重度の収縮機能障害のない冠動脈疾患(CAD)患者では、CADのゲノムワイド多遺伝子リスクスコア(GPSCAD、欧州系の集団で検証済み)が上位10%に入ると、突然死/不整脈による死亡(以下、SAD;sudden and/or arrhythmic death)のリスクが高くなるという研究結果が、「Journal of the American College of Cardiology」8月30日号に掲載された。.CAD患者のSADは家族性に発生することがあるが、その遺伝的根拠は明らかにされていない。そこで、米シダーズ・サイナイ医療センターのRoopinder K. Sandhu氏らは、重度の収縮機能障害のない4,698例のCAD患者を対象に、GPSCADがCAD患者のSADリスクの層別化に有用であるかどうかを検討する研究を行った。対象症例の基準は、冠動脈造影で有意な狭窄が認められ、冠動脈再灌流の既往があるが左室機能(LVEF)が35%以上、またはLVEFが30~35%でニューヨーク心臓協会の機能分類がIで、ICDの適応とならなかった欧州系の患者とした。.本コホートを、GPSCADが上位10%とリスクの高いグループ(上位群;646例)とそれ以外のグループ(下位群;4,052例)の2つのグループに分けた。競合リスク解析で、SADおよび非SAD(SAD以外の死亡)の絶対リスクおよび相対リスク〔部分分布ハザード比(HR)として算出〕を評価した。全死亡に占めるSADの割合を上位群と下位群で比較し、これをSADのproportional riskとして評価した。追跡期間中央値は8.0年であった。.追跡期間中のSADの絶対リスクは上位群の方が下位群と比べて有意に高く〔SADの発生率;8.0%(95%CI: 5.1~12.4)対4.8%(同3.3~7.0)、P for Δ=0.005〕、SADのproportional riskも上位群で有意に高かった(全死亡に占めるSADの割合;29%対16%、P for proportion=0.0003)。.左心室駆出率、臨床的リスク因子(両親のSADの既往歴など)、および心電図のパラメーターを調整後、「GPSCADが上位10%に入ること」は、SADリスクと有意に関連していたが(部分分布HR 1.77、95%CI 1.23~2.54、P=0.002)、非SADリスクとの有意な関連は認められなかった(同1.00、0.80~1.25、P=0.98)(P for Δ=0.003)。.「GPSCADが上位10%に入ること」を多変量モデルに投入して解析したところ、net reclassification index(NRI)は有意に改善したが〔continuous NRI 14.0%(95% CI: 1.8~25.8、P=0.024)、categorical NRI 6.6%(同2.1~11.3、P=0.005)〕、C統計量の有意な改善は認められなかった(C統計量の差0.007、P=0.143)。.著者らは、「GPSCADは、重度の収縮機能障害がなく、植込み型除細動器による治療を必要としていないCAD患者のSADリスク層別化の精度を向上させる可能性のある有望な手段であることが示されたが、今後さらなる研究が必要である」と述べている。.なお、一名の著者が、ある製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2022年9月7日).https://consumer.healthday.com/high-polygenic-risk-score-for-cad-predicts-sudden-arrhythmic-death-2657908786.html.Abstract/Full Texthttps://www.jacc.org/doi/abs/10.1016/j.jacc.2022.05.049.Copyright © 2023 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
重度の収縮機能障害のない冠動脈疾患(CAD)患者では、CADのゲノムワイド多遺伝子リスクスコア(GPSCAD、欧州系の集団で検証済み)が上位10%に入ると、突然死/不整脈による死亡(以下、SAD;sudden and/or arrhythmic death)のリスクが高くなるという研究結果が、「Journal of the American College of Cardiology」8月30日号に掲載された。.CAD患者のSADは家族性に発生することがあるが、その遺伝的根拠は明らかにされていない。そこで、米シダーズ・サイナイ医療センターのRoopinder K. Sandhu氏らは、重度の収縮機能障害のない4,698例のCAD患者を対象に、GPSCADがCAD患者のSADリスクの層別化に有用であるかどうかを検討する研究を行った。対象症例の基準は、冠動脈造影で有意な狭窄が認められ、冠動脈再灌流の既往があるが左室機能(LVEF)が35%以上、またはLVEFが30~35%でニューヨーク心臓協会の機能分類がIで、ICDの適応とならなかった欧州系の患者とした。.本コホートを、GPSCADが上位10%とリスクの高いグループ(上位群;646例)とそれ以外のグループ(下位群;4,052例)の2つのグループに分けた。競合リスク解析で、SADおよび非SAD(SAD以外の死亡)の絶対リスクおよび相対リスク〔部分分布ハザード比(HR)として算出〕を評価した。全死亡に占めるSADの割合を上位群と下位群で比較し、これをSADのproportional riskとして評価した。追跡期間中央値は8.0年であった。.追跡期間中のSADの絶対リスクは上位群の方が下位群と比べて有意に高く〔SADの発生率;8.0%(95%CI: 5.1~12.4)対4.8%(同3.3~7.0)、P for Δ=0.005〕、SADのproportional riskも上位群で有意に高かった(全死亡に占めるSADの割合;29%対16%、P for proportion=0.0003)。.左心室駆出率、臨床的リスク因子(両親のSADの既往歴など)、および心電図のパラメーターを調整後、「GPSCADが上位10%に入ること」は、SADリスクと有意に関連していたが(部分分布HR 1.77、95%CI 1.23~2.54、P=0.002)、非SADリスクとの有意な関連は認められなかった(同1.00、0.80~1.25、P=0.98)(P for Δ=0.003)。.「GPSCADが上位10%に入ること」を多変量モデルに投入して解析したところ、net reclassification index(NRI)は有意に改善したが〔continuous NRI 14.0%(95% CI: 1.8~25.8、P=0.024)、categorical NRI 6.6%(同2.1~11.3、P=0.005)〕、C統計量の有意な改善は認められなかった(C統計量の差0.007、P=0.143)。.著者らは、「GPSCADは、重度の収縮機能障害がなく、植込み型除細動器による治療を必要としていないCAD患者のSADリスク層別化の精度を向上させる可能性のある有望な手段であることが示されたが、今後さらなる研究が必要である」と述べている。.なお、一名の著者が、ある製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2022年9月7日).https://consumer.healthday.com/high-polygenic-risk-score-for-cad-predicts-sudden-arrhythmic-death-2657908786.html.Abstract/Full Texthttps://www.jacc.org/doi/abs/10.1016/j.jacc.2022.05.049.Copyright © 2023 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock