統合失調症患者の多くが、逆境的小児期体験(adverse childhood experience;ACE)を有しているとの研究結果が、「Frontiers in Psychiatry」に8月28日掲載された。.同済大学(中国)のLei Zhang氏らは、単一施設横断研究を行い、統合失調症患者におけるACEの経験割合とその種類を調べ、精神症状(陽性・陰性症状)およびパーソナリティー障害(personality disorder;PD)特性とACEとの関連を調査した。対象者は、上海市浦東新区精神衛生センターに通院または入院している統合失調症患者454人(平均年齢26.8±5.895歳、男性44.5%)とした。ACEの評価には、Child Trauma Questionnaire Short Form(CTQ-SF;心理的虐待、身体的虐待、性的虐待、心理的ネグレクト、身体的ネグレクトの5つの下位尺度を有し、計28項目から構成される質問紙)を用いた。精神症状は陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)、PD特性はPersonality Diagnostic Questionnaire-4+(PDQ-4+)を用いて、それぞれ評価した。.その結果、対象患者の80.8%が1つ以上のACEを有していた。最も割合が高かったACEは、身体的ネグレクト(69.8%)、心理的ネグレクト(28.2%)、心理的虐待(22.9%)だった。ACEと精神症状やPD特性との関連をピアソン相関検定により解析したところ、心理的虐待はPD特性と有意に関連していた(R2=0.03145、P=0.0001)。心理的ネグレクト(R2=0.01351、P=0.0132)および身体的ネグレクト(R2=0.01921、P=0.0031)は、陰性症状と有意に関連していた。次に、ロジスティック回帰モデルを用い、ACEを従属因子として、精神症状を含む諸要因とACEがどのように関連しているかを検討したところ、男性である場合(β=0.624、P=0.014)、年齢が若いほど(β=-0.050、P=0.034)、反社会性PDの程度が高いほど(β=0.182、P=0.065)、身体的虐待の程度は重くなる傾向が見られた。また、陰性症状が重いほど(β=0.053、P=0.032)、身体的ネグレクトの程度は重くなった。.著者らは、「統合失調症患者はACEを有する割合が高いことが分かった。ACE、精神症状、PD特性の関係は複雑だが、これをさらに検討する必要がある。縦断研究を行うことで、ACEの経時的な影響やその程度について、有益な知見が得られるのではないか。こうして得られた情報は、ACEを有する統合失調症患者に対する、より効果的な介入や治療法の開発に役立つだろう」と述べている。(HealthDay News 2023年9月20日).https://consumer.healthday.com/physician-s-briefing-schizophrenia-2665681054.html.Copyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
統合失調症患者の多くが、逆境的小児期体験(adverse childhood experience;ACE)を有しているとの研究結果が、「Frontiers in Psychiatry」に8月28日掲載された。.同済大学(中国)のLei Zhang氏らは、単一施設横断研究を行い、統合失調症患者におけるACEの経験割合とその種類を調べ、精神症状(陽性・陰性症状)およびパーソナリティー障害(personality disorder;PD)特性とACEとの関連を調査した。対象者は、上海市浦東新区精神衛生センターに通院または入院している統合失調症患者454人(平均年齢26.8±5.895歳、男性44.5%)とした。ACEの評価には、Child Trauma Questionnaire Short Form(CTQ-SF;心理的虐待、身体的虐待、性的虐待、心理的ネグレクト、身体的ネグレクトの5つの下位尺度を有し、計28項目から構成される質問紙)を用いた。精神症状は陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)、PD特性はPersonality Diagnostic Questionnaire-4+(PDQ-4+)を用いて、それぞれ評価した。.その結果、対象患者の80.8%が1つ以上のACEを有していた。最も割合が高かったACEは、身体的ネグレクト(69.8%)、心理的ネグレクト(28.2%)、心理的虐待(22.9%)だった。ACEと精神症状やPD特性との関連をピアソン相関検定により解析したところ、心理的虐待はPD特性と有意に関連していた(R2=0.03145、P=0.0001)。心理的ネグレクト(R2=0.01351、P=0.0132)および身体的ネグレクト(R2=0.01921、P=0.0031)は、陰性症状と有意に関連していた。次に、ロジスティック回帰モデルを用い、ACEを従属因子として、精神症状を含む諸要因とACEがどのように関連しているかを検討したところ、男性である場合(β=0.624、P=0.014)、年齢が若いほど(β=-0.050、P=0.034)、反社会性PDの程度が高いほど(β=0.182、P=0.065)、身体的虐待の程度は重くなる傾向が見られた。また、陰性症状が重いほど(β=0.053、P=0.032)、身体的ネグレクトの程度は重くなった。.著者らは、「統合失調症患者はACEを有する割合が高いことが分かった。ACE、精神症状、PD特性の関係は複雑だが、これをさらに検討する必要がある。縦断研究を行うことで、ACEの経時的な影響やその程度について、有益な知見が得られるのではないか。こうして得られた情報は、ACEを有する統合失調症患者に対する、より効果的な介入や治療法の開発に役立つだろう」と述べている。(HealthDay News 2023年9月20日).https://consumer.healthday.com/physician-s-briefing-schizophrenia-2665681054.html.Copyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock