進行性メラノーマに対する免疫療法では、それを実施するタイミングの違いが有効性の違いを生む可能性があるようだ。ステージ3〜4のメラノーマ患者を対象にした第2相臨床試験で、術前と術後に分けてキイトルーダ(一般名ペムブロリズマブ)を投与された患者では、術後のみに同薬剤を投与された患者に比べて、その後2年間での再発リスクが大幅に軽減されることが示されたという。米テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのSapna Patel氏らが実施したこの研究の詳細は、「The New England Journal of Medicine(NEJM)」3月2日号に掲載された。.ステージ3〜4のメラノーマは、がんがリンパ節や他の臓器にまで転移している状態である。標準治療としては、手術でがんを可能な限り取り除いた上で、残存腫瘍を死滅させる治療を、多くの場合、キイトルーダのような抗PD-1抗体により行う。抗PD-1抗体は、がん細胞の表面に発現するPD-L1が免疫細胞(T細胞)のPD-1受容体に結合することでT細胞の働きに「ブレーキ」をかけるのを阻止する、免疫療法で使われる薬剤の一種だ。.今回の試験は、術前から抗PD-1抗体による治療を開始することで、同薬剤の効果がさらに高まるのではないかとの考えを確かめる目的で実施された。Patel氏らは、ステージ3〜4のメラノーマ患者313人を、1回200mgのキイトルーダを3週間ごとに術前に3回、術後に15回投与する群(術前・術後投与群、154人)と、同量のキイトルーダを術後に18回投与する群(術後投与群、159人)にランダムに割り付けた。主要評価項目は、手術が不可能な疾患の進行や毒性などのイベントが生じることなく生存している期間(無イベント生存期間)とした。.追跡期間中央値14.7カ月の時点で、術前・術後投与群では術後投与群に比べて、無イベント生存期間が有意に長かった。また、ランダム化から2年後の時点でイベントが生じることなく生存していた患者の割合は、術前・術後投与群で72%だったのに対し、術後投与群では49%だった。安全性に関しては、治療中にグレード3以上の治療関連の有害事象が、術前・術後投与群の12%、術後投与群の14%に生じた。なお、全生存期間については、解析時点で死亡者数が少なかったため、両群での優劣は評価できなかったという。.Patel氏は、「これらの結果は、治療法の変更に対する申し分ないエビデンスになるとわれわれは確信している」と話す。.この研究には関与していない、米メモリアルスローン・ケタリングがんセンターのMichael Postow氏は、「術前投与により得られた違いは非常に大きく、これは驚くべき結果だ」と話す。同氏によると、同氏が所属するがんセンターも含め、いくつかの医療センターでは、すでに高リスクのメラノーマ患者に対して術前から免疫療法を実施しているという。しかし、「本研究により、術前に免疫療法を行うことの効果が明らかにされた」とし、「この治療法の方が優れていると、患者に自信を持って伝えることができるようになった」と語る。.また、論文の共著者の1人である米モフィットがんセンターのVernon Sondak氏は、「極めて楽観的な人の予測も上回る結果が得られた」と話す。同氏は、医師も患者も、がんが見つかった場合にはできるだけ早くそれを取り除きたいと思うのが通常であり、実際に、それがこれまでの一般的な治療の流れだったと指摘。その上で、「この試験の結果は、そのダイナミクスを変えるものだ」と強調している。ただし、同氏によると、早いステージで見つかったメラノーマに対しては、手術が第一選択肢であることに変わりはないという。.本臨床試験は、米国立がん研究所とキイトルーダを製造するMerck社からの資金提供を受けて実施された。(HealthDay News 2023年3月6日)https://consumer.healthday.com/melanoma-2659479160.html.Copyright © 2023 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock