近年、健康に良いとしてブームになっている発酵食品が腸内細菌叢のバランスの改善を促す可能性を示した、小規模ランダム化比較試験(RCT)の結果が報告された。ヨーグルトやキムチ、コンブチャ(紅茶キノコ)といった発酵食品を多く摂取した参加者で、腸内細菌叢の多様性が高まっていることが確認されたという。米スタンフォード大学のJustin Sonnenburg氏らによるこの研究結果は、「Cell」に7月12日掲載された。 腸内細菌叢とは、腸内に生息している多種多様な細菌などの微生物の集団のことだ。最近の研究からは、代謝や栄養素の合成、免疫防御、脳の機能などの体の正常なプロセスに、腸内細菌叢が極めて重要な影響を与えていることが明らかになってきている。 論文の責任著者であるSonnenburg氏によると、どのような構成の腸内細菌叢が"健康的"なのかについては解明されていないが、「一般的には、細菌叢の多様性が高いほど健康的だと考えられている」という。その根拠の一つとなっているのが、肥満の人や、糖尿病、あるいは大腸炎といった疾患を持つ人では、健康な人と比べて腸内細菌叢の多様性が低い傾向があることを示した研究結果だ。また、産業化が進んでいない地域に暮らす特定の民族では、腸内細菌叢の多様性が極めて高く、現代病ともいわれる肥満や冠動脈疾患を抱える人が少ないことも報告されている。 腸内細菌叢の構成は、遺伝子や健康状態、ストレス、薬剤(特に抗菌薬)など、さまざまな要素の影響を受ける。なかでも重要なのは、食事だと考えられている。特に、加工肉が多く、精製あるいは未加工の植物性食品が少ない典型的な西洋の食事には、腸内細菌叢の多様性の低下につながる「多くの欠陥」があるとSonnenburg氏は指摘する。 Sonnenburg氏らは今回のRCTで、参加者36人の半数を10週間にわたって発酵食品の多い食事を摂取する群(発酵食品群)に、残りを食物繊維の多い食事を摂取する群(食物繊維群)にランダムに割り付けた。発酵食品群では、ヨーグルトや発酵させたカッテージチーズのほか、コンブチャやケフィアなどの飲み物、キムチ、ザワークラウトなどの発酵させた野菜を多く摂取し、食物繊維群では豆類や種子類、果物、野菜、全粒穀物、ナッツ類を多く摂取した。試験開始前3週間の間、10週間にわたる試験期間中、および試験終了後4週間の間に対象者の血液と便が検体として採取された。 解析の結果、発酵食品群では腸内細菌叢の多様性が高まったが、食物繊維群ではそのような変化は認められないことが、採取した便検体から明らかになった。また、発酵食品群では、炎症促進に関与する19種類のタンパク質の血中濃度が低下したが、食物繊維群ではこれらのタンパク質濃度に変化が認められないことも判明した。慢性的に続く弱いレベルの炎症は、さまざまな疾患の発症に関与していると考えられている。 Sonnenburg氏は、「ちょっとした食事内容の変更で、健康な成人の腸内細菌叢を再構成できる可能性を示した最初の例の一つであり、素晴らしい成果だ」と述べている。また、研究論文の責任著者の一人である、米Stanford Prevention Research CenterのChristopher Gardner氏は、「腸内細菌叢をターゲットにした食事は、健康な成人の免疫状態を変え、体内の炎症を軽減するための有望な手段となり得ることが明らかになった。この結果は、試験で発酵食品を摂取した全ての対象者で確認された」と述べている。 では、食物繊維の豊富な食品が同様の変化をもたらさなかったのはなぜなのだろうか。Sonnenburg氏らは、「10週間という期間は、食物繊維群で変化を認めるには短過ぎた可能性がある」との見方を示している。(HealthDay News 2021年7月16日).https://consumer.healthday.com/7-15-fermented-food….Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.
近年、健康に良いとしてブームになっている発酵食品が腸内細菌叢のバランスの改善を促す可能性を示した、小規模ランダム化比較試験(RCT)の結果が報告された。ヨーグルトやキムチ、コンブチャ(紅茶キノコ)といった発酵食品を多く摂取した参加者で、腸内細菌叢の多様性が高まっていることが確認されたという。米スタンフォード大学のJustin Sonnenburg氏らによるこの研究結果は、「Cell」に7月12日掲載された。 腸内細菌叢とは、腸内に生息している多種多様な細菌などの微生物の集団のことだ。最近の研究からは、代謝や栄養素の合成、免疫防御、脳の機能などの体の正常なプロセスに、腸内細菌叢が極めて重要な影響を与えていることが明らかになってきている。 論文の責任著者であるSonnenburg氏によると、どのような構成の腸内細菌叢が"健康的"なのかについては解明されていないが、「一般的には、細菌叢の多様性が高いほど健康的だと考えられている」という。その根拠の一つとなっているのが、肥満の人や、糖尿病、あるいは大腸炎といった疾患を持つ人では、健康な人と比べて腸内細菌叢の多様性が低い傾向があることを示した研究結果だ。また、産業化が進んでいない地域に暮らす特定の民族では、腸内細菌叢の多様性が極めて高く、現代病ともいわれる肥満や冠動脈疾患を抱える人が少ないことも報告されている。 腸内細菌叢の構成は、遺伝子や健康状態、ストレス、薬剤(特に抗菌薬)など、さまざまな要素の影響を受ける。なかでも重要なのは、食事だと考えられている。特に、加工肉が多く、精製あるいは未加工の植物性食品が少ない典型的な西洋の食事には、腸内細菌叢の多様性の低下につながる「多くの欠陥」があるとSonnenburg氏は指摘する。 Sonnenburg氏らは今回のRCTで、参加者36人の半数を10週間にわたって発酵食品の多い食事を摂取する群(発酵食品群)に、残りを食物繊維の多い食事を摂取する群(食物繊維群)にランダムに割り付けた。発酵食品群では、ヨーグルトや発酵させたカッテージチーズのほか、コンブチャやケフィアなどの飲み物、キムチ、ザワークラウトなどの発酵させた野菜を多く摂取し、食物繊維群では豆類や種子類、果物、野菜、全粒穀物、ナッツ類を多く摂取した。試験開始前3週間の間、10週間にわたる試験期間中、および試験終了後4週間の間に対象者の血液と便が検体として採取された。 解析の結果、発酵食品群では腸内細菌叢の多様性が高まったが、食物繊維群ではそのような変化は認められないことが、採取した便検体から明らかになった。また、発酵食品群では、炎症促進に関与する19種類のタンパク質の血中濃度が低下したが、食物繊維群ではこれらのタンパク質濃度に変化が認められないことも判明した。慢性的に続く弱いレベルの炎症は、さまざまな疾患の発症に関与していると考えられている。 Sonnenburg氏は、「ちょっとした食事内容の変更で、健康な成人の腸内細菌叢を再構成できる可能性を示した最初の例の一つであり、素晴らしい成果だ」と述べている。また、研究論文の責任著者の一人である、米Stanford Prevention Research CenterのChristopher Gardner氏は、「腸内細菌叢をターゲットにした食事は、健康な成人の免疫状態を変え、体内の炎症を軽減するための有望な手段となり得ることが明らかになった。この結果は、試験で発酵食品を摂取した全ての対象者で確認された」と述べている。 では、食物繊維の豊富な食品が同様の変化をもたらさなかったのはなぜなのだろうか。Sonnenburg氏らは、「10週間という期間は、食物繊維群で変化を認めるには短過ぎた可能性がある」との見方を示している。(HealthDay News 2021年7月16日).https://consumer.healthday.com/7-15-fermented-food….Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.