経頭蓋直流電気刺激(tDCS)は片頭痛の症状を安全に緩和できることが、「CNS Neuroscience and Therapeutics」に4月19日掲載されたレビューで明らかになった。非侵襲的脳刺激療法の1つであるtDCSは、頭皮から電気刺激(陽極/陰極刺激)を脳の特定の領域へ送り、大脳皮質を活性化あるいは抑制することで、片頭痛患者の症状を改善させる可能性が示唆されている。しかし、電気刺激を与える脳の領域や刺激の強さ・時間は臨床試験ごとにさまざまである。四川大学(中国)のPeiwei Hong氏らは、片頭痛に対するtDCSの有効性と安全性を検討するため、2021年12月2日までにPubMed、EMBASE、Cochrane Library、Web of Scienceに掲載された11件(対象患者425例)のランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビューとメタアナリシスを行った。tDCSの内訳は一次運動野(M1)領域への陽極刺激(115例)/陰極刺激(59例)、一次感覚野(S1)領域への陰極刺激(15例)、視覚野(VC)領域への陽極刺激(11例)/陰極刺激(44例)、背外側前頭前野(DLPFC)領域への陽極刺激(3例)と偽刺激(対照群:178例)であった。主要評価項目は1カ月当たりの片頭痛日数、副次評価項目は頭痛強度と有害事象の発生率とし、tDCS治療後から12カ月までを評価期間とした。対照群とtDCS治療群(tDCS群)の治療効果は加重平均差(WMD)で示した。研究間の異質性はI2検定で評価した。まず、tDCS治療が片頭痛日数を減少させるかについて、5件のRCTで検討した。その結果、対照群と比較して、tDCS群では治療後1カ月以内に片頭痛日数がWMDで2.96日〔95%信頼区間(CI)0.23~5.69、I2=非適用、P=0.03〕、1~3カ月以内では1.94日(同1.57~2.30、I2=0%、P<0.00001)有意に減少することが分かった。サブグループ解析では、治療後1カ月以内、1~3カ月以内、3カ月以降での片頭痛日数の減少と、M1領域への陽極刺激(P=0.03)、VC領域への陽極刺激(P<0.00001)/陰極刺激(P=0.006)、VC領域への陽極刺激(P<0.00001)がそれぞれ有意に相関していた。次に、tDCS治療が片頭痛の強度を低下させるかについて、7件のRCTで検討した。その結果、対照群と比較して、tDCS群では治療後1カ月以内に頭痛強度がWMDで2.45(95%CI 1.41~3.49、I2=95%、P<0.00001)、1~3カ月以内では0.82(同0.22~1.42、I2=70%、P=0.007)、3カ月以降では3.04(同0.08~6.01、I2=95%、P=0.04)有意に低下することが分かった。サブグループ解析では、治療後1カ月以内、1~3カ月以内、3カ月以降での頭痛強度の低下と、M1領域への陽極刺激(P=0.008)/陰極刺激(P<0.00001)およびS1領域(P<0.00001)とVC領域(P=0.007)への陰極刺激、M1領域への陽極刺激(P<0.00001)とVC領域への陰極刺激(P=0.04)、M1領域への陽極刺激(P=0.007)/陰極刺激(P<0.00001)とS1領域への陰極刺激(P<0.00001)がそれぞれ有意に相関していた。有害事象の発生率については、対照群とtDCS群で有意な差は見られなかった。著者らは、「tDCSによるM1領域とVC領域の活性化や抑制は、片頭痛の症状緩和につながる可能性がある。tDCSは片頭痛の予防に効果的であり、安全な治療法である」と述べている。(HealthDay News 2022年4月29日)https://consumer.healthday.com/review-transcranial-direct-current-stimulation-safe-for-migraine-2657229321.html.Abstract/Full Text.Copyright © 2022 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
経頭蓋直流電気刺激(tDCS)は片頭痛の症状を安全に緩和できることが、「CNS Neuroscience and Therapeutics」に4月19日掲載されたレビューで明らかになった。非侵襲的脳刺激療法の1つであるtDCSは、頭皮から電気刺激(陽極/陰極刺激)を脳の特定の領域へ送り、大脳皮質を活性化あるいは抑制することで、片頭痛患者の症状を改善させる可能性が示唆されている。しかし、電気刺激を与える脳の領域や刺激の強さ・時間は臨床試験ごとにさまざまである。四川大学(中国)のPeiwei Hong氏らは、片頭痛に対するtDCSの有効性と安全性を検討するため、2021年12月2日までにPubMed、EMBASE、Cochrane Library、Web of Scienceに掲載された11件(対象患者425例)のランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビューとメタアナリシスを行った。tDCSの内訳は一次運動野(M1)領域への陽極刺激(115例)/陰極刺激(59例)、一次感覚野(S1)領域への陰極刺激(15例)、視覚野(VC)領域への陽極刺激(11例)/陰極刺激(44例)、背外側前頭前野(DLPFC)領域への陽極刺激(3例)と偽刺激(対照群:178例)であった。主要評価項目は1カ月当たりの片頭痛日数、副次評価項目は頭痛強度と有害事象の発生率とし、tDCS治療後から12カ月までを評価期間とした。対照群とtDCS治療群(tDCS群)の治療効果は加重平均差(WMD)で示した。研究間の異質性はI2検定で評価した。まず、tDCS治療が片頭痛日数を減少させるかについて、5件のRCTで検討した。その結果、対照群と比較して、tDCS群では治療後1カ月以内に片頭痛日数がWMDで2.96日〔95%信頼区間(CI)0.23~5.69、I2=非適用、P=0.03〕、1~3カ月以内では1.94日(同1.57~2.30、I2=0%、P<0.00001)有意に減少することが分かった。サブグループ解析では、治療後1カ月以内、1~3カ月以内、3カ月以降での片頭痛日数の減少と、M1領域への陽極刺激(P=0.03)、VC領域への陽極刺激(P<0.00001)/陰極刺激(P=0.006)、VC領域への陽極刺激(P<0.00001)がそれぞれ有意に相関していた。次に、tDCS治療が片頭痛の強度を低下させるかについて、7件のRCTで検討した。その結果、対照群と比較して、tDCS群では治療後1カ月以内に頭痛強度がWMDで2.45(95%CI 1.41~3.49、I2=95%、P<0.00001)、1~3カ月以内では0.82(同0.22~1.42、I2=70%、P=0.007)、3カ月以降では3.04(同0.08~6.01、I2=95%、P=0.04)有意に低下することが分かった。サブグループ解析では、治療後1カ月以内、1~3カ月以内、3カ月以降での頭痛強度の低下と、M1領域への陽極刺激(P=0.008)/陰極刺激(P<0.00001)およびS1領域(P<0.00001)とVC領域(P=0.007)への陰極刺激、M1領域への陽極刺激(P<0.00001)とVC領域への陰極刺激(P=0.04)、M1領域への陽極刺激(P=0.007)/陰極刺激(P<0.00001)とS1領域への陰極刺激(P<0.00001)がそれぞれ有意に相関していた。有害事象の発生率については、対照群とtDCS群で有意な差は見られなかった。著者らは、「tDCSによるM1領域とVC領域の活性化や抑制は、片頭痛の症状緩和につながる可能性がある。tDCSは片頭痛の予防に効果的であり、安全な治療法である」と述べている。(HealthDay News 2022年4月29日)https://consumer.healthday.com/review-transcranial-direct-current-stimulation-safe-for-migraine-2657229321.html.Abstract/Full Text.Copyright © 2022 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock