は、服用量と服用時間を守れるような、優れた方法を見出すこと。Wolf氏は「処方薬の情報提供において、現在のシステムは非 常に脆弱(ぜいじゃく)で、薬局や医師によって指示内容が異なることもある」と指摘、「諮問機関は監督機関を定めて、用量指示を標準化することを勧告する 考えだ」と述べている。

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妊婦の抗うつ薬使用に警告(2006.11.29掲載)

Image 胎児に障害が生じるリスクがあるため、妊婦または妊娠を予定している女性は、抗うつ薬パロキセチン(商品名:パキシル)の使用を避けるべきとの米国産婦人科学会(ACOG)による警告が、同学会誌「Obstetrics & Gynecology」12月号に掲載された。ACOGは、パキシル以外の選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)または選択的ノルエピネフリン再取り込み阻害薬による治療についても、患者個別の配慮が必要と注意を喚起している。

今 回の警告は、2つの研究に基づいたもの。第一の研究では、乳児の心疾患リスクが一般集団では1%であるのに対して、母親が妊娠初期にパキシルを使用した乳 児では約2%であった。もう一方の研究では、妊娠3カ月までに母親がパキシルを使用した場合、乳児の心疾患リスクが1.5%であるのに対して、その他の抗 うつ薬では1%であった。最もよくみられた障害は、心血管系の異常であった。

米国食品医薬品局(FDA)は、2005 年9月に妊娠初期のパキシル使用に関する警告を発しており、同年12月には、パキシルの製造元グラクソ・スミスクライン社に対し、同薬の分類をカテゴリー CからDに変更するよう通達した。カテゴリーDは、妊婦を対象とする研究で胎児へのリスクが示されたことを意味する。パキシルを含めSSRIが新生児の禁 断症状を引き起こすという別の報告もある。

ただしACOGは、妊婦のうつ病治療を中止するリスクも認めている。うつ病 を放置すると、体重低下、アルコールおよび薬物依存、性感染症などのリスクがあり、いずれも母体および胎児の健康に影響をもたらす。妊娠適齢期の女性は大 うつ病の有病率が高く、ACOGの推定によると、10人に1人が妊娠中または産後期に抑うつ症状を経験しているという。

妊 娠する前に検討するのが理想的だが、妊娠の約半数は計画外のもので、妊娠してから治療について決定せざるを得ないことが多い。妊娠初期にパキシルを使用し た女性は、胎児心エコーで心疾患の有無を調べることも検討すべきだという。いずれにせよ胎児の臓器が形成される妊娠初期にそれと知らずに過ごすのは非常に 危険で、うつ病のような健康上の問題を抱える女性は、産婦人科医と相談の上で妊娠を計画することが大切だと専門家は述べている。

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有名ブランドは脳に刻まれる(2006.11.28掲載)

Image マーケター(製品づくりの一切を取り仕切る人)は、神経学的な見方をすると、消費者をとえる手段を心得ているかもしれない。若者を対象にリアルタイム機能 MRI(fMRI)を用いた研究で、馴染みのあるブランドは、知名度の低いブランドに比較して、脳がより素早く、かつより前向きにとらえることが明らかに なり、先ごろシカゴで開催された北米放射線学会(RSNA)で発表された。

ドイツ、Ludwig-Maximilians大学(ミュンヘン)放射線学科のChristine Born博士らの研究チームは、健康で教育レベルの高い男女20人を対象にfMRI検査を実施。知名度が高いか、あまり知られていない自動車メーカーと保 険会社のブランドロゴを見せた結果、2種類のロゴ間で、被験者の脳の活動が著しく異なることが明らかになった。

知名度 の高い自動車メーカーや保険会社のロゴは、脳皮質や肯定的な感情プロセスに影響を及ほす部位、自己認識に関与する部位を活性化させた。Born博士は「強 力なブランドでは、脳のこれらの部位での処理が短時間でできたが、それとは対照的に、弱いブランドでは記憶作動にギアが入り、作動により多くの時間を費や した。これは処理や容認により努力が必要だったことを意味する」と述べている。

米南フロリダ大学医学部 Excellence for Aging and Brain Repairセンター所長のPaul Sanberg氏は「研究結果は興味深いが、消費者の好みや行動について確定的なことを明らかにしているわけではない。ただし脳機能が活性化しているのは 事実であり、それには別の行動的な相互関係が考えられる」と述べている。

今回の研究結果は、心理学者、神経学者、放射 線学者、マーケティング専門家らが、消費者マインドの謎を解くために共同作業している「神経経済学(neuroeconomics)」という新しい分野で の話題を提供している。Born氏は「研究の構想は、人々のニーズをよりよく理解し、それを満足させる市場を構築し、新商品や新サービスに着手する際の間 違いを避けることにある」とし、「ニーズをより真剣に受け止めることで、より高い消費者ニーズや生活の質に貢献できる」と述べている。

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マンモグラフィーに匹敵する新しい乳癌(がん)画像診断法

Image マンモグラフィー(乳房X線撮影)に匹敵する新しい乳癌(がん)画像診断法の中間報告が、シカゴで開催の北米放射線学会(RSNA)年次集会で発表され た。この診断法は、円錐ビーム(コーン状ビーム)乳房CT(CBBCT)スキャンと呼ばれるもので、まだ予備試験段階だが、マンモグラフィーに匹敵または 勝るものと期待されている。

米国癌協会(ACS)によると、米国では200万人以上が乳癌の治療を受けている。現在、乳癌検査にはマンモグラフィーが標準 的に用いられているが、乳房組織の密度が高いと画像に写り込んでしまうという欠点があり、見たい部分の上下に組織の密集した部分があると視界が遮られてし まう。今回のCBBCTスキャナーは、乳房をさまざまな角度から撮影し、これを合わせて1つの3D画像にするというもので、米国立癌研究所(NCI)ほか の資金援助により、米ロチェスター大学(ニューヨーク州)の教授が開発したもの。同大学とのライセンス契約により、Koning Corporation社(ニューヨーク州)が装置の製造、使用および販売を行う。

今回の予備 試験では、マンモグラフィーで異常がなかった20人にCBBCTスキャナー検査をしたほか、身体所見で異常がみられたかマンモグラフィーで疑わしい結果 だった人についても検査した。その結果、マンモグラフィーに匹敵する画像が得られたという。また、このシステムでは乳房を締め付ける必要がなく、快適さの 面でも優れている。検査時は台の上にうつ伏せになり、台の穴の開いた部分から片方ずつ乳房を垂らした状態で、約10秒間に300枚の画像を撮影する。放射 線量はマンモグラフィーと同程度で、マンモグラフィーとは異なり、肋骨周辺や腋下(えきか=脇の下)付近の組織まで鮮明に示すことができるという。

予 備試験は60人に達するまで行い、2007年には大規模試験を行う予定だという。KoningCorporatio社は、FDAの承認が得られ次第このス キャナーの市販を開始する意向だというが、将来的にはこのほかにもさまざまな技術が登場すると考えられている。今回の集会で発表された別の研究では、新し い超音波技術により、乳房の悪性病変と良性病変とを正確に見分けられることがわかった。

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心臓の全組織のもととなる胚性幹細胞を発見(2006.11.22掲載)

Image 「マスター」胚性心臓幹細胞と呼ばれる細胞が、心臓形成において重要な役割を果たしていることが、医学誌「Cell」11月22日号オンライン版掲載の米ハーバード大学(ボストン)の研究で明らかされた。

ヒトの心臓はいくつかの細胞で形成されているが、これらのもととなる「マスター細胞」についてはその存在が不明だった。ハーバード幹細胞研究所のKenneth R. Chien博士らのチームは、マウスの実験系で、3種類ある心臓細胞は発生源が共通しており、心筋細胞、平滑筋細胞、「ペースメーカー」心臓細胞が作り出されていることを明らかにした。

同博士は「分化する細胞の種類を決める単一の細胞を発見。マスター細胞と呼ばれるこの細胞は複製可能で、3種類の異なる細胞に展開する」と述べ、将来的には、損傷を受けた心臓細胞の再生にマスター細胞が利用できる可能性を示唆しているとしている。

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遺伝子のコピー数の個人差は予想以上に大きい(2006.11.22掲載)

Image「コピー数多型(CNV)」と呼ばれる遺伝子コピー数の個人差が予想以上に多く存在することが、東京大学先端科学技術研究センターの油谷浩幸教授らを含め た国際チームによる研究で明らかになり、英科学誌「Nature」11月23日号で発表された。長年、遺伝子は2個で1組であると考えられてきたが、3個 あることや1個しかないことも多く、これまで考えられていたよりも多数の遺伝子にこの多型が認められたという。

研究に参加したカナダ、応用ゲノミクスセンター(TCAG)(トロント)のStephen Scherer氏によると、研究チームは、ヨーロッパ人、アフリカ人、アジア人の計270人のDNAを解析し、第一世代となるヒトゲノムのコピー数多型地 図(マップ)を作成。ヒトゲノムの12%を占める1,447カ所で、遺伝子が1個または3個以上存在するコピー数多型があることを突き止めた。コピー数多 型の存在は2年ほど前から多数知られていたが、これは予想を超える数だという。この地図は、コピー数多型が生じやすい遺伝子を特定するのにも役立つ。

コ ピー数多型は、遺伝子の発現および表現型に影響を及ぼし、疾患の原因となる可能性もある。遺伝子疾患でのDNA変異を特定する従来の方法では見落とされる こともあり、直接解析するほかないため、研究者はこの知見に基づいて、疾患に関与する遺伝子を再度見直す必要があるとScherer氏は述べている。

科 学誌「Nature Genetics」12月号に掲載された関連研究では、政府によるヒトゲノムプロジェクトと、民間企業である米Celera Genomics(セレラゲノミックス)社によるゲノム地図を比較することで、多数のコピー数多型が新たに特定できるはずだとScherer氏らは指摘し ている。両団体とも独立してヒトゲノム地図を作成しており、互いを比較して不一致を探す方法は、精度が高く費用効果が見込めるとScherer氏はいう。

英 オックスフォード大学生物情報科学教授のChris P. Ponting氏は、ヒトの遺伝子にみられる差異が、1文字単位の変化よりも大きな単位の変化によるところが大きいことを示した今回の知見から、このよう な大きな変異をさまざまな疾患と結びつけることができ、遺伝子による疾患を理解する上で重要だと述べている。

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長距離ランナーは皮膚癌(がん)リスクが高い(2006.11.21掲載)

Image メラノーマ(黒色腫)などの皮膚癌(がん)リスクが、長距離ランナーで高いことが、ヨーロッパの研究で明らかにされた。メラノーマは致死率が高く、侵襲性 の高い癌の一種。これまでの研究では、マラソンなどの高レベルの紫外線に曝露される屋外運動が皮膚癌リスクを上昇させることは明らかにされているが、屋外 運動だけではなく、持久運動そのものが免疫システムを抑制するという。

オーストリア、グラーツ(Graz)医科大学の研究―チームは、地域の19~71歳の長距離ランナー210人(男性166人) を選び、皮膚癌検査のキャンペーンに参加した210人を対照として比較した。被験者は皮膚癌検査を受け、本人や家族の皮膚癌病歴、日光過敏性、日光への曝 露などの質問事項に答えた。長距離ランナーはトレーニング内容についても回答した。

その結果、対照群はマラソン群に比 べ太陽光により敏感だったが、長距離走者では悪性メラノーマに転じる可能性のある異形成性の母斑などがより多かった。またトレーニングが厳しい人ほど目 立った異常が多く発生していた。今回の研究を通じて、24人の長距離ランナーと14人の一般人が、非メラノーマ性皮膚癌の可能性があり、皮膚科医を紹介さ れた。

米City of Hope 癌センター(カリフォルニア州)外科腫瘍学助教授のVijay Trisal博士は、長時間太陽光の下で過ごす人はメラノーマのリスクが高いと指摘。ランナーやその他の屋外運動をする人は、真昼には屋外に出ないように し、幅広の帽子や日焼け止めを塗るなどの一般的な常識に従うべきだと述べている。

研究著者のグラーツ医科大学皮膚科医 のChristina M. Amgros-Rudolph博士は「楽しく、気分を良くする活動はある程度までは健康的だが、持久運動、特にマラソンやウルトラマラソンが、体全体を緊 急的な状態にすることはすでに確認された事実であり、太陽光がピークになる時間帯(午前11時~午後3時)のトレーニングは避けて、肩や背中を覆うウェア を着ることが望ましい」と述べている。

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