地中海式食事療法には、心臓や血管の健康の維持をはじめとして、さまざまなメリットがあることがこれまでに示されてきた。そして新たに、男性の勃起障害(ED)のリスクを抑制する可能性が報告された。アテネ大学(ギリシャ)のAthanasios Angelis氏らが、欧州心臓病学会(ESC2021、8月27~30日、オンライン開催)で発表した。. EDの有病率は加齢とともに増加するが、高血圧などの血管にダメージを与える疾患がある場合、そのリスクがより高くなる。高血圧患者のEDリスクは正常血圧者の2倍との報告もある。Angelis氏らは、EDを有する高血圧患者250人(平均年齢56歳)を対象に、地中海式食事療法の順守状況とEDの重症度との関連を検討した。なお、地中海式の食事とは、果物や野菜、全粒穀物、オリーブオイルが豊富で、適度な量の乳製品、卵、魚、鶏肉を摂取し、赤肉はあまり食べない食事スタイルのこと。. Angelis氏らの研究では、この地中海式食事療法の順守状況を、ふだん摂取している食品に関する質問票の回答から評価した(55点満点の評価で、スコアが高いほどよく順守していることを表す)。一方、EDの重症度は、男性の性的健康度を評価する指標(SHIM)を用いて判定した(25点満点でスコアが低いほど重症)。このほか、勃起機能にも関連する男性ホルモンであるテストステロン値を測定し、心エコー検査により冠動脈の血流予備能も評価した。また、血管の弾性を調べる検査により動脈硬化の進展レベルを把握した。. 解析の結果、地中海式食事療法に則した食事をしている男性(順守スコアが29点以上)は、冠動脈血流予備能とテストステロン値が高く、動脈硬化は進行しておらず、そしてEDの重症度が低い(SHIMスコアが14以上)ことが多いという関連が明らかになった。この結果についてAngelis氏は、「地中海式食事療法は血管を保護し、中年期に生じるテストステロン分泌低下を抑制することによって、ED症状の進行を予防する可能性があると考えられる」と述べている。. 本研究には関与していない、米National Jewish HealthのAndrew Freeman氏は、「EDと心血管疾患は連続的な病態と言える。一般的に、男性が心血管イベントを起こすよりも先に、EDの症状が現れることが多い」と解説する。そのような病態に対して、「地中海式食事療法は血管内皮機能の維持に適した食事スタイルであることが示されている」と話すのは、米マウントサイナイ病院のCarlos Santos-Gallego氏だ。同氏は、「血管内皮が健康であれば、組織の必要性に応じて動脈が拡張し、より多くの血液をそこに運ぶことができる。地中海式食事療法が、陰茎に血液を運ぶ動脈の機能改善にも役立つことは、十分に考えられる」と話す。. またSantos-Gallego氏は、「地中海式食事療法は、動脈の拡張を促す一酸化窒素の産生能力の向上にも役立つ可能性があり、結果としてEDへの効果を期待できる」としている。ただし、「現在EDの症状のある男性が地中海式食事療法を始めたからと言って、直ちにEDが治るわけではない。むしろ、EDの予防に向いているのではないか」とのことだ。. 今回発表された研究結果の解釈については、前出のFreeman氏も別の視点から注意を呼び掛けている。それは、血管への有益性を期待できるのはあくまで伝統的な地中海式食事療法に限られ、米国式にアレンジされたものではないという点だ。「外食の際に『地中海食』として提供された料理に、あまりに多い乳製品や赤肉が含まれていたとしたら、それは伝統的な地中海食ではないかもしれない」と同氏は語っている。. なお、学会発表された研究結果は、一般に査読を受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされる。(HealthDay News 2021年8月30日).https://consumer.healthday.com/8-26-one-change-in-….Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.
地中海式食事療法には、心臓や血管の健康の維持をはじめとして、さまざまなメリットがあることがこれまでに示されてきた。そして新たに、男性の勃起障害(ED)のリスクを抑制する可能性が報告された。アテネ大学(ギリシャ)のAthanasios Angelis氏らが、欧州心臓病学会(ESC2021、8月27~30日、オンライン開催)で発表した。. EDの有病率は加齢とともに増加するが、高血圧などの血管にダメージを与える疾患がある場合、そのリスクがより高くなる。高血圧患者のEDリスクは正常血圧者の2倍との報告もある。Angelis氏らは、EDを有する高血圧患者250人(平均年齢56歳)を対象に、地中海式食事療法の順守状況とEDの重症度との関連を検討した。なお、地中海式の食事とは、果物や野菜、全粒穀物、オリーブオイルが豊富で、適度な量の乳製品、卵、魚、鶏肉を摂取し、赤肉はあまり食べない食事スタイルのこと。. Angelis氏らの研究では、この地中海式食事療法の順守状況を、ふだん摂取している食品に関する質問票の回答から評価した(55点満点の評価で、スコアが高いほどよく順守していることを表す)。一方、EDの重症度は、男性の性的健康度を評価する指標(SHIM)を用いて判定した(25点満点でスコアが低いほど重症)。このほか、勃起機能にも関連する男性ホルモンであるテストステロン値を測定し、心エコー検査により冠動脈の血流予備能も評価した。また、血管の弾性を調べる検査により動脈硬化の進展レベルを把握した。. 解析の結果、地中海式食事療法に則した食事をしている男性(順守スコアが29点以上)は、冠動脈血流予備能とテストステロン値が高く、動脈硬化は進行しておらず、そしてEDの重症度が低い(SHIMスコアが14以上)ことが多いという関連が明らかになった。この結果についてAngelis氏は、「地中海式食事療法は血管を保護し、中年期に生じるテストステロン分泌低下を抑制することによって、ED症状の進行を予防する可能性があると考えられる」と述べている。. 本研究には関与していない、米National Jewish HealthのAndrew Freeman氏は、「EDと心血管疾患は連続的な病態と言える。一般的に、男性が心血管イベントを起こすよりも先に、EDの症状が現れることが多い」と解説する。そのような病態に対して、「地中海式食事療法は血管内皮機能の維持に適した食事スタイルであることが示されている」と話すのは、米マウントサイナイ病院のCarlos Santos-Gallego氏だ。同氏は、「血管内皮が健康であれば、組織の必要性に応じて動脈が拡張し、より多くの血液をそこに運ぶことができる。地中海式食事療法が、陰茎に血液を運ぶ動脈の機能改善にも役立つことは、十分に考えられる」と話す。. またSantos-Gallego氏は、「地中海式食事療法は、動脈の拡張を促す一酸化窒素の産生能力の向上にも役立つ可能性があり、結果としてEDへの効果を期待できる」としている。ただし、「現在EDの症状のある男性が地中海式食事療法を始めたからと言って、直ちにEDが治るわけではない。むしろ、EDの予防に向いているのではないか」とのことだ。. 今回発表された研究結果の解釈については、前出のFreeman氏も別の視点から注意を呼び掛けている。それは、血管への有益性を期待できるのはあくまで伝統的な地中海式食事療法に限られ、米国式にアレンジされたものではないという点だ。「外食の際に『地中海食』として提供された料理に、あまりに多い乳製品や赤肉が含まれていたとしたら、それは伝統的な地中海食ではないかもしれない」と同氏は語っている。. なお、学会発表された研究結果は、一般に査読を受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされる。(HealthDay News 2021年8月30日).https://consumer.healthday.com/8-26-one-change-in-….Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.