混雑した道は、そこを通り抜けるだけでも心の落ち着きを失うことがある。しかし影響はそれにとどまらず、交通騒音によって高血圧や糖尿病の発症リスクが高まる可能性があるという研究結果が報告された。詳細は、「Journal of the American Heart Association」3月9日オンライン版に掲載された。この研究は、カナダのトロントに住む35~100歳の一般市民100万人以上を15年間にわたって追跡したもの。その結果、交通騒音の平均値が10デシベル上昇するごとに、糖尿病の新規発症が8%、高血圧が2%増加するという関連が認められた。糖尿病や高血圧のリスク上昇との関連が報告されている大気汚染の影響や社会経済的因子で調整しても、リスクは高いままだった。また、これらの関係は、男性より女性、高齢者より若年者(60歳未満)でより強かった。.交通騒音と疾患リスクの関係を示唆するデータは、過去にもいくつか報告されている。例えば、2013年に「Environmental Health Perspectives」に発表されたデンマークでの研究では、交通騒音と糖尿病リスクの関連が示された。また2017年には、車や電車、飛行機の騒音への曝露と、重度高血圧のリスクに関連があることが「Environmental Research」に報告された。.今回発表された論文の上席著者でありカナダ保健省の研究員であるHong Chen氏は、「騒音への曝露はさまざまなストレス反応を引き起こし、いわゆるストレスホルモンの上昇を招く。そのため長期にわたって騒音に繰り返しさらされている場合、インスリン抵抗性などの代謝異常を生じる可能性がある」と述べている。.また、今回の研究には関与していない、米シンシナティ大学心臓・肺・血管研究所所長のRichard C. Becker氏は、「これらの結果は多くの点で重要な知見である」と評している。その理由の一つに、現在、世界中で都市部に居住する人口が増えていることを指摘する。確かに国連の調査によると、世界の都市人口は1950年の7億5,100万人から、2018年には42億人へと増加している。現在、世界の半数以上の人々が都市部に住み、その割合は2055年までに68%に増加することが見込まれている。.Becker氏によると、「音を気にせず眠る人でも、睡眠サイクルの中で脳にとり重要な時間帯の睡眠が騒音で阻害されると悪影響が及ぶことも考えられる」という。同氏は「建築基準や都市計画、騒音の地面吸収技術など、交通騒音を最小限に抑えるさまざまな取り組みが必要になるだろう」とし、個人的な対策としては「居住地選びの際に騒音レベルに留意し、既に騒音がひどい地域に住んでいるのであれば、窓を二重サッシにするなどの消音対策をとったり、耳栓やノイズキャンセリング機能のあるヘッドフォンを使用するなどして、騒音への曝露を最小限にすべき」と提言している。.Chen氏は、「騒音による健康への影響と、実社会において騒音を緩和することの効果を明らかにするため、さらなる研究が必要だ」とした上で、「住民の騒音曝露を減らすための公衆衛生上の取り組みによって社会環境が改善し、より健康的な都市が実現するだろう」と述べている。(American Heart Association News 2020年3月9日).https://consumer.healthday.com/diabetes-information-10/misc-diabetes-news-181/aha-news-traffic-noise-might-increase-diabetes-blood-pressure-risks-755574.html.American Heart Association News covers heart and brain health. Not all views expressed in this story reflect the official position of the American Heart Association. Copyright is owned or held by the American Heart Association, Inc., and all rights are reserved. If you have questions or comments about this story, please email editor@heart.org.
混雑した道は、そこを通り抜けるだけでも心の落ち着きを失うことがある。しかし影響はそれにとどまらず、交通騒音によって高血圧や糖尿病の発症リスクが高まる可能性があるという研究結果が報告された。詳細は、「Journal of the American Heart Association」3月9日オンライン版に掲載された。この研究は、カナダのトロントに住む35~100歳の一般市民100万人以上を15年間にわたって追跡したもの。その結果、交通騒音の平均値が10デシベル上昇するごとに、糖尿病の新規発症が8%、高血圧が2%増加するという関連が認められた。糖尿病や高血圧のリスク上昇との関連が報告されている大気汚染の影響や社会経済的因子で調整しても、リスクは高いままだった。また、これらの関係は、男性より女性、高齢者より若年者(60歳未満)でより強かった。.交通騒音と疾患リスクの関係を示唆するデータは、過去にもいくつか報告されている。例えば、2013年に「Environmental Health Perspectives」に発表されたデンマークでの研究では、交通騒音と糖尿病リスクの関連が示された。また2017年には、車や電車、飛行機の騒音への曝露と、重度高血圧のリスクに関連があることが「Environmental Research」に報告された。.今回発表された論文の上席著者でありカナダ保健省の研究員であるHong Chen氏は、「騒音への曝露はさまざまなストレス反応を引き起こし、いわゆるストレスホルモンの上昇を招く。そのため長期にわたって騒音に繰り返しさらされている場合、インスリン抵抗性などの代謝異常を生じる可能性がある」と述べている。.また、今回の研究には関与していない、米シンシナティ大学心臓・肺・血管研究所所長のRichard C. Becker氏は、「これらの結果は多くの点で重要な知見である」と評している。その理由の一つに、現在、世界中で都市部に居住する人口が増えていることを指摘する。確かに国連の調査によると、世界の都市人口は1950年の7億5,100万人から、2018年には42億人へと増加している。現在、世界の半数以上の人々が都市部に住み、その割合は2055年までに68%に増加することが見込まれている。.Becker氏によると、「音を気にせず眠る人でも、睡眠サイクルの中で脳にとり重要な時間帯の睡眠が騒音で阻害されると悪影響が及ぶことも考えられる」という。同氏は「建築基準や都市計画、騒音の地面吸収技術など、交通騒音を最小限に抑えるさまざまな取り組みが必要になるだろう」とし、個人的な対策としては「居住地選びの際に騒音レベルに留意し、既に騒音がひどい地域に住んでいるのであれば、窓を二重サッシにするなどの消音対策をとったり、耳栓やノイズキャンセリング機能のあるヘッドフォンを使用するなどして、騒音への曝露を最小限にすべき」と提言している。.Chen氏は、「騒音による健康への影響と、実社会において騒音を緩和することの効果を明らかにするため、さらなる研究が必要だ」とした上で、「住民の騒音曝露を減らすための公衆衛生上の取り組みによって社会環境が改善し、より健康的な都市が実現するだろう」と述べている。(American Heart Association News 2020年3月9日).https://consumer.healthday.com/diabetes-information-10/misc-diabetes-news-181/aha-news-traffic-noise-might-increase-diabetes-blood-pressure-risks-755574.html.American Heart Association News covers heart and brain health. Not all views expressed in this story reflect the official position of the American Heart Association. Copyright is owned or held by the American Heart Association, Inc., and all rights are reserved. If you have questions or comments about this story, please email editor@heart.org.