1HDN9月20日「パッケージニュース」No.2

高齢者の転倒予防に「太極拳」が有効?

高齢者の転倒予防には、筋力トレーニングやエアロビクスよりも太極拳の方が優れている可能性があることが、約600人の高齢者を対象に行ったランダム化比較試験で明らかになった。詳細は「JAMA Internal Medicine」9月10日オンライン版に掲載された。

米国では、年間に高齢者の約28%が転倒を経験し、5件のうち2件は救急受診や入院を要し、最悪の場合には死亡に至るとされる。また、65歳以上で転倒すると自立した生活が送れなくなったり、早期死亡や医療費の増大と有意に関連することが知られている。

太極拳は古代から伝わる中国武術の一種で、一定のリズムでバランスを取りながら一連のポーズを流れるように行う。論文著者の一人で米ウィラメット大学運動・健康科学科教授のPeter Harmer氏によると、太極拳による転倒リスクの低減効果については長年、検討されてきたという。

しかし、伝統的な太極拳には100種類以上の動きがあり、一般人が覚えるのは難しい。そこで、研究チームは転倒予防に関連した8種類の基本的な動きに絞った簡略版を開発。米オレゴン州に在住し、転倒の既往があるなど転倒リスクが高い70歳以上の高齢者670人(平均年齢77.7歳、女性65%)を対象に、太極拳プログラムを行う群または筋力トレーニングとエアロビクスを組み合わせた従来の運動プログラムを行う群、ストレッチのみを行う対照群の3つの群にランダムに割り付けて比較検討した。それぞれ60分の運動クラスを週に2回、24週間続けてもらった。

その結果、6カ月後の転倒の発生率は、ストレッチのみを行う対照群に比べて、太極拳を行った群では58%低かったのに対し、従来の運動プログラムを行った群では40%低いことが分かった。また、太極拳を行った群では、従来の運動プログラムを行った群に比べて転倒の発生率は31%低いことも明らかになった。

従来の運動プログラムは前後方向の動きが中心なのに対し、太極拳ではあらゆる方向への動きが求められる。論文の共著者で米オレゴン健康科学大学看護学部教授のKerri Winters-Stone氏は「転倒の起こり方はさまざまで予測できない。太極拳では体を重心の外側へ移動させ、また引き戻す動きを行う。そのため、太極拳を経験している人は転びそうになると、その動きに逆らって素早くバランスを取り戻せるのではないか」と説明している。

今回の結果からは、高齢者の転倒予防には太極拳が優れていることが示された。しかし、理学療法やリハビリテーションを専門とする米メイヨー・クリニックのNathan LeBrasseur氏は「転倒を予防するには従来の運動でも十分に有効であるため、筋肉トレーニングやエアロビクスを行っている人はぜひ続けてほしい」と話している。

Harmer氏によると、転倒した経験のある人は、再び転ぶことを恐れて体を動かさなくなることも転倒のリスク因子であることが分かっているという。「今回行った太極拳プログラムは、こうした負のサイクルを断ち切るのに適している」と同氏は話している。LeBrasseur氏もこの考えに同意し、「高齢者は自分の健康のためには種類は問わず、もっと運動をすべきだ」と述べている。(HealthDay News 2018年9月10日)

https://consumer.healthday.com/alternative-medicine-information-3/exercise-t-ai-chi-or-oriental-283/an-ancient-art-may-work-best-to-prevent-falls-in-old-age-737581.html

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4HDN国内ニュース9月10日配信1

血糖変動は急性冠症候群患者の予後予測に有用か 日本人のPCI施行患者を解析、横浜市立大

持続血糖モニタリング(CGM)で測定した血糖変動は、重症の糖尿病を合併しない急性冠症候群(ACS)患者の予後予測に有用な可能性のあることが、横浜市立大学附属市民総合医療センター心臓血管センター講師の岩橋徳明氏らの研究グループの検討で分かった。詳細は「Cardiovascular Diabetology」8月18日オンライン版に掲載された。

高血糖や低血糖などの糖代謝異常は、冠動脈疾患のリスク因子であることが知られている。これまでの研究で、CGMで測定した血糖変動はACS患者の死亡や冠動脈プラークの進展を予測する因子であることが報告されている。岩橋氏らの研究グループは今回、日本人のACS患者を対象に、CGMで評価した血糖変動が予後に及ぼす影響を調べる観察研究を実施した。

対象は、2012年4月~2016年11月に同センターで経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施行したACS患者417人(平均年齢66歳、男性83%)。対象患者には入院中に病状が安定した後にCGMを24時間以上装着し、平均血糖変動幅(MAGE)などの血糖変動指標を算出した。対象患者をMAGEの第2三分位の値(50mg/dL)以上を高値群(149人)、50mg/dL未満を低値群(268人)に分けて中央値で39カ月間追跡した。

その結果、対象患者の16%(66人)に主要有害脳心血管イベント(MACCE)の発生が認められた。その内訳は心血管疾患死5件、ACSの再発14件、再血行再建術を要する狭心症27件、心不全8件、脳卒中16件であった。また、MACCEの発生率は、MAGE高値群で低値群に比べて有意に高かった(23.5%対11.6%、P=0.002)。さらに、多変量解析の結果、MAGE高値群であることはMACCE発生の独立した予測因子であることが明らかになった。

以上の結果を踏まえ、岩橋氏らは「重症糖尿病を合併しないACS患者では、CGMで評価した血糖変動が大きいことは予後不良の予測因子である可能性が示された。ACS患者における血糖変動の臨床上の有用性については、今後さらに検討する必要がある」と結論づけている。(HealthDay News 2018年9月10日)

Abstract/Full Text
https://cardiab.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12933-018-0761-5

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4HDN国内ニュース9月3日配信1

高齢糖尿病患者のサルコペニア、「低BMI」「高体脂肪率」でリスク増 秋田大の研究グループ

日本人の高齢糖尿病患者は、肥満度(BMI)が低過ぎたり、体脂肪率が高過ぎたりすると、加齢に伴って骨格筋量と骨格筋力が低下するサルコペニアになりやすい可能性のあることが、秋田大学大学院内分泌・代謝・老年内科学の福岡勇樹氏らの研究グループの検討で分かった。詳細は「Journal of Diabetes Investigation」8月11日オンライン版に掲載された。

糖尿病患者は、健康な人に比べてサルコペニアになるリスクが約3倍に上ることが報告されている。特に高齢の患者では、日常生活動作(ADL)を保持するためにはサルコペニアの適切な管理が重要になるが、高齢患者を対象にサルコペニアについて検討した研究は限られていた。そこで、福岡氏らの研究グループは今回、日本人の高齢糖尿病患者を対象に、サルコペニアの有病率と関連する因子のほか、サルコペニアの指標となりうる身体評価項目について検討する横断研究を実施した。

対象は、2015年2月~7月に同大学病院の糖尿病・内分泌内科/老年内科を外来受診した65歳を超える糖尿病患者267人(平均年齢73.7歳、女性40.4%)。サルコペニアは、握力と歩行速度、四肢の骨格筋量指標を用いて、アジアのワーキンググループ(AWGS)による診断基準で評価した。また、生体インピーダンス法にて身体組成を測定し、BMIや四肢骨格筋量、体脂肪率を算出した。

その結果、対象患者におけるサルコペニアの有病率は18.7%(267人中50人)であり、加齢に伴い有意に上昇していた。BMIを四分位に分けてサルコペニアの有病率を比較したところ、男女ともにBMIが低いグループほど有病率は有意に高かった。一方で、体脂肪率を四分位に分けて比較したところ、男女ともに体脂肪率が2番目に高いグループ(男性では25.3~30.2%、女性では33.1~38.7%)でサルコペニアの有病率は最も低く、体脂肪率が最も高いグループでは有病率は上昇していた。また、BMIと骨格筋量指数との間には有意な正の関連が認められた。

交絡因子を調整した多重ロジスティック回帰分析の結果、男性ではBMI低値とメトホルミンを使用していないこと、骨ミネラル量の低下が、女性では骨ミネラル量の低下と血清アルブミン値の低下、加齢がそれぞれサルコペニアの有病率と有意に関連することも明らかになった。

以上の結果を踏まえて、福岡氏らは「65歳を超える日本人の糖尿病患者は、BMIが低過ぎたり、体脂肪率が高過ぎたりするとサルコペニアになるリスクが高まる可能性がある。そのため、高齢の糖尿病患者のサルコペニアを予防するためには、BMIだけでなく、骨格筋量指数と体脂肪率のバランスの評価を含めた身体管理が重要になるだろう」と結論づけている。(HealthDay News 2018年9月3日)

Abstract/Full Text
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jdi.12908

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1HDN8月6日「パッケージニュース」No.3

中年期の立ちくらみは認知症のサイン?

立ちくらみは「起立性低血圧」とも呼ばれ、高齢者では珍しくない症状だが、中年期の人でみられたら注意した方が良いかもしれない。米ジョンズ・ホプキンス大学神経学教授のRebecca Gottesman氏らの研究から、中年期に起立性低血圧があった人では、そうでない人と比べて25年以内に認知症を発症するリスクが約1.5倍であることが分かった。この研究結果は「Neurology」7月25日オンライン版に発表された。

立ちくらみなどの起立性低血圧の症状は、立ち上がったり、起き上がったりしたときに、急に血圧が下がることで引き起こされる。特に高齢者で多くみられ、70歳以上では有病率は約30%に上ることが報告されている。

Gottesman氏らは今回、前向きコホート研究であるAtherosclerosis Risk in Communities Study(ARIC)研究のデータを用いて、起立性低血圧と認知症および認知機能の低下との関連について検討した。対象は、1987~1989年の研究開始時に40歳代または50歳代だった冠動脈疾患や脳卒中の既往歴がない男女1万1,709人で、2011~2013年まで追跡した。対象者は研究開始時に臥位および立位で血圧を測定し、起立性低血圧の有無を評価した。なお、起立性低血圧は立ち上がった後に収縮期血圧値が20mmHg以上低下または拡張期血圧値が10 mmHg以上低下した場合と定義した。

その結果、対象者の約5%に起立性低血圧が認められた。解析の結果、追跡開始から25年以内の認知症の発症率は、起立性低血圧がなかった人では9%だったのに対して、起立性低血圧がみられた人では12.5%と、認知症リスクは1.54倍に上昇していた。起立性低血圧がみられた人は、そうでない人と比べて年齢が高く、高血圧や糖尿病の有病率が高かったが、これらの要因で調整後も起立性低血圧と認知症との関連が認められたという。

Gottesman氏は「中年期に起立性低血圧があると、その後の認知症リスクが高まる理由は明らかではない」とした上で、「高血圧や糖尿病があると認知症リスクが高まることが知られているが、この理由は、これらの疾患で脳への血流が障害されるためではないかと考えられている。そのため、起立性低血圧でも脳への血流が一時的に低下することで認知症リスクが高まる可能性がある」と説明している。また、「比較的若い人で起立性低血圧が起こるのには、全般的な健康状態が悪く、降圧薬などを使う頻度が高いことが背景にある可能性も考えられる」と付け加えている。

この研究報告を受け、米アルツハイマー病センター所長のAnil Nair氏は「心血管の健康状態が認知症リスクに影響するという新たなエビデンスが加わった」と話している。また、今回の対象者の3分の2には高血圧があり、降圧薬を使用していた人が多かったことを指摘し、「降圧薬は起立性低血圧の原因となり得るため、服用中の人は立ちくらみなどの起立性低血圧が疑われる症状を経験したら、早めに医師に相談してほしい」とアドバイスしている。(HealthDay News 2018年7月25日)

https://consumer.healthday.com/diseases-and-conditions-information-37/dizziness-and-vertigo-news-205/get-dizzy-upon-standing-it-could-be-sign-of-dementia-risk-736136.html

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1HDN8月2日「パッケージニュース」No.2

女性の妊娠歴や出産歴が認知症リスクと関連か

出産回数が多い女性や妊娠可能な期間が長い女性、生涯で妊娠した期間が長い女性は、認知症を発症するリスクが低い可能性のあることが、米国で実施された新たな2件の研究で示された。いずれの研究も、詳細はアルツハイマー病協会国際会議(AAIC、7月22~26日、米シカゴ)で報告された。

同協会によると、米国では認知症患者のほぼ3分の2を女性が占めるという。その理由として、女性の方が男性よりも寿命が長いことが指摘されているが、今回発表された一方の研究を実施した米カイザーパーマネンテ北カリフォルニアのPaola Gilsanz氏は「理由はそれだけでないことが分かってきた」と指摘している。

まず、Gilsanz氏らの研究では、1964~1973年に40~55歳であった女性1万4,595人の医療記録を用いて、出産歴と認知症の発症リスクとの関連について調べた。その結果、子どもが3人以上いる女性は、子どもが1人の女性に比べて認知症リスクが12%低いことが分かった。

また、妊娠可能な期間の長さも認知症リスクと関連する可能性が示された。認知症リスクは妊娠可能な期間が38~44年だった女性に比べて、その期間が21~30年とより短かった女性で33%高かった。さらに、認知症リスクは初潮を13歳で迎えた女性に比べて、16歳以上で迎えた女性では31%高く、45歳以降も月経があった女性に比べて、45歳以下で自然閉経した女性では28%高いことも分かった。

Gilsanz氏は「女性の生殖能力が認知症リスクと関連する理由は不明だが、これまでの基礎研究で女性ホルモン(エストロゲン)は認知症に予防的に働く可能性のあることが示唆されている」と説明している。

さらに、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)人類学・精神行動科学部のMolly Fox氏らが実施したもう一方の研究では、英国の高齢女性133人を対象に、妊娠歴とアルツハイマー病の発症リスクとの関連を調べた。その結果、生涯のうち妊娠していた期間が長いほどアルツハイマー病リスクは低いことが分かった。妊娠していた期間が1カ月延びるごとに、アルツハイマー病リスクは5.5%低下していたという。同氏らは「妊娠が女性の免疫系に有益な作用をもたらし、その後の脳の健康にも何らかのよい影響をもたらした可能性が考えられる」と話している。

専門家の一人でアルツハイマー病協会のKeith Fargo氏は「認知症は高齢になってから心配すればよいと考えられてきたが、最近では中年期の血圧や2型糖尿病の既往など、若いころの因子による影響が注目を集めている」と指摘する。今回の2つの研究から、女性の免疫系、妊娠中や生涯の栄養状態、女性ホルモンの血中濃度などさまざまな因子が認知症リスクに影響している可能性が考えられるが、これらの関連は現時点では推測に過ぎず、さらなる研究が必要であることを付け加えている。(HealthDay News 2018年7月23日)

https://consumer.healthday.com/cognitive-health-information-26/alzheimer-s-news-20/having-more-kids-tied-to-lower-odds-of-alzheimer-s-in-women-736014.html

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1HDN7月17日「パッケージニュース」No.1

米国人が補聴器を使わない理由

米国では、耳が聞こえづらくなっても、高価だからという理由で補聴器を使わない人が多いことが、新たな研究で明らかになった。補聴器を装着するのを恥ずかしいと感じる人も多かったという。「The Gerontologist」5月21日オンライン版に掲載された論文の筆頭著者で米ミシガン大学家庭医学のMichael McKee氏は「理由が何であれ、聴力の低下(難聴)をそのまま放置すると心理面や身体面、認知機能に大きな影響を及ぼし、失業にもつながりやすい」とその影響力の大きさを指摘している。

McKee氏らは今回、米国の健康と退職に関する調査(Health and Retirement Study;HRS)に参加した聴力の低下がみられる55歳以上の男女3万5,572人を対象に、補聴器の使用実態を調べた。このうち21人では対面調査を実施して詳しく話を聞いた。

その結果、全ての対象者のうち、補聴器を使用している人は約3分の1にとどまっていた。80歳代では57%が補聴器を使用していたが、50歳代後半では15%に過ぎなかった。また、補聴器を使わない理由には、「費用が高い」「保険が適用されない」「見栄や恥ずかしさ」といった回答のほかにも、「かかりつけ医の関心が薄い」「信頼できる聴覚訓練士がいない」などが挙げられた。

補聴器の使用率には人種差もみられ、白人(40%)に比べて黒人(18%)やヒスパニック系(21%)で低かった。また、大学教育を受けた人では45%以上が補聴器を使用していたが、高校を卒業していない人では29%に満たなかった。さらに、所得が最も低い層では、最も高い層に比べて補聴器の使用率は4分の1程度と低かった。一方で、退役軍人では補聴器を購入する際に補助が出る場合が多いことが影響したのか、55~64歳における補聴器の使用率は退役軍人でない人の2倍に上っていた。

米国では、補聴器の自己負担額は2,000~7,000ドル(約23万~79万円)であり、メディケア(65歳以上の人や身体障害者などを対象とする公的医療保険制度)を始めとするほとんどの医療保険は適用されていない。なお、米国では、聴力の低下がみられる人の割合は50歳代では30%ほどだが、60歳代では45%、70歳代では70%、80歳代では90%と加齢に伴って上昇するとされている。

米国聴覚学会(AAA)会長のJackie Clark氏は、専門家の立場から「補聴器の使用を阻む障壁は、費用だけではない」と指摘。その理由は複雑で、米国社会の文化的背景も影響しているのではとの見方を示す。また、同氏によれば、聴覚の研究は第二次世界大戦後、多くの退役軍人が爆弾の影響で聴力障害を負って帰還したのが始まりで、その歴史は比較的浅いという。同氏は「補聴器が広く受け入れられるためには保険で費用をカバーするほかに、補聴器の有用性について広く理解してもらうことが重要だ」と強調し、有名人が装着する姿を見せることも、補聴器は格好悪いものではないことをアピールする一つの手段になるのではないかと話している。(HealthDay News 2018年7月5日)

https://consumer.healthday.com/health-technology-information-18/hearing-aid-news-350/cost-keeps-many-americans-from-getting-hearing-aids-735320.html

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1HDN7月17日「パッケージニュース」No.4

アルツハイマー病の進行抑制にアスピリンが有効か

アスピリンを服用するとアルツハイマー病の進行を抑制できる可能性のあることが、米ラッシュ医科大学神経学のKalipada Pahan氏らのマウスを用いた実験で示唆された。アルツハイマー病には脳内のアミロイドβ(Aβ)と呼ばれるタンパク質の蓄積が関与していると考えられているが、低用量アスピリンは脳内に蓄積したAβの除去に役立つ可能性があることが示されたという。研究の詳細は「The Journal of Neuroscience」7月2日オンライン版に掲載された。

アルツハイマー病の原因はいまだ解明されていないが、毒性があるAβが脳内に蓄積してアミロイドプラークを形成することがその一因と考えられている。そのため、アルツハイマー病の進行を遅らせるための手段として、脳内のAβ除去を担う細胞機構を活性化させる方法が注目されている。

Pahan氏らはまず、マウスの脳細胞を用いた実験で、アスピリンはPPAR(ペルオキシソーム増殖剤活性化レセプター)αと呼ばれる遺伝子発現の調節因子を活性化することで、脳内のAβ除去に重要な調整役(マスターレギュレーター)を担う転写因子EB(TFEB)の発現量を増やし、Aβ除去に関わるリソソームの合成を高めることを突き止めた。

さらに、アルツハイマー病のモデルマウスに低用量アスピリンを1カ月にわたり経口投与して調べた結果、アスピリンはPPARαを介した作用によりアミロイドプラークの除去に働くことが分かったという。

以上の結果を踏まえ、Pahan氏は「世界で最も汎用されている一般用医薬品の一つであるアスピリンには、鎮痛や心血管疾患予防以外にもアルツハイマー病などの認知症に関連した疾患への新たな治療効果が期待できる可能性が示された」と結論づけている。

動物実験の結果は必ずしもヒトで応用できるわけではなく、Pahan氏もアスピリンの認知症への治療効果についてはさらなる研究が必要であることを強調している。しかし、同氏は「今回の研究によってアミロイドプラークが除去される機序の解明を進めることができた。このことは、アルツハイマー病の進行を抑制する薬剤を開発する上で重要だ」と話している。

米国では65歳以上の男女の10人中1人がアルツハイマー病患者だとする推定もある。アルツハイマー病の治療薬として米食品医薬品局(FDA)に承認されている薬剤は数種類しかなく、これらの薬剤の効果も限定的なのが現状である。(HealthDay News 2018年7月5日)

https://consumer.healthday.com/cognitive-health-information-26/alzheimer-s-news-20/could-aspirin-help-keep-alzheimer-s-away-735510.html

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Selective focus on the word "diabetes". Many more word photos in my portfolio...

糖尿病とがん、歯周病、認知症との関連は? 日本人対象の研究をシステマティックレビュー

糖尿病の合併症には、三大合併症(網膜症と腎症、神経障害)が広く知られているが、最近ではがんや歯周病、骨折、認知症、うつ病などが新たな合併症として注目されている。国立国際医療研究センター病院糖尿病情報センター長の大杉満氏と田中宏和氏、井花庸子氏らの研究グループは、日本人を対象に、これらの新たな糖尿病合併症の発症率や有病率を調べた研究のシステマティックレビューを実施。がんと糖尿病との関連を示す強いエビデンスはあるが、その他の疾患については糖尿病の影響は十分に検証されていないことを明らかにした。詳細は「Journal of Epidemiology」6月23日オンライン版に掲載された。

研究グループは今回、日本人の集団を対象に、がんや歯周病、骨折、認知機能障害および認知症、うつ病と糖尿病との関連を検討した研究のシステマティックレビューを実施。PubMedなどのデータベースを用いて、2016年12月までに公表された、これらの新たな糖尿病合併症の発症率と有病率をそれぞれ比較した統合解析やコホート研究、症例対照研究、横断研究の計33件の論文を抽出した。このうち、がんに関する論文は17件、歯周病または骨折はそれぞれ5件、認知機能障害は4件、うつ病は2件であった。

システマティックレビューの結果、がんに関しては多目的コホート(JPHC)研究など質の高い研究を含めて8件のコホート研究のデータを統合して解析が実施されており、糖尿病は全てのがんや大腸がん、肝臓がん、膵臓がん、胆管がんのリスク上昇と関連し、その他のメタ解析でも男女ともに糖尿病は全てのがんのリスク上昇と関連することが報告されていた。

一方で、その他の4つの疾患に関しては、研究の数が限られており、前向きコホート研究はうつ病では1件もなく、その他の疾患でも1件ずつしかみられないなど、糖尿病との関連を検証するのに十分なエビデンスは得られなかった。

以上の結果から、研究グループは「日本では、がんと糖尿病との関連を示す比較的、質の高いエビデンスがそろっているが、歯周病や骨折、認知症、うつ病の発症率や有病率に対する糖尿病の影響は十分に検証されていないことが分かった。今後、質の高い数多くの研究が実施されることに期待したい」と結論づけている。(HealthDay News 2018年7月17日)

Abstract/Full Text
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jea/advpub/0/advpub_JE20170155/_article

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1HDN7月9日「パッケージニュース」No.3

白内障手術で高齢ドライバーの交通事故が減少か

50万人以上のカナダの高齢者を対象とした研究から、白内障の高齢ドライバーが手術を受けると交通事故のリスクが9%低下することが分かった。リスクの低下度はわずかではあるが、研究を実施したケンジントン・アイ・インスティテュート (カナダ)のMatthew Schlenker氏らは「白内障手術による視機能の改善は、自動車運転に伴う交通事故のリスク低下と関連することが示された」と説明している。この研究結果は「JAMA Ophthalmology」6月28日オンライン版に発表された。

Schlenker氏らによれば、米国人の60~70%が生涯で白内障を発症する。唯一の治療法は手術で、米国では年間300万件以上の白内障手術が実施されているという。

Schlenker氏らは今回、白内障手術と高齢ドライバーの交通事故の発生率との関連について検討するため、2006~2016年に白内障手術を受けたオンタリオ州における65歳以上の住民55万9,546人(平均年齢76歳、女性58%)の医療データと運転記録を調べた。1人当たりの観察期間は5年間とし、白内障手術を受ける直前の6カ月間よりも以前の期間をベースライン期間、手術を受けた後を術後期間と定義した。なお、ベースライン期間は平均で約3.5年だった。

その結果、患者1,000人年当たりの交通事故の発生率はベースライン期間の2.36件から術後1年間には2.14件に減少し、白内障手術の実施後には交通事故リスクが0.9%低下したことが分かった。また、75歳超の高齢者に限るとリスクの低下度は14%とより大きかった。さらに、年間に1件の交通事故を回避するのに必要な白内障手術は4,564件であることが推定されたという。

ただし、こうした白内障手術による交通事故の低減効果は、高齢者が自動車を運転している場合に限られ、同乗者や歩行者だった場合には認められなかった。

この研究は因果関係を証明したものではないが、専門家らは「納得できる結果だ」と評価している。その一人で米ノースウェル・ヘルスの眼科医であるMatthew Gorski氏は、白内障では視界がかすむ、光を眩しく感じる、薄暗く見える、夜間に物が見えにくくなるといった症状が高頻度にみられることから、これらの症状は高齢ドライバーの安全性に大きく影響するのではとの見方を示している。

その上で、Gorski氏は「高齢者はこの研究結果から、視力になんらかの変化があれば眼科医の検査を受ける必要があることを再認識するはずだ。また、この結果は、40歳を超えたら年1回の眼科検診を受けることの重要性を改めて示している」と話している。別の専門家で米レノックス・ヒル病院のMark Fromer氏は「この研究は、高齢者が白内障手術を受けて視力が改善すると、交通事故が減るだけでなく社会経済的な負担の軽減にもつながる可能性を示している」とコメントしている。(HealthDay News 2018年6月28日)

https://consumer.healthday.com/eye-care-information-13/cataracts-health-news-116/cataract-surgery-tied-to-fewer-car-crashes-for-seniors-735287.html

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4.1.1

高齢者のメタボに残存歯の本数と食べる速さが関連か 愛知学院大の研究グループ

日本人の高齢者では、残存歯の本数と食べる速さ、歯間ブラシやデンタルフロスなどの歯間清掃用具を使う頻度がメタボリック症候群と関連する可能性のあることが、愛知学院大学歯学部口腔衛生学教授の嶋﨑義浩氏らの研究グループの検討で分かった。同氏らは「高齢になっても歯の本数を保ち、ゆっくりと食べることがメタボリック症候群の予防に重要だと思われる」と話している。詳細は「Journal of Epidemiology」6月16日オンライン版に掲載された。

これまで多くの研究で、歯周病や残存歯の本数などで評価する口腔内の健康状態はメタボリック症候群と関連することが報告されている。これらの報告の多くは中年期の成人を対象としたものが多いことから、研究グループは今回、高齢者を対象に、歯周病や残存歯の本数、生活習慣因子(喫煙や飲酒の習慣、運動習慣、食べる速さ、口腔衛生習慣)とメタボリック症候群との関連を調べる観察研究を実施した。

研究グループは、三重県における75歳および80歳の高齢者2,379人(うち男性960 人)から得た一般健診と歯科健診の横断データを用いて解析した。健診時のウエスト周囲長のデータが得られなかったため、メタボリック症候群の判定にはBMIを代用し、中心性肥満(BMI 25以上)、中性脂肪高値、HDL-コレステロール低値、血圧高値、高血糖のうち3つ以上に該当する場合をメタボリック症候群と判定した。

対象者を残存歯の本数で3つの群(20~28本、10~19本、0~9本)に分けて解析した結果、メタボリック症候群のリスクは残存歯が最も多い群に比べて、10~19本の群では1.23倍、0~9本の群では1.54倍と、残存歯の本数が少ない群ほどリスクは高いことが分かった。

また、生活習慣因子のうち、食べる速さが速いほどメタボリック症候群のリスクが高く(遅い群に比べて速い群で2.06倍)、歯間ブラシなどの歯間清掃用具を毎日使う人は、全く使わない人に比べてメタボリック症候群のリスクが0.71倍と低いことも明らかになった。

さらに、残存歯の本数と食べる速さを組み合わせた解析を行った結果、残存歯が20~28本でゆっくり食べる群に比べて、残存歯が0~9本で食べる速さが速い群ではメタボリック症候群のリスクが2.48倍と最も高かった。なお、この研究では歯周病とメタボリック症候群との間に関連はみられなかった。

これらの結果から、研究グループは「高齢者では、残存歯の本数と食べる速さ、歯間衛生用具を使う頻度がメタボリック症候群と関連する可能性が示された。特に残存歯が少なく食べる速さが速い人はメタボリック症候群に注意する必要がある」と結論。一方で、これらの関連については、今後さらなる研究でその背景にある機序などを確かめる必要があるとしている。(HealthDay News 2018年7月9日)

Abstract/Full Text
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jea/advpub/0/advpub_JE20170210/_article/-char/en

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