過剰な食塩摂取は高血圧の一因として広く知られているが、アトピー性皮膚炎(AD)のリスクにも関係がある可能性を示すデータが報告された。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のKatrina Abuabara氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Dermatology」に6月5日掲載された。同氏は、「塩分制限は、ADに対する費用対効果が高くリスクの低い治療手段となり得るのではないか」と話している。 食習慣とADの関連性はよく分かっていないが、ADの経過が患者によって異なる理由の一部に食習慣が関与している可能性があり、Abuabara氏らは特に食塩摂取量に着目して横断的研究を行った。解析対象は、英国の一般住民対象大規模疫学研究「UKバイオバンク」に参加している37~73歳の成人21万5,832人(平均年齢56.52±8.06歳、女性54.3%)。スポット尿検体を用いて、年齢、BMI、尿中カリウム・ナトリウム排泄量、尿中クレアチニンを基に24時間尿中ナトリウム排泄量を推定したところ、平均3.01±0.82g/日だった。また、この対象のうち1万839人(5.0%)が、ADと診断されていた。 年齢、性別、人種/民族、教育歴、社会的格差(タウンゼント剥奪指数)を調整した多変量ロジスティック回帰分析の結果、24時間尿中ナトリウム排泄量が多いことが、ADのオッズ比の有意な上昇と関連していた〔排泄量が1g多いごとの調整オッズ比(aOR)1.11(95%信頼区間1.07~1.14)〕。また、疾患活動性の高いAD〔同様の解析でaOR1.16(1.05~1.28)〕、およびADの重症度の高さ〔同aOR1.11(1.07~1.15)〕との有意な関連も認められた。 この検討とは別に、米国国民健康栄養調査の参加者1万3,014人のデータを用いた解析でも、食事思い出し法で把握された食塩摂取量とAD有病率との有意な関連が確認された〔1日当たりの食塩摂取量が1g多いごとにaOR1.22(1.01~1.47)〕。 この結果について著者らは、「本研究は因果関係を証明可能なデザインで行われたものではない。例えば、塩分過多の人は、皮膚に負担を与える可能性のある食品を食塩とともに摂取している可能性もある」とし、慎重な解釈を求めている。一方でAbuabara氏は、ジャーナル発のリリースの中で、「食塩摂取量とADリスクに関連があるという事実は、今回の研究結果が全くの新発見ということではない。1世紀以上も前に、AD治療のために食塩摂取量を減らすことが推奨されていたことがある」と述べている。また著者らは、「過剰な食塩摂取によって、皮膚のナトリウム蓄積量が多くなることが既に報告されている。われわれの研究結果は、その知見と関連があるのかもしれない」と話している。 ADを惹起する可能性のある炎症プロセスにおいて、ナトリウムが何らかの役割を果たしているとする考え方もあるが、そのメカニズムには不明点が少なくない。しかし研究者らは、「ナトリウムとAD発症との間にあるメカニズムがどのようなものであれ、人々が食塩摂取量を控えることは悪いことではない」と述べている。Abuabara氏も、「大半の米国人は食塩を取り過ぎており、減塩が推奨される。既存の治療法による疾患コントロールが困難なAD患者を前にして、有効なアドバイスがもう残されていないような状況であれば、なおさら減塩を勧めるべきだ」と語っている。(HealthDay News 2024年6月5日) https://www.healthday.com/health-news/skin-health/high-salt-diets-might-raise-eczema-risk Copyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
過剰な食塩摂取は高血圧の一因として広く知られているが、アトピー性皮膚炎(AD)のリスクにも関係がある可能性を示すデータが報告された。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のKatrina Abuabara氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Dermatology」に6月5日掲載された。同氏は、「塩分制限は、ADに対する費用対効果が高くリスクの低い治療手段となり得るのではないか」と話している。 食習慣とADの関連性はよく分かっていないが、ADの経過が患者によって異なる理由の一部に食習慣が関与している可能性があり、Abuabara氏らは特に食塩摂取量に着目して横断的研究を行った。解析対象は、英国の一般住民対象大規模疫学研究「UKバイオバンク」に参加している37~73歳の成人21万5,832人(平均年齢56.52±8.06歳、女性54.3%)。スポット尿検体を用いて、年齢、BMI、尿中カリウム・ナトリウム排泄量、尿中クレアチニンを基に24時間尿中ナトリウム排泄量を推定したところ、平均3.01±0.82g/日だった。また、この対象のうち1万839人(5.0%)が、ADと診断されていた。 年齢、性別、人種/民族、教育歴、社会的格差(タウンゼント剥奪指数)を調整した多変量ロジスティック回帰分析の結果、24時間尿中ナトリウム排泄量が多いことが、ADのオッズ比の有意な上昇と関連していた〔排泄量が1g多いごとの調整オッズ比(aOR)1.11(95%信頼区間1.07~1.14)〕。また、疾患活動性の高いAD〔同様の解析でaOR1.16(1.05~1.28)〕、およびADの重症度の高さ〔同aOR1.11(1.07~1.15)〕との有意な関連も認められた。 この検討とは別に、米国国民健康栄養調査の参加者1万3,014人のデータを用いた解析でも、食事思い出し法で把握された食塩摂取量とAD有病率との有意な関連が確認された〔1日当たりの食塩摂取量が1g多いごとにaOR1.22(1.01~1.47)〕。 この結果について著者らは、「本研究は因果関係を証明可能なデザインで行われたものではない。例えば、塩分過多の人は、皮膚に負担を与える可能性のある食品を食塩とともに摂取している可能性もある」とし、慎重な解釈を求めている。一方でAbuabara氏は、ジャーナル発のリリースの中で、「食塩摂取量とADリスクに関連があるという事実は、今回の研究結果が全くの新発見ということではない。1世紀以上も前に、AD治療のために食塩摂取量を減らすことが推奨されていたことがある」と述べている。また著者らは、「過剰な食塩摂取によって、皮膚のナトリウム蓄積量が多くなることが既に報告されている。われわれの研究結果は、その知見と関連があるのかもしれない」と話している。 ADを惹起する可能性のある炎症プロセスにおいて、ナトリウムが何らかの役割を果たしているとする考え方もあるが、そのメカニズムには不明点が少なくない。しかし研究者らは、「ナトリウムとAD発症との間にあるメカニズムがどのようなものであれ、人々が食塩摂取量を控えることは悪いことではない」と述べている。Abuabara氏も、「大半の米国人は食塩を取り過ぎており、減塩が推奨される。既存の治療法による疾患コントロールが困難なAD患者を前にして、有効なアドバイスがもう残されていないような状況であれば、なおさら減塩を勧めるべきだ」と語っている。(HealthDay News 2024年6月5日) https://www.healthday.com/health-news/skin-health/high-salt-diets-might-raise-eczema-risk Copyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock