米疾病対策センター(CDC)発行「Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)」の8月11日号に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)急性期以降に症状が遷延または新たに発症する、いわゆる「long COVID」に関する2件の論文が掲載された。一方は、long COVIDの症状がCOVID-19既往者に特異的とは言えない可能性を指摘するものであり、一方はlong COVID患者の4人に1人以上が長期間にわたり活動制限が生じているとするもの。.前者の報告は、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のJuan Carlos C. Montoy氏らによる研究。重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)検査を受けた人を、感染の有無にかかわらず長期間追跡している多施設共同前向きコホート研究(INSPIRE)のデータを用いて行われた。INSPIRE登録者6,057人のうち、登録12カ月後まで、3カ月ごとの追跡調査に全て参加していた1,741人から、追跡期間中の初回感染または再感染が確認された人を除く1,296人(女性67.4%、ベースライン時のSARS-CoV-2陽性者78.5%)を解析対象とした。追跡期間中の症状は自己申告に基づき把握された。.ベースライン時に何らかの症状が見られた割合は、SARS-CoV-2陽性群98.4%(95%信頼区間97.7~99.2)、陰性群88.2%(同84.4~92.0)。その割合は両群ともに経時的に低下していたが、12カ月後にも同順に18.3%(15.9~20.7)、16.1%(11.8~20.4)が何らかの症状を有していた。症状を8種類に分類して比較すると、ベースラインではいくつかの症状の有病率に有意差があり陽性群の方が高かったが、それらの群間差の多くは時間の経過とともに非有意となっていた。.この結果から著者らは、「医療提供者は、long COVIDの症状がCOVID-19既往者に特異的なものとは言えない可能性のあることを認識しておく必要がある」と述べている。なお、数人の著者が、医療関連企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。.後者の研究はCDCのNicole D. Ford氏らによるもので、米国国勢調査局が行っている世帯パルス調査(HPS)のデータを用いた研究。HPSはCOVID-19の影響を把握するために開始された反復横断調査であり、2022年6月の調査からはlong COVIDに関する情報も収集されている。.解析の結果、18歳以上の米国成人全体におけるlong COVID有病率は、2022年6月1~13日時点で7.5%(7.1~7.9)であり、翌2023年6月7~19日時点では6.0%(5.7~6.3)と有意に低下していた。この間の経時的推移を見ると、2022年6月1~13日から2023年1月4~16日までは有意に低下していたが〔調査サイクルごとに-0.28%(P=0.001)〕、その後は下げ止まりしていた〔同-0.006%(P=0.95)〕。.解析対象をCOVID-19既往者に限定した場合のlong COVID有病率は、2022年6月1~13日時点で18.9%(17.9~19.8)、2023年6月7~19日時点で11.0%(10.4~11.6)であり、やはり2023年1月4~16日の調査サイクル以降は有意な低下が見られなかった。.また、long COVID患者に限定した解析では、その4人に1人以上に当たる26.4%(24.0~28.9)が2023年6月7~19日時点で深刻な活動制限を報告し、その有病率は調査期間中に有意な低下がなく、ほぼ一定していた〔調査サイクルごとに-0.05%(P=0.72)〕。深刻な活動制限を有する割合を年齢カテゴリー別に比較した場合、明確な傾向は見られず、どの年齢層でも全体解析とほぼ同等の有病率だった。.著者らは、「われわれの調査結果は、ワクチン接種を含めたCOVID-19予防対策の重要性を浮き彫りにしている」と述べている。また、2023年初頭まで認められたlong COVID有病率の低下には、COVID-19患者が減少したことに加えて、「ワクチンの普及、罹患時の重症度の変化、抗ウイルス薬による急性期治療の進歩などが関与しているのではないか」との考察が加えられている。(HealthDay News 2023年8月15日).https://consumer.healthday.com/physician-s-briefing-long-covid-2663574894.html.Copyright © 2023 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
米疾病対策センター(CDC)発行「Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)」の8月11日号に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)急性期以降に症状が遷延または新たに発症する、いわゆる「long COVID」に関する2件の論文が掲載された。一方は、long COVIDの症状がCOVID-19既往者に特異的とは言えない可能性を指摘するものであり、一方はlong COVID患者の4人に1人以上が長期間にわたり活動制限が生じているとするもの。.前者の報告は、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のJuan Carlos C. Montoy氏らによる研究。重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)検査を受けた人を、感染の有無にかかわらず長期間追跡している多施設共同前向きコホート研究(INSPIRE)のデータを用いて行われた。INSPIRE登録者6,057人のうち、登録12カ月後まで、3カ月ごとの追跡調査に全て参加していた1,741人から、追跡期間中の初回感染または再感染が確認された人を除く1,296人(女性67.4%、ベースライン時のSARS-CoV-2陽性者78.5%)を解析対象とした。追跡期間中の症状は自己申告に基づき把握された。.ベースライン時に何らかの症状が見られた割合は、SARS-CoV-2陽性群98.4%(95%信頼区間97.7~99.2)、陰性群88.2%(同84.4~92.0)。その割合は両群ともに経時的に低下していたが、12カ月後にも同順に18.3%(15.9~20.7)、16.1%(11.8~20.4)が何らかの症状を有していた。症状を8種類に分類して比較すると、ベースラインではいくつかの症状の有病率に有意差があり陽性群の方が高かったが、それらの群間差の多くは時間の経過とともに非有意となっていた。.この結果から著者らは、「医療提供者は、long COVIDの症状がCOVID-19既往者に特異的なものとは言えない可能性のあることを認識しておく必要がある」と述べている。なお、数人の著者が、医療関連企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。.後者の研究はCDCのNicole D. Ford氏らによるもので、米国国勢調査局が行っている世帯パルス調査(HPS)のデータを用いた研究。HPSはCOVID-19の影響を把握するために開始された反復横断調査であり、2022年6月の調査からはlong COVIDに関する情報も収集されている。.解析の結果、18歳以上の米国成人全体におけるlong COVID有病率は、2022年6月1~13日時点で7.5%(7.1~7.9)であり、翌2023年6月7~19日時点では6.0%(5.7~6.3)と有意に低下していた。この間の経時的推移を見ると、2022年6月1~13日から2023年1月4~16日までは有意に低下していたが〔調査サイクルごとに-0.28%(P=0.001)〕、その後は下げ止まりしていた〔同-0.006%(P=0.95)〕。.解析対象をCOVID-19既往者に限定した場合のlong COVID有病率は、2022年6月1~13日時点で18.9%(17.9~19.8)、2023年6月7~19日時点で11.0%(10.4~11.6)であり、やはり2023年1月4~16日の調査サイクル以降は有意な低下が見られなかった。.また、long COVID患者に限定した解析では、その4人に1人以上に当たる26.4%(24.0~28.9)が2023年6月7~19日時点で深刻な活動制限を報告し、その有病率は調査期間中に有意な低下がなく、ほぼ一定していた〔調査サイクルごとに-0.05%(P=0.72)〕。深刻な活動制限を有する割合を年齢カテゴリー別に比較した場合、明確な傾向は見られず、どの年齢層でも全体解析とほぼ同等の有病率だった。.著者らは、「われわれの調査結果は、ワクチン接種を含めたCOVID-19予防対策の重要性を浮き彫りにしている」と述べている。また、2023年初頭まで認められたlong COVID有病率の低下には、COVID-19患者が減少したことに加えて、「ワクチンの普及、罹患時の重症度の変化、抗ウイルス薬による急性期治療の進歩などが関与しているのではないか」との考察が加えられている。(HealthDay News 2023年8月15日).https://consumer.healthday.com/physician-s-briefing-long-covid-2663574894.html.Copyright © 2023 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock