抗VEGF抗体医薬品であるアフリベルセプトが、非増殖糖尿病網膜症からの病期進行リスクを抑制する可能性が示された。一方、視力に関してはプラセボと有意差が認められなかった。この研究は、米インディアナ大学中西部眼科研究所Raj K. Maturi氏らによって行われ、詳細は「JAMA Ophthalmology」に3月30日掲載された。. 網膜に虚血が生じ増殖変化が起き始めた糖尿病網膜症や、黄斑浮腫による視力低下に対し、血管内皮増殖因子(VEGF)に対する抗体医薬品が頻用されるようになってきた。しかし、増殖変化を来していない非増殖糖尿病網膜症や黄斑浮腫のない段階での抗VEGF薬の有用性は確立されておらず、Maturi氏らの研究はこの点を明らかにする目的で行われた。. 研究の対象は、米国とカナダの64カ所の医療機関を受診している患者で、中心窩を含む糖尿病黄斑浮腫(CI-DME)のない、中等症から重症(ETDRSスコア43~53)の非増殖糖尿病網膜症の成人328人(平均年齢56±11歳、男性57.6%)。. 対象眼は399眼で、アフリベルセプト群(200眼)、プラセボ群(199眼)に無作為に割付け、1カ月、2カ月、4カ月と、それ以降は4カ月ごとに、アフリベルセプトまたはプラセボを投与した。評価項目は、増殖糖尿病網膜症(PDR)やCI-DMEの発症、および視力の変化など。介入期間は最大4年で、本報告は2年経過した時点の解析結果である。. 2年間でのPDRまたは視力低下を伴うCI-DMEの累積発症率は、アフリベルセプト群16.3%、プラセボ群43.5%であり、アフリベルセプト群で有意なリスク低下が認められた〔ハザード比0.32(97.5%信頼区間0.21~0.50)、P<0.001〕。また、PDRの累積発症率は、アフリベルセプト群13.5%、プラセボ群33.2%であり、視力低下を伴うCI-DMEの累積発症率は同順に4.1%、14.8%だった。. 一方、視力の変化は、アフリベルセプト群-0.9±5.8文字、プラセボ群-2.0±6.1文字であり、調整平均の差は0.5文字(97.5%信頼区間-1.0~1.9、P=0.47)であり、群間差は有意でなかった。. Maturi氏は、「抗VEGF薬の予防的投与は、病期の進行抑制に役立つ可能性がある。ただし、2年間では視力への影響は明らかでない」とまとめている。本研究は前述のとおり現在も継続中で、4年後の視力変化が注目される。この結果に関連し、「病期進行の早い患者を特定する診断技術の開発が求められる」との指摘が眼科専門医から上がっている。. なお、一部の著者が、アフリベルセプトの開発企業であるRegeneron社を含む製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2021年3月31日).Abstract/Full Text.Editorial 1 (subscription or payment may be required).Editorial 2 (subscription or payment may be required).Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.
抗VEGF抗体医薬品であるアフリベルセプトが、非増殖糖尿病網膜症からの病期進行リスクを抑制する可能性が示された。一方、視力に関してはプラセボと有意差が認められなかった。この研究は、米インディアナ大学中西部眼科研究所Raj K. Maturi氏らによって行われ、詳細は「JAMA Ophthalmology」に3月30日掲載された。. 網膜に虚血が生じ増殖変化が起き始めた糖尿病網膜症や、黄斑浮腫による視力低下に対し、血管内皮増殖因子(VEGF)に対する抗体医薬品が頻用されるようになってきた。しかし、増殖変化を来していない非増殖糖尿病網膜症や黄斑浮腫のない段階での抗VEGF薬の有用性は確立されておらず、Maturi氏らの研究はこの点を明らかにする目的で行われた。. 研究の対象は、米国とカナダの64カ所の医療機関を受診している患者で、中心窩を含む糖尿病黄斑浮腫(CI-DME)のない、中等症から重症(ETDRSスコア43~53)の非増殖糖尿病網膜症の成人328人(平均年齢56±11歳、男性57.6%)。. 対象眼は399眼で、アフリベルセプト群(200眼)、プラセボ群(199眼)に無作為に割付け、1カ月、2カ月、4カ月と、それ以降は4カ月ごとに、アフリベルセプトまたはプラセボを投与した。評価項目は、増殖糖尿病網膜症(PDR)やCI-DMEの発症、および視力の変化など。介入期間は最大4年で、本報告は2年経過した時点の解析結果である。. 2年間でのPDRまたは視力低下を伴うCI-DMEの累積発症率は、アフリベルセプト群16.3%、プラセボ群43.5%であり、アフリベルセプト群で有意なリスク低下が認められた〔ハザード比0.32(97.5%信頼区間0.21~0.50)、P<0.001〕。また、PDRの累積発症率は、アフリベルセプト群13.5%、プラセボ群33.2%であり、視力低下を伴うCI-DMEの累積発症率は同順に4.1%、14.8%だった。. 一方、視力の変化は、アフリベルセプト群-0.9±5.8文字、プラセボ群-2.0±6.1文字であり、調整平均の差は0.5文字(97.5%信頼区間-1.0~1.9、P=0.47)であり、群間差は有意でなかった。. Maturi氏は、「抗VEGF薬の予防的投与は、病期の進行抑制に役立つ可能性がある。ただし、2年間では視力への影響は明らかでない」とまとめている。本研究は前述のとおり現在も継続中で、4年後の視力変化が注目される。この結果に関連し、「病期進行の早い患者を特定する診断技術の開発が求められる」との指摘が眼科専門医から上がっている。. なお、一部の著者が、アフリベルセプトの開発企業であるRegeneron社を含む製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2021年3月31日).Abstract/Full Text.Editorial 1 (subscription or payment may be required).Editorial 2 (subscription or payment may be required).Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.