通常、神経心原性の機序によりたこつぼ型心筋症(TCM)を発症した患者では、片頭痛が併存する場合、片頭痛のないTCM患者に比べて死亡および急性合併症のオッズが低いとの研究結果が、「Cardiovascular Revascularization Medicine」に3月14日報告された。.TCMの病態生理については議論があるが、症例のほとんどが心筋毒性を引き起こすカテコラミンレベルの急上昇により発症するとされている。片頭痛が潜在的にTCMに関与することを示唆する研究や症例報告もいくつか存在するが、片頭痛とTCMとの関連性は十分には検討されていない。.米メッドスター・ワシントン病院センターのJobin Joseph Varghese氏らは、2013~2017年のNational Inpatient Sample(NIS)のデータベースを用いて後ろ向きコホート研究を実施し、片頭痛が併存するTCM患者の院内転帰を、片頭痛のないTCM患者と比較検討した。連続変数には独立したStudent-t検定、カテゴリー変数にはχ2検定を用いて群間差を評価した。主要評価項目は院内死亡と急性の院内合併症(急性うっ血性心不全、挿管、急性腎不全、心室細動・心停止、死亡の複合)とし、交絡因子(年齢、性別、喫煙、糖尿病、脳血管障害、肥満、うつ病、がん)で調整して多変量回帰分析を行った。解析にはTCM患者17万2,025例のデータが含まれ、うち3,610例が片頭痛を有していた。.片頭痛のあるTCM群では片頭痛のないTCM群と比べて、女性の割合が高く(96.3%対84.4%、P<0.001)、平均年齢が低かった(59.9歳対67.4歳、P<0.001)。また、片頭痛のあるTCM群では、慢性肺疾患(21.3%対18%)、うつ病(33.4%対18.7%)、喫煙(21.6%対18.3%)、脳血管障害(12.8%対9.5%)を有する割合がより高かった(いずれもP<0.001)。一方、うっ血性心不全(33.6%対46.1%)、糖尿病(11.7%対17.1%)、がん(4.6%対8%)を有する割合は低かった(いずれもP<0.001)。片頭痛のないTCM群と比較した片頭痛のあるTCM群の院内死亡(2.2%対5.5%)のオッズ比(OR)は0.388と低く〔95%信頼区間(CI)0.311~0.485〕、急性合併症(21.1%対34.3%)のORも0.511(同0.471~0.554)と低かった(いずれもP<0.001)。交絡因子で調整後もORは有意に低いままであった(院内死亡:調整OR 0.622、95%CI 0.495~0.782;急性合併症:同0.563、0.519~0.611、いずれもP<0.001)。.著者らは、「片頭痛とTCMとの関連性に関する既報は限られており、われわれの知る限り、本研究は片頭痛とTCMとの関連を検討した最大規模の研究である。片頭痛患者ではカテコラミンレベルを上昇させるエピソードが頻発し、それによってカテコラミン受容体のダウンレギュレーションが起こっていることや、交感神経系の調節不全が存在することがTCMの重症化を抑制している可能性などが考慮されるが、片頭痛と、TCM患者における神経ホルモンの作用との関連性を明らかにするためには、さらなる研究が必要である」と述べている。.なお、著者の一人が、製薬企業、医療機器企業および他の企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2022年4月5日).https://consumer.healthday.com/lower-odds-of-mortality-complications-for-migraine-in-tcm-2657088329.html.Abstract/Full Text (subscription or payment may be required).Copyright © 2022 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
通常、神経心原性の機序によりたこつぼ型心筋症(TCM)を発症した患者では、片頭痛が併存する場合、片頭痛のないTCM患者に比べて死亡および急性合併症のオッズが低いとの研究結果が、「Cardiovascular Revascularization Medicine」に3月14日報告された。.TCMの病態生理については議論があるが、症例のほとんどが心筋毒性を引き起こすカテコラミンレベルの急上昇により発症するとされている。片頭痛が潜在的にTCMに関与することを示唆する研究や症例報告もいくつか存在するが、片頭痛とTCMとの関連性は十分には検討されていない。.米メッドスター・ワシントン病院センターのJobin Joseph Varghese氏らは、2013~2017年のNational Inpatient Sample(NIS)のデータベースを用いて後ろ向きコホート研究を実施し、片頭痛が併存するTCM患者の院内転帰を、片頭痛のないTCM患者と比較検討した。連続変数には独立したStudent-t検定、カテゴリー変数にはχ2検定を用いて群間差を評価した。主要評価項目は院内死亡と急性の院内合併症(急性うっ血性心不全、挿管、急性腎不全、心室細動・心停止、死亡の複合)とし、交絡因子(年齢、性別、喫煙、糖尿病、脳血管障害、肥満、うつ病、がん)で調整して多変量回帰分析を行った。解析にはTCM患者17万2,025例のデータが含まれ、うち3,610例が片頭痛を有していた。.片頭痛のあるTCM群では片頭痛のないTCM群と比べて、女性の割合が高く(96.3%対84.4%、P<0.001)、平均年齢が低かった(59.9歳対67.4歳、P<0.001)。また、片頭痛のあるTCM群では、慢性肺疾患(21.3%対18%)、うつ病(33.4%対18.7%)、喫煙(21.6%対18.3%)、脳血管障害(12.8%対9.5%)を有する割合がより高かった(いずれもP<0.001)。一方、うっ血性心不全(33.6%対46.1%)、糖尿病(11.7%対17.1%)、がん(4.6%対8%)を有する割合は低かった(いずれもP<0.001)。片頭痛のないTCM群と比較した片頭痛のあるTCM群の院内死亡(2.2%対5.5%)のオッズ比(OR)は0.388と低く〔95%信頼区間(CI)0.311~0.485〕、急性合併症(21.1%対34.3%)のORも0.511(同0.471~0.554)と低かった(いずれもP<0.001)。交絡因子で調整後もORは有意に低いままであった(院内死亡:調整OR 0.622、95%CI 0.495~0.782;急性合併症:同0.563、0.519~0.611、いずれもP<0.001)。.著者らは、「片頭痛とTCMとの関連性に関する既報は限られており、われわれの知る限り、本研究は片頭痛とTCMとの関連を検討した最大規模の研究である。片頭痛患者ではカテコラミンレベルを上昇させるエピソードが頻発し、それによってカテコラミン受容体のダウンレギュレーションが起こっていることや、交感神経系の調節不全が存在することがTCMの重症化を抑制している可能性などが考慮されるが、片頭痛と、TCM患者における神経ホルモンの作用との関連性を明らかにするためには、さらなる研究が必要である」と述べている。.なお、著者の一人が、製薬企業、医療機器企業および他の企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2022年4月5日).https://consumer.healthday.com/lower-odds-of-mortality-complications-for-migraine-in-tcm-2657088329.html.Abstract/Full Text (subscription or payment may be required).Copyright © 2022 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock