新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は冠動脈に感染し、プラークの炎症を誘発することが示唆されたとの研究報告が、「Nature Cardiovascular Research」に9月28日掲載された。.米ニューヨーク大学医学部のNatalia Eberhardt氏らは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者において罹患後最大1年間にわたり、虚血性心血管疾患を合併するリスクが上昇することに着目。SARS-CoV-2が冠動脈の構造、およびそこに付着するアテローム性動脈硬化性プラークに直接的に感染するか否かを検討した。.同氏らは、死亡したCOVID-19重症患者8例(男性75%、平均年齢69.7歳)から死後に採取した冠動脈サンプルを調べた。対象者全例がアテローム動脈硬化症を罹患しており、死後に採取した冠動脈サンプル27件は、適応性内膜肥厚4件、マクロファージ浸潤を伴う病的内膜肥厚10件、線維石灰化プラーク10件、線維性プラーク3件に分類された。.解析の結果、全ての患者の全ての冠動脈病変からSARS-CoV-2スパイクタンパク質をコードするRNAが検出されたため、SARS-CoV-2は冠動脈に感染することが示された。ウイルス複製中のみ生成されるアンチセンスRNA鎖も検出されたため、SARS-CoV-2は冠動脈で複製していることも示された。また、冠動脈病変の病理学的分類や部位ごとにRNAとアンチセンス鎖の量を調べた結果、SARS-CoV-2はマクロファージを標的としており、マクロファージ浸潤の多さに一致して、血管周囲脂肪組織よりも動脈病変部に多く感染していることが示された。特に、ニューロピリン-1受容体を発現するマクロファージは冠動脈病変に浸潤しており、こうした細胞ではSARS-CoV-2の感染・増殖が認められたため、同受容体の関与が示唆された。.さらに、培養実験の結果、プラーク病変でよく見られるコレステロールを含有したマクロファージ(泡沫細胞)は、含有していないマクロファージに比べてSARS-CoV-2感染の感受性が高いことが示された。培養したマクロファージと泡沫細胞、ヒトのアテローム性動脈硬化症の血管組織片において、SARS-CoV-2は強力な炎症反応を誘導し、心血管イベントの誘因となるさまざまなサイトカインを分泌させた。.著者らは、本研究の限界として、併存疾患のある少数の高齢者を対象としており、2021年5月までのパンデミック初期のウイルス株のみに関連している点を指摘している。しかし、そのうえで「COVID-19におけるアテローム性動脈硬化症のある冠動脈の感染と急性心血管合併症との間の機序的な関連として、SARS-CoV-2に感染したプラークのマクロファージと泡沫細胞による組織化された炎症亢進反応の重要性が示された」と結論付けている。.なお、1人の著者は、研究室が複数の製薬企業から研究費の助成を受けていることを開示している。(HealthDay News 2023年10月5日).https://consumer.healthday.com/severe-sars-cov-2-appears-to-infect-coronary-vessels-2665775505.html.Copyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は冠動脈に感染し、プラークの炎症を誘発することが示唆されたとの研究報告が、「Nature Cardiovascular Research」に9月28日掲載された。.米ニューヨーク大学医学部のNatalia Eberhardt氏らは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者において罹患後最大1年間にわたり、虚血性心血管疾患を合併するリスクが上昇することに着目。SARS-CoV-2が冠動脈の構造、およびそこに付着するアテローム性動脈硬化性プラークに直接的に感染するか否かを検討した。.同氏らは、死亡したCOVID-19重症患者8例(男性75%、平均年齢69.7歳)から死後に採取した冠動脈サンプルを調べた。対象者全例がアテローム動脈硬化症を罹患しており、死後に採取した冠動脈サンプル27件は、適応性内膜肥厚4件、マクロファージ浸潤を伴う病的内膜肥厚10件、線維石灰化プラーク10件、線維性プラーク3件に分類された。.解析の結果、全ての患者の全ての冠動脈病変からSARS-CoV-2スパイクタンパク質をコードするRNAが検出されたため、SARS-CoV-2は冠動脈に感染することが示された。ウイルス複製中のみ生成されるアンチセンスRNA鎖も検出されたため、SARS-CoV-2は冠動脈で複製していることも示された。また、冠動脈病変の病理学的分類や部位ごとにRNAとアンチセンス鎖の量を調べた結果、SARS-CoV-2はマクロファージを標的としており、マクロファージ浸潤の多さに一致して、血管周囲脂肪組織よりも動脈病変部に多く感染していることが示された。特に、ニューロピリン-1受容体を発現するマクロファージは冠動脈病変に浸潤しており、こうした細胞ではSARS-CoV-2の感染・増殖が認められたため、同受容体の関与が示唆された。.さらに、培養実験の結果、プラーク病変でよく見られるコレステロールを含有したマクロファージ(泡沫細胞)は、含有していないマクロファージに比べてSARS-CoV-2感染の感受性が高いことが示された。培養したマクロファージと泡沫細胞、ヒトのアテローム性動脈硬化症の血管組織片において、SARS-CoV-2は強力な炎症反応を誘導し、心血管イベントの誘因となるさまざまなサイトカインを分泌させた。.著者らは、本研究の限界として、併存疾患のある少数の高齢者を対象としており、2021年5月までのパンデミック初期のウイルス株のみに関連している点を指摘している。しかし、そのうえで「COVID-19におけるアテローム性動脈硬化症のある冠動脈の感染と急性心血管合併症との間の機序的な関連として、SARS-CoV-2に感染したプラークのマクロファージと泡沫細胞による組織化された炎症亢進反応の重要性が示された」と結論付けている。.なお、1人の著者は、研究室が複数の製薬企業から研究費の助成を受けていることを開示している。(HealthDay News 2023年10月5日).https://consumer.healthday.com/severe-sars-cov-2-appears-to-infect-coronary-vessels-2665775505.html.Copyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock