糖尿病患者は脳卒中リスクが高いことが知られており、さらに、一度脳卒中が起きた患者はその後、脳卒中の再発や心筋梗塞などの血管イベントを、より起こしやすくなることも明らかになっている。初回の脳卒中を予防するには、より良い血糖コントロールが有効と考えられているが、脳卒中が一度起きた後の血管イベント抑制のための血糖管理の意義はよく分かっていない。こうした中、脳卒中後の至適管理目標はHbA1c6.8~7.0%である可能性を示唆するデータが報告された。ソウル国立大学(韓国)のMoon-Ku Han氏らの研究によるもので、詳細は「Neurology」に9月29日掲載された。Han氏らはこの研究に、同国の脳卒中患者データベースを用いた。一過性脳虚血発作または急性虚血性脳卒中の発症から7日以内に登録された糖尿病患者1万8,567人(平均年齢70歳)を1年間追跡。初回脳卒中による入院時のHbA1cと、複合血管イベント(脳卒中の再発、心筋梗塞、および何らかの血管イベントによる死亡)発生リスクとの関連を検討した。なお、初回入院時のHbA1cの平均値は7.5%だった。1年間で1,437人(約8%)に複合血管イベントが発生していた。脳卒中の再発は954人(約5%)に認められた。複合血管イベントの発生リスクは、初回入院時のHbA1cが6.8~7.0%を超えると著明に増加していた。また、空腹時血糖が130mg/dL以下の患者では、その影響が顕著だった。年齢や性別などの交絡因子を調整後、初回入院時のHbA1cが6.5%未満だった患者に比較し、7.0%を超えていた患者は、心筋梗塞または何らかの血管イベントの発生リスクが27%高かった。同様に脳卒中再発リスクは28%高かった。アテローム性動脈硬化症を基盤とする大血管閉塞による脳卒中や心筋梗塞のリスクが最低となるHbA1cに比べて、小血管閉塞による脳卒中のリスクが最低となるHbA1cは、より低値だった。具体的には、大血管閉塞による脳卒中のリスクが最低となるHbA1cは7.3%(95%信頼区間6.8~7.9)、心筋梗塞のリスクが最低となるHbA1cは7.4%(同6.3~8.5)であるのに対し、小血管閉塞による脳卒中のリスクが最低となるHbA1cは6.6%(同6.3~6.9)であった。著者らは本研究の限界点として、血糖状態を初回入院時の測定結果のみで判定していることを挙げた上で、「虚血性脳卒中の既往のある糖尿病患者の複合血管イベントのリスクは、初回入院時のHbA1cと有意に関連していた。入院時のHbA1cの至適範囲は6.8~7.0%未満だが、再発イベントのサブタイプによって異なる」と総括。また、「われわれの研究結果は、脳卒中を起こした糖尿病患者の血糖値を注意深くモニタリングすることの重要性を浮き彫りにしている」と述べている。(HealthDay News 2021年9月30日).https://consumer.healthday.com/b-9-29-2655083368.html.Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock