うつ病を併発している糖尿病患者では、抗うつ薬による治療を受けると死亡リスクが3分の1以上低減することが、新たな研究により示された。研究を実施した長庚大学(台湾)医学部教授のVincent Chin-Hung Chen氏らは、「研究結果は、糖尿病患者におけるうつ病の検査と治療の必要性を浮き彫りにするものだ」としている。研究の詳細は「Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism」7月2日オンライン版に掲載された。研究では、2000年以降に台湾で新たに糖尿病(1型、2型)およびうつ病と診断された患者5万3,412人を対象に2013年まで、死亡した患者で平均7年間、生存患者で平均10年間追跡。併存疾患や年齢、性、糖尿病の重症度などの因子を調整して、糖尿病患者の死亡リスクに抗うつ薬が与える影響を分析した。対象者のうち、抗うつ薬を使用しているのは約5万人であった。.その結果、抗うつ薬服用者では非服用者に比べ、死亡リスクが35%減少することが分かった。また、死亡リスクの減少率は抗うつ薬の種類により異なるが、モノアミン酸化酵素阻害薬の一種である可逆性モノアミン酸化酵素A阻害薬(RIMA)でのみ、死亡リスクが約50%高かったことも明らかになった。台湾では、RIMAは1種類(Moclobemide、日本国内未発売)のみ承認されている。Chen氏は、RIMAを使用している人で死亡リスクが高い理由について「明確になっていない」としながらも、「RIMAがうつ病の重症度が高い患者や他の薬剤が奏効しない人に処方されることと関連しているのでは」との見方を示している。.なぜ、抗うつ薬が死亡リスク低減につながるのか。Chen氏らは、「今回の研究は観察研究で、因果関係を示すものではない」と断りを入れた上で、「抗うつ薬に自殺リスクを低下させる可能性があることや、患者の気分を向上させ、糖尿病管理の向上につながる可能性があることは過去の研究でも示唆されている」と説明している。また、抗うつ薬は体内の炎症を抑制するほか、血流を良くすることで血栓形成を予防している可能性もあり、そうした作用が心疾患などの疾患リスクを低減している可能性についても触れている。.米ニューヨーク大学ランゴン・ヘルスのAmanda Spray氏は、「うつ病は、健康的な食生活や運動などの健康的な生活習慣だけでなく、自己管理や服薬遵守にも影響を与える。今回の研究結果は、心身の健康がいかにつながりあっているかを示す新たな例であり、理にかなっている」と語る。.なお、米疾病対策センター(CDC)によると、糖尿病の人は糖尿病のない人に比べ、うつ病リスクが2~3倍に上るが、未治療であることが多い。CDCの推定では、米国の糖尿病患者の50~75%はうつ病の治療を受けていないとされている。(HealthDay News 2019年7月3日).https://consumer.healthday.com/mental-health-information-25/antidepressants-news-723/easing-depression-can-bring-longer-life-to-people-with-diabetes-748035.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.
うつ病を併発している糖尿病患者では、抗うつ薬による治療を受けると死亡リスクが3分の1以上低減することが、新たな研究により示された。研究を実施した長庚大学(台湾)医学部教授のVincent Chin-Hung Chen氏らは、「研究結果は、糖尿病患者におけるうつ病の検査と治療の必要性を浮き彫りにするものだ」としている。研究の詳細は「Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism」7月2日オンライン版に掲載された。研究では、2000年以降に台湾で新たに糖尿病(1型、2型)およびうつ病と診断された患者5万3,412人を対象に2013年まで、死亡した患者で平均7年間、生存患者で平均10年間追跡。併存疾患や年齢、性、糖尿病の重症度などの因子を調整して、糖尿病患者の死亡リスクに抗うつ薬が与える影響を分析した。対象者のうち、抗うつ薬を使用しているのは約5万人であった。.その結果、抗うつ薬服用者では非服用者に比べ、死亡リスクが35%減少することが分かった。また、死亡リスクの減少率は抗うつ薬の種類により異なるが、モノアミン酸化酵素阻害薬の一種である可逆性モノアミン酸化酵素A阻害薬(RIMA)でのみ、死亡リスクが約50%高かったことも明らかになった。台湾では、RIMAは1種類(Moclobemide、日本国内未発売)のみ承認されている。Chen氏は、RIMAを使用している人で死亡リスクが高い理由について「明確になっていない」としながらも、「RIMAがうつ病の重症度が高い患者や他の薬剤が奏効しない人に処方されることと関連しているのでは」との見方を示している。.なぜ、抗うつ薬が死亡リスク低減につながるのか。Chen氏らは、「今回の研究は観察研究で、因果関係を示すものではない」と断りを入れた上で、「抗うつ薬に自殺リスクを低下させる可能性があることや、患者の気分を向上させ、糖尿病管理の向上につながる可能性があることは過去の研究でも示唆されている」と説明している。また、抗うつ薬は体内の炎症を抑制するほか、血流を良くすることで血栓形成を予防している可能性もあり、そうした作用が心疾患などの疾患リスクを低減している可能性についても触れている。.米ニューヨーク大学ランゴン・ヘルスのAmanda Spray氏は、「うつ病は、健康的な食生活や運動などの健康的な生活習慣だけでなく、自己管理や服薬遵守にも影響を与える。今回の研究結果は、心身の健康がいかにつながりあっているかを示す新たな例であり、理にかなっている」と語る。.なお、米疾病対策センター(CDC)によると、糖尿病の人は糖尿病のない人に比べ、うつ病リスクが2~3倍に上るが、未治療であることが多い。CDCの推定では、米国の糖尿病患者の50~75%はうつ病の治療を受けていないとされている。(HealthDay News 2019年7月3日).https://consumer.healthday.com/mental-health-information-25/antidepressants-news-723/easing-depression-can-bring-longer-life-to-people-with-diabetes-748035.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.