新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の急性期以降に遷延するさまざまな症状、いわゆる後遺症の報告が増えている。しかしその全体像はいまだ明らかにされていない。この現状を背景に、医療費データなどをCOVID-19パンデミック以前と現在とで比較するという手法により、後遺症の実態を詳細に検討した結果が、「The BMJ」に5月19日掲載された。. この研究結果を報告したのは、米国の医療保険サービス企業であるユナイテッドヘルス・グループ傘下の医療関連情報企業OptumLabs社のSarah E. Daugherty氏らの研究グループ。同氏らは、同国の医療費請求、外来検査、および入院医療という3件のデータベースを用いて、COVID-19急性期以降に見られる後遺症と思われる症状の発症率やリスク差などを検討する、後ろ向きコホート研究を実施した。. 解析対象に含めたのは、2019年1月以降、本人が重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染の診断を受けた当日まで、何らかの医療保険に加入していた18~65歳の成人26万6,586人。比較対照群として、傾向スコアにより年齢や性別、人種/民族、居住地域などをマッチさせたSARS-CoV-2感染が診断されていない2019年の集団と2020年の集団、およびウイルス性下気道疾患の既往者群、計898万919人を設定した。主要アウトカムは、SARS-CoV-2感染後の急性期(感染の診断から21日目まで)以降に認められた、国際疾病分類(ICD-10)に収載されている50以上の症状の発症とした。. 検討の結果、SARS-CoV-2感染者群の10.01%が1種類の何らかの後遺症を発症し、4.01%は2種類以上の後遺症を発症していた。具体的には、慢性呼吸不全、不整脈、凝固能亢進、末梢神経障害、記憶障害、糖尿病、肝機能障害、心筋炎、脳症などが認められた。これを2019年の集団と比較すると、1種類の後遺症の発症率は2.68ポイント、2種類以上の後遺症の発症率は1.91ポイントそれぞれ有意に高かった。また2020年の集団と比べても同順に2.93ポイント、2.02ポイント高く、さらにウイルス性下気道疾患既往者群との比較でも0.68ポイント、0.97ポイント高かった(全てP<0.01)。. 次に、SARS-CoV-2感染の診断から141日間、急性期を脱してから120日間にわたり追跡し(感染診断からの中央値87日、四分位範囲45~124日)、前記の後遺症のリスク差を検討した。その結果、対照群に比較して100人当たり発症率で0.02~2.26のリスク差が認められた(全てP<0.001)。いずれも絶対リスクの差としては大きなものではないが、ハザード比は2020年の集団との比較において1.24~25.65の範囲にあり、SARS-CoV-2感染によるさまざまな後遺症の相対リスクが大きく上昇することが分かった。. 英国国立健康研究所のElaine Maxwell氏は、この論文の付随論評の中で、「COVID-19が確認された患者、または感染の疑いがある人では、その後、長期間にわたり後遺症が発症するリスクのあることに注意が必要だ。これら後遺症への対処法を確立することが、現時点での喫緊の優先事項と言える」と記している。. なお、この研究はOptumLabs社の資金提供によって実施され、また2名の著者が製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2021年5月20日).https://consumer.healthday.com/risk-of-new-clinica….Abstract/Full Text.Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の急性期以降に遷延するさまざまな症状、いわゆる後遺症の報告が増えている。しかしその全体像はいまだ明らかにされていない。この現状を背景に、医療費データなどをCOVID-19パンデミック以前と現在とで比較するという手法により、後遺症の実態を詳細に検討した結果が、「The BMJ」に5月19日掲載された。. この研究結果を報告したのは、米国の医療保険サービス企業であるユナイテッドヘルス・グループ傘下の医療関連情報企業OptumLabs社のSarah E. Daugherty氏らの研究グループ。同氏らは、同国の医療費請求、外来検査、および入院医療という3件のデータベースを用いて、COVID-19急性期以降に見られる後遺症と思われる症状の発症率やリスク差などを検討する、後ろ向きコホート研究を実施した。. 解析対象に含めたのは、2019年1月以降、本人が重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染の診断を受けた当日まで、何らかの医療保険に加入していた18~65歳の成人26万6,586人。比較対照群として、傾向スコアにより年齢や性別、人種/民族、居住地域などをマッチさせたSARS-CoV-2感染が診断されていない2019年の集団と2020年の集団、およびウイルス性下気道疾患の既往者群、計898万919人を設定した。主要アウトカムは、SARS-CoV-2感染後の急性期(感染の診断から21日目まで)以降に認められた、国際疾病分類(ICD-10)に収載されている50以上の症状の発症とした。. 検討の結果、SARS-CoV-2感染者群の10.01%が1種類の何らかの後遺症を発症し、4.01%は2種類以上の後遺症を発症していた。具体的には、慢性呼吸不全、不整脈、凝固能亢進、末梢神経障害、記憶障害、糖尿病、肝機能障害、心筋炎、脳症などが認められた。これを2019年の集団と比較すると、1種類の後遺症の発症率は2.68ポイント、2種類以上の後遺症の発症率は1.91ポイントそれぞれ有意に高かった。また2020年の集団と比べても同順に2.93ポイント、2.02ポイント高く、さらにウイルス性下気道疾患既往者群との比較でも0.68ポイント、0.97ポイント高かった(全てP<0.01)。. 次に、SARS-CoV-2感染の診断から141日間、急性期を脱してから120日間にわたり追跡し(感染診断からの中央値87日、四分位範囲45~124日)、前記の後遺症のリスク差を検討した。その結果、対照群に比較して100人当たり発症率で0.02~2.26のリスク差が認められた(全てP<0.001)。いずれも絶対リスクの差としては大きなものではないが、ハザード比は2020年の集団との比較において1.24~25.65の範囲にあり、SARS-CoV-2感染によるさまざまな後遺症の相対リスクが大きく上昇することが分かった。. 英国国立健康研究所のElaine Maxwell氏は、この論文の付随論評の中で、「COVID-19が確認された患者、または感染の疑いがある人では、その後、長期間にわたり後遺症が発症するリスクのあることに注意が必要だ。これら後遺症への対処法を確立することが、現時点での喫緊の優先事項と言える」と記している。. なお、この研究はOptumLabs社の資金提供によって実施され、また2名の著者が製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2021年5月20日).https://consumer.healthday.com/risk-of-new-clinica….Abstract/Full Text.Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.