減量・代謝改善手術(減量手術)を受けると、2型糖尿病などが改善するといった変化が生じる。しかしそのような健康面の変化ばかりでなく、術後5年以内には結婚または離婚という変化が、一般人口の2倍以上の頻度で生じることが明らかになった。詳細は「Annals of Surgery Open」に7月20日掲載された。論文の筆頭著者である米ピッツバーグ大学のWendy King氏は、「これはかなり大きな影響と言え、減量手術を受ける人にとって重要なデータと考えられる。手術治療を考慮している場合、手術後に婚姻状況が変化する確率が高いことを認識しておく必要がありそうだ」と述べている。.King氏らは、米国内6施設が参加している、減量手術後の患者の経過に関する前向きコホート研究の登録者1,441人(年齢中央値47歳、女性79%、BMI中央値47)を対象として、術前と術後5年以内の婚姻状況を質問し、その変化を検討した。.術前には全体の57%(827人)が結婚しており、5%が未婚の同居、4%が別居、15%が離婚、2%が死別、17%が過去に婚姻・同居歴なしだった。既婚で同居している827人を除いた614人の術後5年間の結婚率は累積18%だった。この数値は、米国の一般人口の6.9%と比較して、2倍以上高い。.また、既婚で同居している827人の術後5年間の離婚率は累積8%だった。この数値もやはり、米国の一般人口の3.5%と比較して、2倍以上高い。なお、離婚した人とは別に5%の人が別居に至っていた。.Cox回帰分析の結果、術後の結婚に関連する因子として、術前のパートナーとの同居〔ハザード比(HR)5.25(95%信頼区間2.89~9.52)〕、パートナーとの別居〔HR3.03(同1.46~6.29)〕、若年〔10歳あたりHR1.69(1.34~2.13)〕、BMI低下〔BMI10あたりHR1.54(1.11~2.12)〕、うつ症状の改善〔ベック抑うつ評価尺度10点あたりHR1.47(1.01~2.16)〕と、高学歴が有意な因子として抽出された。.一方、術後の離婚や別居に関連する因子としては、女性〔HR2.08(1.09~3.96)〕、若年〔10歳あたりHR1.84(1.46~2.34)〕、世帯収入2万5,000ドル未満〔10万ドルに対してHR2.48(1.08~5.71)〕、性的欲求の頻度〔週に数回の場合、「なし」に対してHR2.12(1.05~4.28)〕などが抽出された。.この結果についてKing氏は、「減量手術を受けた人は、食習慣が劇的に変わり、身体活動量が増え、新たなことにチャレンジしようとする。それによってパートナーは疎外されているように感じたり、反対に相性がより良くなったと感じることがあるのではないか」と考察を加えている。また、「術後の人がより健康的なライフスタイルを送ろうとすることにパートナーがついていけない場合、婚姻状態の維持は難しい。例えば一人がヘルシーな食事をしている横で配偶者がポテトチップスを食べていたら、家庭内の摩擦につながるだろう」と付け加えている。他方、独身者に関しては、「自分の身体に対するイメージが改善して自信がつくことで、よりオープンに他者と付き合えるようになると考えられ、それが術後の結婚の増加につながるのではないか」としている。ただ、本研究では、手術を受けた人が術前にそのような変化を期待していたか否かは調査されていない。.米ニューヨーク大学ランゴン・ヘルスのMegan Jenkins氏は、本研究を「ユニークで興味深い研究」と評価。その上で、「減量手術を受けようとする人は、術後に起こり得る変化の可能性について、事前にパートナーと話し合うべきだろう」と話す。同氏はその理由を、「医師は減量手術後に生じる健康面の変化については多くを語れるが、手術は健康面以外にも生活の多くの側面に影響を与えるからだ」と説明している。(HealthDay News 2022年7月25日).https://consumer.healthday.com/weight-loss-surgery-2657702390.html.Copyright © 2022 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
減量・代謝改善手術(減量手術)を受けると、2型糖尿病などが改善するといった変化が生じる。しかしそのような健康面の変化ばかりでなく、術後5年以内には結婚または離婚という変化が、一般人口の2倍以上の頻度で生じることが明らかになった。詳細は「Annals of Surgery Open」に7月20日掲載された。論文の筆頭著者である米ピッツバーグ大学のWendy King氏は、「これはかなり大きな影響と言え、減量手術を受ける人にとって重要なデータと考えられる。手術治療を考慮している場合、手術後に婚姻状況が変化する確率が高いことを認識しておく必要がありそうだ」と述べている。.King氏らは、米国内6施設が参加している、減量手術後の患者の経過に関する前向きコホート研究の登録者1,441人(年齢中央値47歳、女性79%、BMI中央値47)を対象として、術前と術後5年以内の婚姻状況を質問し、その変化を検討した。.術前には全体の57%(827人)が結婚しており、5%が未婚の同居、4%が別居、15%が離婚、2%が死別、17%が過去に婚姻・同居歴なしだった。既婚で同居している827人を除いた614人の術後5年間の結婚率は累積18%だった。この数値は、米国の一般人口の6.9%と比較して、2倍以上高い。.また、既婚で同居している827人の術後5年間の離婚率は累積8%だった。この数値もやはり、米国の一般人口の3.5%と比較して、2倍以上高い。なお、離婚した人とは別に5%の人が別居に至っていた。.Cox回帰分析の結果、術後の結婚に関連する因子として、術前のパートナーとの同居〔ハザード比(HR)5.25(95%信頼区間2.89~9.52)〕、パートナーとの別居〔HR3.03(同1.46~6.29)〕、若年〔10歳あたりHR1.69(1.34~2.13)〕、BMI低下〔BMI10あたりHR1.54(1.11~2.12)〕、うつ症状の改善〔ベック抑うつ評価尺度10点あたりHR1.47(1.01~2.16)〕と、高学歴が有意な因子として抽出された。.一方、術後の離婚や別居に関連する因子としては、女性〔HR2.08(1.09~3.96)〕、若年〔10歳あたりHR1.84(1.46~2.34)〕、世帯収入2万5,000ドル未満〔10万ドルに対してHR2.48(1.08~5.71)〕、性的欲求の頻度〔週に数回の場合、「なし」に対してHR2.12(1.05~4.28)〕などが抽出された。.この結果についてKing氏は、「減量手術を受けた人は、食習慣が劇的に変わり、身体活動量が増え、新たなことにチャレンジしようとする。それによってパートナーは疎外されているように感じたり、反対に相性がより良くなったと感じることがあるのではないか」と考察を加えている。また、「術後の人がより健康的なライフスタイルを送ろうとすることにパートナーがついていけない場合、婚姻状態の維持は難しい。例えば一人がヘルシーな食事をしている横で配偶者がポテトチップスを食べていたら、家庭内の摩擦につながるだろう」と付け加えている。他方、独身者に関しては、「自分の身体に対するイメージが改善して自信がつくことで、よりオープンに他者と付き合えるようになると考えられ、それが術後の結婚の増加につながるのではないか」としている。ただ、本研究では、手術を受けた人が術前にそのような変化を期待していたか否かは調査されていない。.米ニューヨーク大学ランゴン・ヘルスのMegan Jenkins氏は、本研究を「ユニークで興味深い研究」と評価。その上で、「減量手術を受けようとする人は、術後に起こり得る変化の可能性について、事前にパートナーと話し合うべきだろう」と話す。同氏はその理由を、「医師は減量手術後に生じる健康面の変化については多くを語れるが、手術は健康面以外にも生活の多くの側面に影響を与えるからだ」と説明している。(HealthDay News 2022年7月25日).https://consumer.healthday.com/weight-loss-surgery-2657702390.html.Copyright © 2022 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock