心血管疾患(CVD)のリスク因子は将来のがんリスクの上昇に関与し、心臓や血管の健康に良いライフスタイルは、がんリスクの低下に関与していることが、「JACC: CardioOncology」3月号に掲載された論文で明らかにされた。 CVDとがんに共通のリスク因子が、CVDとがんの併発にどの程度関与しているのかは明らかにされていない。そこで、米マサチューセッツ総合病院のEmily S. Lau氏らは、CVDの標準的なリスク因子、CVDのバイオマーカー、CVDの既往、および心血管の健康指標と将来のがん発症との関連を調べる研究を行った。 Framingham Heart Study(FHS)またはPrevention of Renal and Vascular End-Stage Disease(PREVEND) studyの参加者で、ベースライン時にがんの既往がなかった2万305例(平均年齢50±14歳、女性54%)を前向きに追跡し、がんの診断は病理組織学的に行った。多変量Cox比例ハザードモデルを用いて、ベースライン時の心血管リスク因子、アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の10年リスクスコア、確立されたCVDのバイオマーカー、CVDの既往、および米国心臓協会(AHA)が心血管の健康指標として定義しているライフシンプル7(LS7)心血管健康スコアとがん発症との関連を検討した。追跡期間中のCVD発症は、時間に依存する変数として扱った。 追跡期間中(期間中央値15.0年、第1四分位13.3年、第3四分位15.0年)にがんを発症したのは2,548例(平均年齢59±12歳)であった。従来のCVDリスク因子である年齢、性別および喫煙状態は、それぞれ独立してがんリスクと有意に関連していた(全てP<0.001)。がん発症のハザード比(HR)は、年齢が1標準偏差高くなった場合で2.12〔95%信頼区間(CI)2.00~2.26〕、男性で1.39(同1.28~1.51)、元喫煙者で1.30(同1.18~1.43)、現喫煙者で1.74(同1.57~1.93)、ASCVDの10年リスクスコアが5%高くなった場合で1.16(同1.14~1.17)であった(全てP<0.001)。 CVDのバイオマーカーに関しては、ナトリウム利尿ペプチド(NP)はがん発症と有意に関連していたが(NP濃度の第1三分位を基準とした場合の第3三分位のがん発症のHR 1.40、95%CI 1.03~1.91、P=0.035)、高感度トロポニンとがん発症との間に関連は認められなかった(P=0.47)。CVDの既往と追跡期間中のCVイベントの発生は、その後のがんリスクの増加に寄与しないことが示された。しかし、心血管の状態が良好であると、がんの発症リスクは低下した(LS7スコアが1ポイント増加した場合のがん発症のHR 0.95、95%CI 0.92~0.99、P=0.009)。 付随評論の著者は、「公衆衛生の観点から、CVDの根本的予防、つまりCVDリスク因子が最初から発生しないようにしようという動きが、かつてないほど強くなっている」と述べている。 なお、一名の著者が、ある製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2021年4月9日)https://consumer.healthday.com/cancer-heart-diseas….Abstract/Full Text.Editorial.Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.
心血管疾患(CVD)のリスク因子は将来のがんリスクの上昇に関与し、心臓や血管の健康に良いライフスタイルは、がんリスクの低下に関与していることが、「JACC: CardioOncology」3月号に掲載された論文で明らかにされた。 CVDとがんに共通のリスク因子が、CVDとがんの併発にどの程度関与しているのかは明らかにされていない。そこで、米マサチューセッツ総合病院のEmily S. Lau氏らは、CVDの標準的なリスク因子、CVDのバイオマーカー、CVDの既往、および心血管の健康指標と将来のがん発症との関連を調べる研究を行った。 Framingham Heart Study(FHS)またはPrevention of Renal and Vascular End-Stage Disease(PREVEND) studyの参加者で、ベースライン時にがんの既往がなかった2万305例(平均年齢50±14歳、女性54%)を前向きに追跡し、がんの診断は病理組織学的に行った。多変量Cox比例ハザードモデルを用いて、ベースライン時の心血管リスク因子、アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の10年リスクスコア、確立されたCVDのバイオマーカー、CVDの既往、および米国心臓協会(AHA)が心血管の健康指標として定義しているライフシンプル7(LS7)心血管健康スコアとがん発症との関連を検討した。追跡期間中のCVD発症は、時間に依存する変数として扱った。 追跡期間中(期間中央値15.0年、第1四分位13.3年、第3四分位15.0年)にがんを発症したのは2,548例(平均年齢59±12歳)であった。従来のCVDリスク因子である年齢、性別および喫煙状態は、それぞれ独立してがんリスクと有意に関連していた(全てP<0.001)。がん発症のハザード比(HR)は、年齢が1標準偏差高くなった場合で2.12〔95%信頼区間(CI)2.00~2.26〕、男性で1.39(同1.28~1.51)、元喫煙者で1.30(同1.18~1.43)、現喫煙者で1.74(同1.57~1.93)、ASCVDの10年リスクスコアが5%高くなった場合で1.16(同1.14~1.17)であった(全てP<0.001)。 CVDのバイオマーカーに関しては、ナトリウム利尿ペプチド(NP)はがん発症と有意に関連していたが(NP濃度の第1三分位を基準とした場合の第3三分位のがん発症のHR 1.40、95%CI 1.03~1.91、P=0.035)、高感度トロポニンとがん発症との間に関連は認められなかった(P=0.47)。CVDの既往と追跡期間中のCVイベントの発生は、その後のがんリスクの増加に寄与しないことが示された。しかし、心血管の状態が良好であると、がんの発症リスクは低下した(LS7スコアが1ポイント増加した場合のがん発症のHR 0.95、95%CI 0.92~0.99、P=0.009)。 付随評論の著者は、「公衆衛生の観点から、CVDの根本的予防、つまりCVDリスク因子が最初から発生しないようにしようという動きが、かつてないほど強くなっている」と述べている。 なお、一名の著者が、ある製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2021年4月9日)https://consumer.healthday.com/cancer-heart-diseas….Abstract/Full Text.Editorial.Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.