糖尿病前症(糖尿病予備群)では心臓病のリスクが高く、睡眠時無呼吸を併発していることも多いが、持続的気道陽圧法「CPAP」と呼ばれる方法で睡眠時無呼吸を治療すると、心臓病のリスクを下げられるかもしれない。その可能性を示唆する研究結果が、「Journal of the American Heart Association」に10月1日掲載された。米シカゴ大学のEsra Tasali氏らが報告した。糖尿病前症は、血糖値が正常より高いものの糖尿病と見なされるほどではなく、糖尿病に特異的な合併症はほぼ起こらない。しかし、糖尿病に非特異的な合併症(糖尿病で起こりやすいが糖尿病でなくても起こる病気)、具体的には主に心血管疾患は、血糖値が正常な人よりもリスクが高い。また、糖尿病前症の人には肥満が多く、肥満は睡眠時無呼吸のリスク因子である。.睡眠時無呼吸もまた心血管疾患のリスク因子の一つとして知られている。睡眠時無呼吸に対しては、マスクから気道に空気を送ることで呼吸が止まらないようにするCPAPでの治療が行われる。しかしCPAPによる心血管疾患のリスク低下効果については、これまでの研究結果が一貫しておらず実証されていない。.Tasali氏らが行った研究は、睡眠時無呼吸のある糖尿病前症の人にCPAP治療を行い、心血管疾患のリスクを表す心拍数や交感神経活動の指標(ノルアドレナリン濃度)などの変化を調べたもの。対象者は39人で全員が45歳以上、BMI25以上であり、男性が66%、肥満が72%で、82%が中等度から高度の閉塞性睡眠時無呼吸だった。また、46%は日中の過度の眠気を訴えていた。.試験は2週間にわたり実験室で行われ、CPAP群(26人)は毎晩CPAPを施行。他の13人はプラセボ群とし、「症状改善に有効」として手渡されたプラセボを就寝前に服用した。プラセボ群のうち1人が研究期間中に脱落し、最終的な解析は38人で行われた。.解析の結果、CPAP群はプラセボ群に比べて、昼間の安静時心拍数が有意に低下していた〔群間差-4.1拍/分(95%信頼区間-6.5~-1.7)、P=0.002)〕。また、ノルアドレナリン濃度もCPAP群で大きく低下し、群間に有意差が認められた(P=0.02).Tasali氏は、「この違いは重要だ。安静時の心拍数が1拍/分下がるだけでも、心臓病や死亡リスクの低下につながる」とし、本研究で認められた4拍/分を上回る差は、一般的な運動療法から得られる効果に匹敵する」と解説。また、睡眠中の治療が昼間の心拍数にも有意な影響を及ぼし得ることは「心血管系にとって画期的なメリット」と述べている。.現在、世界中で約10億人が閉塞性睡眠時無呼吸に罹患しており、その60%以上が糖尿病前症または糖尿病。そして睡眠時無呼吸の人の約80%は診断されずにいるという。加えて著者らは、「糖尿病や心血管系に問題を抱える人は、新型コロナウイルス感染症に対して脆弱であり、心血管疾患のリスクを抑制することの重要性が、これまで以上に高まっている。その点でも本研究はタイムリーだ」としている。また、論文の筆頭著者でマギル大学(カナダ)のSushmita Pamidi氏は、「本研究の結果は、糖代謝異常とともに睡眠の問題を抱えている人は、睡眠時無呼吸のスクリーニングを受ける必要があることを示している」と語っている。(HealthDay News 2020年10月7日).https://consumer.healthday.com/sleep-disorder-information-33/apnea-sleep-problems-news-624/sleep-apnea-aid-eases-heart-problems-in-people-with-prediabetes-761861.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.