新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者を対象とする前向き研究の結果、退院後も心機能の低下や凝固系の活性化、メンタルヘルス状態の悪化などを含め、多くの機能異常や症状が持続していることが明らかになった。英グラスゴー大学のAndrew J. Morrow氏らの研究によるもので、詳細は「Nature Medicine」に5月23日掲載された。COVID-19の急性期以降にさまざまな症状が長期間続くことに関しては既に多くの報告があり、「long COVID」や「post COVID症候群」などと呼ばれている。しかし、それらの研究報告の大半は後ろ向きに検討された結果であり、検査値異常や症状の有無・程度の網羅的な評価がなされていない。これを背景にMorrow氏らは、COVID-19入院患者を対象として、long COVIDの経過を前向きに検討する研究を実施。評価項目には、複数回の血液検査、心電図検査、患者からの報告、冠動脈造影を伴う胸部CT検査、腹部MRI検査などを含め、可及的に詳細な検討を加えた。英国内3カ所の医療機関に2020年5月22日~2021年3月16日にCOVID-19のため入院し、生存退院後28~60日に上記の検査が可能だった159人(平均年齢55歳、女性43%)を解析対象とした。まず、心筋炎の有無を検討した結果を見ると、13%は「心筋炎の可能性が非常に高い」と判定され、41%は「可能性が高い」であり、35%は「可能性が低い」に分類され、残り11%は可能性が否定された。次に、この患者群と年齢や性別、民族が一致し、複数の心血管疾患リスク因子を有しており、かつCOVID-19の既往のない29人を対照群として、COVID-19群と経過を比較検討。本研究では前述のように多数の評価項目が設定されていたが、それらの多くでCOVID-19群での状態の悪化が認められた。例えば、退院後のEQ-5D-5Lスコアで評価した健康関連の生活の質(HRQOL)は、COVID-19群0.77±0.23点、対照群0.87±0.20点(P=0.006)で前者が有意に低く、PHQ-4スコアで評価した不安・うつレベルは同順に、3.59±3.71点、1.28±2.67点(P<0.001)であり、メンタルヘルス状態の悪化が示唆された。身体機能についても、推算最大酸素摂取量が20.0±7.6対29.5±8.0mL/kg/分(P<0.001)と、COVID-19群の方が有意に低かった。以下同様に、胸部CTでのすりガラス状陰影が認められた割合は44.6対4.2%(P<0.001)、左室駆出率は54.1±9.7対60.4±9.3%(P<0.001)、NT-proBNPは中央値83(四分位範囲54~198)対58(同38~99)pg/mL(P=0.022)、凝固第VIII因子は149±65対108±58IU/dL(P<0.001)などの有意差が認められた。平均450日の追跡期間中に、COVID-19群の15.1%と対照群の7.4%が再入院または死亡し(P=0.356)、同順に67.9%と25.9%が外来で二次治療を受けていた(P=0.017)。著者らは、「COVID-19入院患者は退院後に、心肺病変や凝固系の活性化が持続し、メンタルヘルス状態が悪化していることが明らかになった。Long COVIDの長期研究および予防・治療法の確立が求められる」と結論付けている。また、「われわれの研究の重要な発見の一つは、退院後のアウトカムと最も強い関連のある因子は、COVID-19感染時の重症度であって、基礎となる健康状態ではなかったという点だ」とも付け加えている。なお、一部の著者がバイオ医薬品企業との金銭的関係の存在を明らかにしている。(HealthDay News 2022年5月31日)https://consumer.healthday.com/persistent-multisystem-abnormalities-after-covid-hospitalization-2657378493.html.Abstract/Full Text.Copyright © 2022 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者を対象とする前向き研究の結果、退院後も心機能の低下や凝固系の活性化、メンタルヘルス状態の悪化などを含め、多くの機能異常や症状が持続していることが明らかになった。英グラスゴー大学のAndrew J. Morrow氏らの研究によるもので、詳細は「Nature Medicine」に5月23日掲載された。COVID-19の急性期以降にさまざまな症状が長期間続くことに関しては既に多くの報告があり、「long COVID」や「post COVID症候群」などと呼ばれている。しかし、それらの研究報告の大半は後ろ向きに検討された結果であり、検査値異常や症状の有無・程度の網羅的な評価がなされていない。これを背景にMorrow氏らは、COVID-19入院患者を対象として、long COVIDの経過を前向きに検討する研究を実施。評価項目には、複数回の血液検査、心電図検査、患者からの報告、冠動脈造影を伴う胸部CT検査、腹部MRI検査などを含め、可及的に詳細な検討を加えた。英国内3カ所の医療機関に2020年5月22日~2021年3月16日にCOVID-19のため入院し、生存退院後28~60日に上記の検査が可能だった159人(平均年齢55歳、女性43%)を解析対象とした。まず、心筋炎の有無を検討した結果を見ると、13%は「心筋炎の可能性が非常に高い」と判定され、41%は「可能性が高い」であり、35%は「可能性が低い」に分類され、残り11%は可能性が否定された。次に、この患者群と年齢や性別、民族が一致し、複数の心血管疾患リスク因子を有しており、かつCOVID-19の既往のない29人を対照群として、COVID-19群と経過を比較検討。本研究では前述のように多数の評価項目が設定されていたが、それらの多くでCOVID-19群での状態の悪化が認められた。例えば、退院後のEQ-5D-5Lスコアで評価した健康関連の生活の質(HRQOL)は、COVID-19群0.77±0.23点、対照群0.87±0.20点(P=0.006)で前者が有意に低く、PHQ-4スコアで評価した不安・うつレベルは同順に、3.59±3.71点、1.28±2.67点(P<0.001)であり、メンタルヘルス状態の悪化が示唆された。身体機能についても、推算最大酸素摂取量が20.0±7.6対29.5±8.0mL/kg/分(P<0.001)と、COVID-19群の方が有意に低かった。以下同様に、胸部CTでのすりガラス状陰影が認められた割合は44.6対4.2%(P<0.001)、左室駆出率は54.1±9.7対60.4±9.3%(P<0.001)、NT-proBNPは中央値83(四分位範囲54~198)対58(同38~99)pg/mL(P=0.022)、凝固第VIII因子は149±65対108±58IU/dL(P<0.001)などの有意差が認められた。平均450日の追跡期間中に、COVID-19群の15.1%と対照群の7.4%が再入院または死亡し(P=0.356)、同順に67.9%と25.9%が外来で二次治療を受けていた(P=0.017)。著者らは、「COVID-19入院患者は退院後に、心肺病変や凝固系の活性化が持続し、メンタルヘルス状態が悪化していることが明らかになった。Long COVIDの長期研究および予防・治療法の確立が求められる」と結論付けている。また、「われわれの研究の重要な発見の一つは、退院後のアウトカムと最も強い関連のある因子は、COVID-19感染時の重症度であって、基礎となる健康状態ではなかったという点だ」とも付け加えている。なお、一部の著者がバイオ医薬品企業との金銭的関係の存在を明らかにしている。(HealthDay News 2022年5月31日)https://consumer.healthday.com/persistent-multisystem-abnormalities-after-covid-hospitalization-2657378493.html.Abstract/Full Text.Copyright © 2022 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock