母乳育児の新たなメリットが報告された。たとえ出生後早期の限られた期間であっても母乳で育てられた子どもは、3歳に成長した時点で血圧へ良い影響が認められるとのことだ。マクマスター大学(カナダ)のKozeta Miliku氏らの研究で、詳細は「Journal of the American Heart Association(JAHA)」に7月21日掲載された。 論文の筆頭著者であるMiliku氏はこの研究を、「出生後早期の母乳育児と幼児期の血圧との関連を詳細に調査した初の研究」と位置づけ、「初乳と呼ばれる出産後初期の母乳を少量でも摂取した乳児は、母乳で育てられた期間や代替ミルクで育てられた期間にかかわりなく、3歳時点の血圧が良好だった」と研究結果を総括している。また、「幼少期の良好な血圧が、成人期の健康につながる可能性もある」としている。 母乳、特に出産直後の初乳には、乳児の免疫、成長などに役立つ成分が存在し、代替ミルクより優れている。これまでの研究でも、母乳による育児と成人期の心臓病リスクの低さとの関連が報告されている。ただ、母乳育児をどの程度続けるとそのメリットを得られるのかは明らかでない。 Miliku氏らはこの研究に、カナダで行われている新生児コホート研究「CHILD研究」のデータを用いた。2008~2012年に登録された妊娠中の女性から、在胎期間34週を超えて生まれた新生児のうち、母乳育児の状況と3歳時点の血圧データがそろっている2,382人の子どもを解析対象とした。 ほぼ全て(2,333人、97.9%)の子どもが母乳で育てられていた。そのうち98人(4.2%)は、出生後入院期間中の1日以内のみ授乳されていた。一方、母乳育児期間が全くなかった子どもは49人(2.1%)だった。なお、母乳育児されていた子どものうち、78%は母乳育児期間が6カ月以上であり、62%は3カ月以上にわたって母乳のみで育てられていた。 3歳時点の血圧は、母乳育児期間が全くない子どもは103/60mmHgであり、母乳育児されていた子どもの99/58mmHgより高かった。また授乳が1日以内の子どもの3歳時点の血圧は99/57mmHgであり、母乳育児されていた子ども全体の平均と同レベルだった。 血圧に影響を及ぼし得る因子(出生時体重、在胎週数、母親の年齢・教育歴、妊娠中の喫煙、人種/民族、母親および子どものBMI、子どもの性別など)で調整後も、母乳育児期間の有無による収縮期血圧(SBP)の群間差が存在した。具体的には、母乳育児期間が全くない子どもに対して、母乳育児されていた子どものSBPは-3.47mmHg(95%信頼区間-6.14~-0.80)、授乳が1日以内の子どもも-4.24mmHg(同-7.45~-1.04)であり、いずれも有意だった。なお、母乳育児されていた子どもの間で、母乳育児の期間、および、母乳のみで育てられていた期間による用量反応関係は認められなかった。 論文の上席著者でありCHILD研究副主任である同大学のMeghan Azad氏は、「母乳育児には多くのメリットがあることは、これまでに十分明らかにされている。例えば、乳児期の下痢につながる感染症、喘息や肥満などの慢性疾患に対して保護的に働くことが知られている」と解説。その上で、「われわれの研究は、幼児期の血圧に対しては、ごく短期間の母乳育児でも有益であることを示唆しており、また初乳の重要性を示す知見と言える」と述べている。同氏はまた、「母乳育児の推進を強力にサポートすべきであり、特に出生後の最初の数日間が重要なことを認識すべきだ」と強調している。(HealthDay News 2021年7月21日).https://consumer.healthday.com/b-7-21-breastfed-ba….Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.