花粉はアレルギー持ちの人を苦しめるだけでなく、新型コロナウイルスやその他の空中浮遊菌を拡散させる可能性のあることが、ニコシア大学(キプロス)のTalib Dbouk氏とDimitris Drikakis氏による研究で示された。Drikakis氏は、「われわれの知る限り、空中に浮遊する花粉の粒子が微風でどのように運ばれ、屋外にいる群衆の空気感染に寄与するかをモデリングとシミュレーションで示したのはこの研究が初めてだ」と話している。この研究の詳細は、「Physics of Fluids」に6月22日掲載された。 花粉の中にRNAウイルスの分子が検出されたことや、新型コロナウイルスの感染と花粉濃度が関連することなどは、過去の研究で報告されている。Dbouk氏らは今回、空中に浮遊する新型コロナウイルスの粒子や飛沫核(ウイルスなどを含んだ飛沫の水分が蒸発した小さな粒子)は、花粉に付着して運ばれるとの仮説を立てた。その上で、花粉により新型コロナウイルスのようなRNAウイルスの拡散がどのように促進されるのかを、最新のコンピューター技術を用いて調査することにした。 Dbouk氏らは、ヤナギの木を花粉放出源として、花粉から生じるあらゆる粒子のコンピューターモデルを作成した。その上で、米国で花粉濃度が最も高くなる3〜5月の屋外で、ヤナギの木から20mほど離れた場所に11人または97人の人が集まっている場合に、1万個の花粉がどのような挙動を示すのかを検討した。なお、設定した11人または97人の中には、新型コロナウイルスを排出している人も数人含めた。 Dbouk氏は、「この研究で大いに苦労したのは、ヤナギの成木を極めて現実的な環境の中に再現することだった。そのためには、何千もの木の葉と花粉の粒子、何百もの枝だけでなく、木から20mほど離れたところにいる100人程度の人の集まりも必要だった」と振り返る。 米国の典型的な春の日の温度(気温22℃、地表温度17℃)、風速(4km/時)、相対湿度(50%)に設定して花粉の挙動を調べたところ、花粉は1分足らずで人々の間を通り抜けていくことが明らかになった。97人の群衆の場合には、30秒で花粉が群衆まで完全に到達したものの、この時点での花粉の流れ方は風向きと同じだった。ところが、40秒以降になると、花粉があらゆる方向に拡散していく様子が確認された。一方、11人の集まりの場合には、大人数の集まりの場合に生じた花粉の拡散は見られなかったものの、人々のいる場所を花粉が通り抜けていくことに変わりはなかった。これらの結果は、屋外で感染者が排出したウイルスが花粉に付着して運ばれることで、より多くのウイルスが拡散して人々の感染リスクを高める可能性のあることを意味する。 以上のような結果を受けてDbouk氏らは、「新型コロナウイルスの感染対策として、これまで人との距離を2m程度保つことが推奨されてきた。しかし、花粉の飛散量が多い時期の人混みの中では、この距離は十分ではない場合もあることが分かった。花粉レベルに応じた推奨基準を新たに設定することで、感染リスクをより良く管理できるようになるかもしれない」と述べている。 Dbouk氏らは今後も、さまざまな環境条件下での花粉と人間の呼吸器系との間の相互作用がどのようなメカニズムに基づくものなのかを検討していきたいと話している。(HealthDay News 2021年6月23日).https://consumer.healthday.com/b-6-23-another-poll….Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.
花粉はアレルギー持ちの人を苦しめるだけでなく、新型コロナウイルスやその他の空中浮遊菌を拡散させる可能性のあることが、ニコシア大学(キプロス)のTalib Dbouk氏とDimitris Drikakis氏による研究で示された。Drikakis氏は、「われわれの知る限り、空中に浮遊する花粉の粒子が微風でどのように運ばれ、屋外にいる群衆の空気感染に寄与するかをモデリングとシミュレーションで示したのはこの研究が初めてだ」と話している。この研究の詳細は、「Physics of Fluids」に6月22日掲載された。 花粉の中にRNAウイルスの分子が検出されたことや、新型コロナウイルスの感染と花粉濃度が関連することなどは、過去の研究で報告されている。Dbouk氏らは今回、空中に浮遊する新型コロナウイルスの粒子や飛沫核(ウイルスなどを含んだ飛沫の水分が蒸発した小さな粒子)は、花粉に付着して運ばれるとの仮説を立てた。その上で、花粉により新型コロナウイルスのようなRNAウイルスの拡散がどのように促進されるのかを、最新のコンピューター技術を用いて調査することにした。 Dbouk氏らは、ヤナギの木を花粉放出源として、花粉から生じるあらゆる粒子のコンピューターモデルを作成した。その上で、米国で花粉濃度が最も高くなる3〜5月の屋外で、ヤナギの木から20mほど離れた場所に11人または97人の人が集まっている場合に、1万個の花粉がどのような挙動を示すのかを検討した。なお、設定した11人または97人の中には、新型コロナウイルスを排出している人も数人含めた。 Dbouk氏は、「この研究で大いに苦労したのは、ヤナギの成木を極めて現実的な環境の中に再現することだった。そのためには、何千もの木の葉と花粉の粒子、何百もの枝だけでなく、木から20mほど離れたところにいる100人程度の人の集まりも必要だった」と振り返る。 米国の典型的な春の日の温度(気温22℃、地表温度17℃)、風速(4km/時)、相対湿度(50%)に設定して花粉の挙動を調べたところ、花粉は1分足らずで人々の間を通り抜けていくことが明らかになった。97人の群衆の場合には、30秒で花粉が群衆まで完全に到達したものの、この時点での花粉の流れ方は風向きと同じだった。ところが、40秒以降になると、花粉があらゆる方向に拡散していく様子が確認された。一方、11人の集まりの場合には、大人数の集まりの場合に生じた花粉の拡散は見られなかったものの、人々のいる場所を花粉が通り抜けていくことに変わりはなかった。これらの結果は、屋外で感染者が排出したウイルスが花粉に付着して運ばれることで、より多くのウイルスが拡散して人々の感染リスクを高める可能性のあることを意味する。 以上のような結果を受けてDbouk氏らは、「新型コロナウイルスの感染対策として、これまで人との距離を2m程度保つことが推奨されてきた。しかし、花粉の飛散量が多い時期の人混みの中では、この距離は十分ではない場合もあることが分かった。花粉レベルに応じた推奨基準を新たに設定することで、感染リスクをより良く管理できるようになるかもしれない」と述べている。 Dbouk氏らは今後も、さまざまな環境条件下での花粉と人間の呼吸器系との間の相互作用がどのようなメカニズムに基づくものなのかを検討していきたいと話している。(HealthDay News 2021年6月23日).https://consumer.healthday.com/b-6-23-another-poll….Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.