新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の急性期以降も症状が遷延する、いわゆるlong COVIDのリスクに、COVID-19発症前のメンタルヘルス状態が関連している可能性を示唆するデータが報告された。米ハーバードT. H.チャン公衆衛生大学院のSiwen Wang氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Psychiatry」に9月7日掲載された。.COVID-19罹患者の23%が、4週間以上症状が持続するlong COVIDに悩まされると報告されているが、いまだにlong COVIDのリスク因子は明らかにされていない。Wang氏らは、COVID-19罹患前の抑うつ、不安、ストレス、孤独感などの心理的苦痛がlong COVIDと関連している可能性を想定し、3件の大規模コホート研究のデータを統合し解析を行った。.解析に用いた大規模コホート研究は、1989年から米国内の25~42歳の女性看護師を登録し実施されている「Nurses' Health Study II(NHS II)」、2010年から米国とカナダの18歳以上の女性看護師を登録し実施されている「Nurses' Health Study 3」(2015年からは男性看護師の登録も開始)、および1996年からNHS II参加者の9~17歳の子どもたちを登録し実施されている「Growing Up Today Study」の三つ。.2020年4月に本研究のためのベースライン調査が行われ、抑うつ(PHQ-2)、不安(GAD-2)、COVID-19に対する危惧(全くない~非常に危惧しているの四者択一)、ストレス(PSS-4)、孤独感(UCLA孤独感尺度)を評価。その後、2021年11月まで一定の間隔で重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の感染の有無とその後の症状、日常生活への影響などを追跡調査した。.3件のコホートの合計参加者数は5万4,960人で、平均年齢57.5±13.8歳、96.6%が女性、38.0%は現役の医療従事者だった。19カ月の追跡期間中に、3,193人(5.8%)がSARS-CoV-2陽性との診断を受けたことを報告した。そのうち1,403人(陽性となった人の43.9%)がCOVID-19急性期以降の症状の持続を報告し、1,219人(症状が持続した人の86.9%)が、2カ月以上の症状持続を報告。783人(同55.8%)はその症状により日常生活に何らかの障害を来していた。最も一般的な症状は、疲労(56.0%)、嗅覚・味覚障害(44.6%)、息切れ(25.5%)、見当識障害・ブレインフォグ(24.5%)、記憶力低下(21.8%)などだった。.COVID-19リスクに影響を及ぼし得る因子〔年齢、性別、BMI、喫煙習慣、人種/民族、職場(医療機関)での職位、糖尿病・高血圧・脂質異常症・喘息・がんの既往など〕を調整後、以下に記すように、COVID-19罹患前のメンタルヘルス状態が、long COVIDリスクと有意に関連していることが明らかになった。.まず、COVID-19罹患前の抑うつレベルが高いこと(PHQ-2スコアが3)はlong COVIDのリスクが32%高いという関連があった〔相対リスク(RR)1.32(95%信頼区間1.12~1.55)〕。同様に、不安レベルの高さ(GAD-2スコアが3)は42%〔RR1.42(同1.23~1.65)〕、COVID-19に対する危惧の強さ(四者択一のうち危惧の高い二者)は37%〔RR1.37(1.17~1.61)〕、ストレスの強さ(最高四分位群)は46%〔RR1.46(1.18~1.81)〕、および孤独感の強さ(UCLA孤独感尺度で3群に分けた最低スコア群以外)は32%〔RR1.32(1.08~1.61)〕、それぞれlong COVIDのリスクが高いことが示された。また、COVID-19罹患前に2種類以上の心理的苦痛を報告していた場合、long COVIDのリスクは約5割高かった〔RR1.49(1.23~1.80)〕。.なお、著者らは、「われわれの研究結果が、long COVIDは心身症であるという仮説を支持するものとして誤解されるべきでない」と述べている。(HealthDay News 2022年9月12日).https://consumer.healthday.com/preinfection-psychological-distress-ups-risk-for-long-covid-2658161990.html.Copyright © 2023 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の急性期以降も症状が遷延する、いわゆるlong COVIDのリスクに、COVID-19発症前のメンタルヘルス状態が関連している可能性を示唆するデータが報告された。米ハーバードT. H.チャン公衆衛生大学院のSiwen Wang氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Psychiatry」に9月7日掲載された。.COVID-19罹患者の23%が、4週間以上症状が持続するlong COVIDに悩まされると報告されているが、いまだにlong COVIDのリスク因子は明らかにされていない。Wang氏らは、COVID-19罹患前の抑うつ、不安、ストレス、孤独感などの心理的苦痛がlong COVIDと関連している可能性を想定し、3件の大規模コホート研究のデータを統合し解析を行った。.解析に用いた大規模コホート研究は、1989年から米国内の25~42歳の女性看護師を登録し実施されている「Nurses' Health Study II(NHS II)」、2010年から米国とカナダの18歳以上の女性看護師を登録し実施されている「Nurses' Health Study 3」(2015年からは男性看護師の登録も開始)、および1996年からNHS II参加者の9~17歳の子どもたちを登録し実施されている「Growing Up Today Study」の三つ。.2020年4月に本研究のためのベースライン調査が行われ、抑うつ(PHQ-2)、不安(GAD-2)、COVID-19に対する危惧(全くない~非常に危惧しているの四者択一)、ストレス(PSS-4)、孤独感(UCLA孤独感尺度)を評価。その後、2021年11月まで一定の間隔で重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の感染の有無とその後の症状、日常生活への影響などを追跡調査した。.3件のコホートの合計参加者数は5万4,960人で、平均年齢57.5±13.8歳、96.6%が女性、38.0%は現役の医療従事者だった。19カ月の追跡期間中に、3,193人(5.8%)がSARS-CoV-2陽性との診断を受けたことを報告した。そのうち1,403人(陽性となった人の43.9%)がCOVID-19急性期以降の症状の持続を報告し、1,219人(症状が持続した人の86.9%)が、2カ月以上の症状持続を報告。783人(同55.8%)はその症状により日常生活に何らかの障害を来していた。最も一般的な症状は、疲労(56.0%)、嗅覚・味覚障害(44.6%)、息切れ(25.5%)、見当識障害・ブレインフォグ(24.5%)、記憶力低下(21.8%)などだった。.COVID-19リスクに影響を及ぼし得る因子〔年齢、性別、BMI、喫煙習慣、人種/民族、職場(医療機関)での職位、糖尿病・高血圧・脂質異常症・喘息・がんの既往など〕を調整後、以下に記すように、COVID-19罹患前のメンタルヘルス状態が、long COVIDリスクと有意に関連していることが明らかになった。.まず、COVID-19罹患前の抑うつレベルが高いこと(PHQ-2スコアが3)はlong COVIDのリスクが32%高いという関連があった〔相対リスク(RR)1.32(95%信頼区間1.12~1.55)〕。同様に、不安レベルの高さ(GAD-2スコアが3)は42%〔RR1.42(同1.23~1.65)〕、COVID-19に対する危惧の強さ(四者択一のうち危惧の高い二者)は37%〔RR1.37(1.17~1.61)〕、ストレスの強さ(最高四分位群)は46%〔RR1.46(1.18~1.81)〕、および孤独感の強さ(UCLA孤独感尺度で3群に分けた最低スコア群以外)は32%〔RR1.32(1.08~1.61)〕、それぞれlong COVIDのリスクが高いことが示された。また、COVID-19罹患前に2種類以上の心理的苦痛を報告していた場合、long COVIDのリスクは約5割高かった〔RR1.49(1.23~1.80)〕。.なお、著者らは、「われわれの研究結果が、long COVIDは心身症であるという仮説を支持するものとして誤解されるべきでない」と述べている。(HealthDay News 2022年9月12日).https://consumer.healthday.com/preinfection-psychological-distress-ups-risk-for-long-covid-2658161990.html.Copyright © 2023 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock