統合失調症の遺伝的リスク因子といくつかの心血管疾患(CVD)の遺伝的リスク因子、特に喫煙やBMIとでは、バリアントの多くが重複していたが、統合失調症と喫煙では同じ方向性、統合失調症とBMIでは逆の方向性が見られたとする研究結果が、「American Journal of Psychiatry」に9月27日掲載された。.統合失調症患者では、CVDリスクが高いことと喫煙率が高いことが知られている一方、BMIが低いことは統合失調症のリスク因子であるとする報告もある。オスロ大学(ノルウェー)のLinn Rødevand氏らは、統合失調症とCVDに関するゲノムワイド関連解析(GWAS)の要約データを使用して、統合失調症とCVDの間に共通する遺伝的な要素があるかを検討した。.統合失調症のGWASデータはPsychiatric Genomics Consortiumにより、統合失調症患者5万3,386人と統合失調症のない対照7万7,258人(全て欧州系)が含まれていた。CVDについて用いたのは欧州系の人における、CVDリスクを示すCVDの「表現型」に関するGWASデータで、その中に含まれていたのは、BMI(N=79万5,640人)、BMIで調整したウェスト/ヒップ比(WHR;N=69万4,649人)、2型糖尿病(N=23万1,426人)、脂質〔中性脂肪(TG)、HDLコレステロール(HDL-C)、LDLコレステロール(LDL-C)、総コレステロール(TC);N=132万16人)、収縮期血圧(SBP)および拡張期血圧(DBP)(N=74万5,820人)、喫煙開始(定期的喫煙の指標として;N=123万2,091人)、1日喫煙本数(N=33万7,334人)、および冠動脈疾患(CAD;N=33万2,477人)についてのデータであった。.Bivariate causal mixture model(二変量因果関係混合モデル;MiXeR)を適用し、統合失調症とCVDの各「表現型」とが共有するバリアントの総数を推定した。次いで、共有遺伝子座の発見力を高めるべくconjunctional false discovery rate(condFDR;0.05未満で関連が有意とした)を用い、共有遺伝子座をピンポイントで特定した。.その結果、MiXeRにより、統合失調症に影響を及ぼす9,600個のバリアントのうち、8,600個(90%)は喫煙開始に、8,100個(84%)はBMIにも関連することが明らかになった。その他のCVD「表現型」との重複はこれより少なく、SBPで2,400個、DBPで1,700個、2型糖尿病で1,600個、HDL-Cで1,400個、TGで1,200個、LDL-Cで300個、TCで300個、WHRで1,200個、CADで500個だった。.統合失調症とCVDの各「表現型」との間で共有されるこれらのバリアントの相関関係をMiXeRで推定したところ、統合失調症と喫煙開始、1日喫煙本数、LDL-C、TC、HDL-C、CAD、およびWHRとの相関は中程度で正であったが〔共有バリアント内での相関係数(rgs)は、同順で、0.20、0.36、0.30、0.40、0.15、0.17、0.29〕、統合失調症とBMI、2型糖尿病との相関は負であった(rgsは同順で、−0.17、−0.13)。CVDのその他の「表現型」との相関は、ほぼゼロに近かった。.統合失調症とCVD「表現型」との間で共有される遺伝子座として計825カ所が特定された(BMIで304、WHRで193、喫煙開始で293、SBPで294、DBPで259、2型糖尿病で147、脂質で471、CADで35カ所)。統合失調症とCVD「表現型」とが共有する遺伝子座における一塩基多型の効果の方向性がどれほど一致するかを見たところ、BMIとの共有遺伝子座では34.5%と方向性の一致度は低かった(方向性は逆)のに対し、喫煙開始では68.9%、1日あたりの喫煙量では62.8%と高かった(方向性は同じ)。その他は、TGで47.2%、HDL-Cで55.6%、LDL-Cで51.3%、TCで53.5%、SBPで47.6%、DBPで47.9%、WHRで52.3%、2型糖尿病で46.9%、CADで54.3%といずれも50%程度だった(方向性が同じものと逆のものが半々に混在)。.著者らは、「統合失調症と、CVDのリスク因子、特にBMIと喫煙との間では、多くのバリアントが共通していることが明らかになった。統合失調症患者のニコチン依存傾向が強いことは、一部は遺伝により説明できると思われるし、またいくつかの共有遺伝子座は、肥満を抑制する方向に働くようである」と述べている。.なお、2人の著者が、CorTechs Labs、Human Longevity and the Mohn Medical Imaging and Visualization Center、General Electric Healthcare、Janssen、Lundbeck、Sunovion、Cortechs.aiとの利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2023年9月29日).https://www.healthday.com/healthpro-news/cardiovascular-diseases/physician-s-briefing-schizophrenia-2665749695.html.Copyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
統合失調症の遺伝的リスク因子といくつかの心血管疾患(CVD)の遺伝的リスク因子、特に喫煙やBMIとでは、バリアントの多くが重複していたが、統合失調症と喫煙では同じ方向性、統合失調症とBMIでは逆の方向性が見られたとする研究結果が、「American Journal of Psychiatry」に9月27日掲載された。.統合失調症患者では、CVDリスクが高いことと喫煙率が高いことが知られている一方、BMIが低いことは統合失調症のリスク因子であるとする報告もある。オスロ大学(ノルウェー)のLinn Rødevand氏らは、統合失調症とCVDに関するゲノムワイド関連解析(GWAS)の要約データを使用して、統合失調症とCVDの間に共通する遺伝的な要素があるかを検討した。.統合失調症のGWASデータはPsychiatric Genomics Consortiumにより、統合失調症患者5万3,386人と統合失調症のない対照7万7,258人(全て欧州系)が含まれていた。CVDについて用いたのは欧州系の人における、CVDリスクを示すCVDの「表現型」に関するGWASデータで、その中に含まれていたのは、BMI(N=79万5,640人)、BMIで調整したウェスト/ヒップ比(WHR;N=69万4,649人)、2型糖尿病(N=23万1,426人)、脂質〔中性脂肪(TG)、HDLコレステロール(HDL-C)、LDLコレステロール(LDL-C)、総コレステロール(TC);N=132万16人)、収縮期血圧(SBP)および拡張期血圧(DBP)(N=74万5,820人)、喫煙開始(定期的喫煙の指標として;N=123万2,091人)、1日喫煙本数(N=33万7,334人)、および冠動脈疾患(CAD;N=33万2,477人)についてのデータであった。.Bivariate causal mixture model(二変量因果関係混合モデル;MiXeR)を適用し、統合失調症とCVDの各「表現型」とが共有するバリアントの総数を推定した。次いで、共有遺伝子座の発見力を高めるべくconjunctional false discovery rate(condFDR;0.05未満で関連が有意とした)を用い、共有遺伝子座をピンポイントで特定した。.その結果、MiXeRにより、統合失調症に影響を及ぼす9,600個のバリアントのうち、8,600個(90%)は喫煙開始に、8,100個(84%)はBMIにも関連することが明らかになった。その他のCVD「表現型」との重複はこれより少なく、SBPで2,400個、DBPで1,700個、2型糖尿病で1,600個、HDL-Cで1,400個、TGで1,200個、LDL-Cで300個、TCで300個、WHRで1,200個、CADで500個だった。.統合失調症とCVDの各「表現型」との間で共有されるこれらのバリアントの相関関係をMiXeRで推定したところ、統合失調症と喫煙開始、1日喫煙本数、LDL-C、TC、HDL-C、CAD、およびWHRとの相関は中程度で正であったが〔共有バリアント内での相関係数(rgs)は、同順で、0.20、0.36、0.30、0.40、0.15、0.17、0.29〕、統合失調症とBMI、2型糖尿病との相関は負であった(rgsは同順で、−0.17、−0.13)。CVDのその他の「表現型」との相関は、ほぼゼロに近かった。.統合失調症とCVD「表現型」との間で共有される遺伝子座として計825カ所が特定された(BMIで304、WHRで193、喫煙開始で293、SBPで294、DBPで259、2型糖尿病で147、脂質で471、CADで35カ所)。統合失調症とCVD「表現型」とが共有する遺伝子座における一塩基多型の効果の方向性がどれほど一致するかを見たところ、BMIとの共有遺伝子座では34.5%と方向性の一致度は低かった(方向性は逆)のに対し、喫煙開始では68.9%、1日あたりの喫煙量では62.8%と高かった(方向性は同じ)。その他は、TGで47.2%、HDL-Cで55.6%、LDL-Cで51.3%、TCで53.5%、SBPで47.6%、DBPで47.9%、WHRで52.3%、2型糖尿病で46.9%、CADで54.3%といずれも50%程度だった(方向性が同じものと逆のものが半々に混在)。.著者らは、「統合失調症と、CVDのリスク因子、特にBMIと喫煙との間では、多くのバリアントが共通していることが明らかになった。統合失調症患者のニコチン依存傾向が強いことは、一部は遺伝により説明できると思われるし、またいくつかの共有遺伝子座は、肥満を抑制する方向に働くようである」と述べている。.なお、2人の著者が、CorTechs Labs、Human Longevity and the Mohn Medical Imaging and Visualization Center、General Electric Healthcare、Janssen、Lundbeck、Sunovion、Cortechs.aiとの利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2023年9月29日).https://www.healthday.com/healthpro-news/cardiovascular-diseases/physician-s-briefing-schizophrenia-2665749695.html.Copyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock