若年者が心臓の健康を維持しようとするなら、筋肉をつけるより過剰な体脂肪を減らすことを優先すべきであるとする研究論文が、「PLOS Medicine」に9月9日掲載された。論文の筆頭著者である英ブリストル大学のJoshua Bell氏は、「若いうちに筋肉を増やすことが心臓血管系の問題を引き起こすわけではないが、心臓の健康面のメリットを得たいのであれば、まずは体脂肪を減らすことだ」と述べている。 この研究は、1991年4月1日~1992年12月31日に英国で生まれた子どもとその親を対象とする縦断研究のデータを用いて行われた。3,227人(男性39%)を対象として、10、13、18、25歳時点で体組成を評価。加えて25歳時点で血液検査を行い、コレステロール、トリグリセライド、アポリポ蛋白B、血糖値、インスリン、クレアチニン、C反応性蛋白、分岐鎖アミノ酸など228項目にわたる心血管代謝関連マーカーを測定。その測定結果と発育段階の体組成との関連を検討した。 解析の結果、思春期から若年成人期に体脂肪が減った人は、25歳時点で高血糖や炎症、高LDL(悪玉)-コレステロール血症などの心血管リスク因子を有している割合が、同じ期間に筋肉量が増えていた人よりも有意に少ないことが分かった。Bell氏は、「心臓病のリスク因子を減らす上で、体脂肪を減らすことは筋肉を増やすことよりもはるかに重要であるように思われる。LDL-コレステロール値などについては、体脂肪減少が筋肉量増加より5倍も保護的に働くようだ」と語っている。 一方、同氏によると、筋肉量については「13~18歳までの青年期に増えた場合にのみ、心臓の健康面へのメリットがあるように思われる。成長と発育の著しいこの時期には、ある程度、筋肉を増やす努力が必要かもしれない」とのことだ。そして18歳以降に筋肉を増やしても、心臓の健康面のメリットは弱まるという。 結論としてBell氏は、「筋肉は身体活動の維持には重要であり、そのほかにも多くの健康上のメリットがある。また立派な筋肉を身にまとっていることは、それ自体称賛に値する。しかし、心臓病のリスクを抑えることに関しては、体脂肪を増やさないことの方が優先される」とまとめている。 米テキサス大学サウスウェスタン・メディカル・センターのLona Sandon氏は、この研究報告に対し、「体脂肪の減少を狙うのではなく、初めから過剰な体脂肪が蓄積しないようにすることを目指すべきだ」とコメントしている。「健康的な食事と身体活動習慣を人生の早い段階で身に付けさせて、小児期と青年期を通して健康的な体重を維持することで、心臓病のリスク因子をより遠ざけることが可能になる」と同氏は解説。さらに、「より早い段階、つまりは乳児期や母親の子宮内にいる時期の環境が、成人後の心臓病リスク因子に影響を及ぼすことも考えられる」と述べている。 Sandon氏は、「妊娠を考えている親に対して、健康な状態での妊娠と健康的な食事スタイルを教育することに焦点を当てるべきではないか。また母乳での育児や、乳幼児期に年齢に適した量の健康的な食事を与えることが重要だ」と強調。ただし、子どもの場合は大人とは異なる注意点もある。具体的には、「子どもは成長のためにエネルギーを必要としている。摂取量を制限することは、一般的には良い考えではない」とのことだ。そして同氏は、「食事制限の代わりに運動やスポーツを奨励すべきだろう。活動的な子どもは、そのような体に良い習慣を成人期になっても維持している可能性が高い」としている。(HealthDay News 2021年9月17日).https://consumer.healthday.com/9-16-what-helps-you….Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.
若年者が心臓の健康を維持しようとするなら、筋肉をつけるより過剰な体脂肪を減らすことを優先すべきであるとする研究論文が、「PLOS Medicine」に9月9日掲載された。論文の筆頭著者である英ブリストル大学のJoshua Bell氏は、「若いうちに筋肉を増やすことが心臓血管系の問題を引き起こすわけではないが、心臓の健康面のメリットを得たいのであれば、まずは体脂肪を減らすことだ」と述べている。 この研究は、1991年4月1日~1992年12月31日に英国で生まれた子どもとその親を対象とする縦断研究のデータを用いて行われた。3,227人(男性39%)を対象として、10、13、18、25歳時点で体組成を評価。加えて25歳時点で血液検査を行い、コレステロール、トリグリセライド、アポリポ蛋白B、血糖値、インスリン、クレアチニン、C反応性蛋白、分岐鎖アミノ酸など228項目にわたる心血管代謝関連マーカーを測定。その測定結果と発育段階の体組成との関連を検討した。 解析の結果、思春期から若年成人期に体脂肪が減った人は、25歳時点で高血糖や炎症、高LDL(悪玉)-コレステロール血症などの心血管リスク因子を有している割合が、同じ期間に筋肉量が増えていた人よりも有意に少ないことが分かった。Bell氏は、「心臓病のリスク因子を減らす上で、体脂肪を減らすことは筋肉を増やすことよりもはるかに重要であるように思われる。LDL-コレステロール値などについては、体脂肪減少が筋肉量増加より5倍も保護的に働くようだ」と語っている。 一方、同氏によると、筋肉量については「13~18歳までの青年期に増えた場合にのみ、心臓の健康面へのメリットがあるように思われる。成長と発育の著しいこの時期には、ある程度、筋肉を増やす努力が必要かもしれない」とのことだ。そして18歳以降に筋肉を増やしても、心臓の健康面のメリットは弱まるという。 結論としてBell氏は、「筋肉は身体活動の維持には重要であり、そのほかにも多くの健康上のメリットがある。また立派な筋肉を身にまとっていることは、それ自体称賛に値する。しかし、心臓病のリスクを抑えることに関しては、体脂肪を増やさないことの方が優先される」とまとめている。 米テキサス大学サウスウェスタン・メディカル・センターのLona Sandon氏は、この研究報告に対し、「体脂肪の減少を狙うのではなく、初めから過剰な体脂肪が蓄積しないようにすることを目指すべきだ」とコメントしている。「健康的な食事と身体活動習慣を人生の早い段階で身に付けさせて、小児期と青年期を通して健康的な体重を維持することで、心臓病のリスク因子をより遠ざけることが可能になる」と同氏は解説。さらに、「より早い段階、つまりは乳児期や母親の子宮内にいる時期の環境が、成人後の心臓病リスク因子に影響を及ぼすことも考えられる」と述べている。 Sandon氏は、「妊娠を考えている親に対して、健康な状態での妊娠と健康的な食事スタイルを教育することに焦点を当てるべきではないか。また母乳での育児や、乳幼児期に年齢に適した量の健康的な食事を与えることが重要だ」と強調。ただし、子どもの場合は大人とは異なる注意点もある。具体的には、「子どもは成長のためにエネルギーを必要としている。摂取量を制限することは、一般的には良い考えではない」とのことだ。そして同氏は、「食事制限の代わりに運動やスポーツを奨励すべきだろう。活動的な子どもは、そのような体に良い習慣を成人期になっても維持している可能性が高い」としている。(HealthDay News 2021年9月17日).https://consumer.healthday.com/9-16-what-helps-you….Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.