24歳以下の若年女性を対象に米国で行われた研究から、糖尿病ではなく前糖尿病状態でも、妊娠した際の有害転帰のリスクが高まる可能性が示された。米マウントサイナイ・アイカーン医科大学のKatharine McCarthy氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に9月24日掲載された。 糖尿病女性患者の妊娠では有害転帰のリスクが高いことが知られているが、糖尿病の診断基準を満たすほどではない軽度の高血糖状態である「前糖尿病」と、妊娠有害転帰との関連は明らかになっていない。McCarthy氏らは、2009~2017年のニューヨーク市での周産期医療データを用いた後ろ向きコホート研究を行い、この点を検討した。 上記期間中に、妊娠前の糖尿病診断の記録がなく、HbA1c検査を1回以上受けていた24歳以下の女性1万4,302人(平均年齢22.10±1.55歳)を解析対象とした。HbA1cが5.7以上6.5%未満を前糖尿病と定義したところ、2,895人(20.2%)がこれに該当した。主要評価項目は初回妊娠時の妊娠糖尿病とし、副次評価項目は、妊娠高血圧症候群、早産、帝王切開、巨大児とした。 交絡因子(年齢、人種/民族、喫煙・飲酒習慣、教育歴、収入、妊娠前のBMIカテゴリー、高血圧、妊娠前の最後のHbA1c測定からの時間経過)を調整後、妊娠前に前糖尿病であった人は、正常血糖の人に比べて妊娠糖尿病のリスクが2倍以上高かった(調整相対リスク〔aRR〕2.21〔95%信頼区間1.91~2.56〕)。また、妊娠高血圧症候群(aRR1.18〔同1.03~1.35〕)や早産(aRR1.18〔1.02~1.37〕)のリスクもやや高かった。 一方、帝王切開(aRR1.09〔0.99~1.20〕)や巨大児(aRR1.13〔0.93~1.37〕)のリスクは、正常血糖の人と有意差がなかった。なお、ROC解析の結果、妊娠糖尿病の発症を予測する最適なHbA1cのカットオフ値は、5.6%(感度47.9%、特異度74.6%)であることが分かった。 この結果を基に、論文の筆頭著者であるMcCarthy氏は、「若年女性の前糖尿病を無視すると、妊娠有害転帰を回避するための機会を逃してしまうことになる」と警鐘を鳴らしている。また同氏らの研究チームは、より具体的に、「若年女性に対して採血検査を行い、前糖尿病の兆候を見つけ出すことが、彼女たちが後年、妊娠した際に起こり得る問題から、彼女たちを守ることにつながるのではないか」と、妊娠前の女性を対象とするスクリーニングの必要性を述べている。 なお、前糖尿病をHbA1c5.7~6.5%、または、経口ブドウ糖負荷試験の空腹時血糖値が100~125mg/dLもしくは負荷2時間後血糖値が140~199mg/dLに該当する場合として定義すると、米国の12~19歳の若年層における前糖尿病の有病率は、1999~2018年の間に約2倍へと増加し、現在ではほぼ3人に1人が該当する可能性のあることが、研究背景として記されている。(HealthDay News 2024年9月24日) https://www.healthday.com/health-news/diabetes/prediabetes-in-teens-could-raise-odds-for-complicated-pregnancies-later Copyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
24歳以下の若年女性を対象に米国で行われた研究から、糖尿病ではなく前糖尿病状態でも、妊娠した際の有害転帰のリスクが高まる可能性が示された。米マウントサイナイ・アイカーン医科大学のKatharine McCarthy氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に9月24日掲載された。 糖尿病女性患者の妊娠では有害転帰のリスクが高いことが知られているが、糖尿病の診断基準を満たすほどではない軽度の高血糖状態である「前糖尿病」と、妊娠有害転帰との関連は明らかになっていない。McCarthy氏らは、2009~2017年のニューヨーク市での周産期医療データを用いた後ろ向きコホート研究を行い、この点を検討した。 上記期間中に、妊娠前の糖尿病診断の記録がなく、HbA1c検査を1回以上受けていた24歳以下の女性1万4,302人(平均年齢22.10±1.55歳)を解析対象とした。HbA1cが5.7以上6.5%未満を前糖尿病と定義したところ、2,895人(20.2%)がこれに該当した。主要評価項目は初回妊娠時の妊娠糖尿病とし、副次評価項目は、妊娠高血圧症候群、早産、帝王切開、巨大児とした。 交絡因子(年齢、人種/民族、喫煙・飲酒習慣、教育歴、収入、妊娠前のBMIカテゴリー、高血圧、妊娠前の最後のHbA1c測定からの時間経過)を調整後、妊娠前に前糖尿病であった人は、正常血糖の人に比べて妊娠糖尿病のリスクが2倍以上高かった(調整相対リスク〔aRR〕2.21〔95%信頼区間1.91~2.56〕)。また、妊娠高血圧症候群(aRR1.18〔同1.03~1.35〕)や早産(aRR1.18〔1.02~1.37〕)のリスクもやや高かった。 一方、帝王切開(aRR1.09〔0.99~1.20〕)や巨大児(aRR1.13〔0.93~1.37〕)のリスクは、正常血糖の人と有意差がなかった。なお、ROC解析の結果、妊娠糖尿病の発症を予測する最適なHbA1cのカットオフ値は、5.6%(感度47.9%、特異度74.6%)であることが分かった。 この結果を基に、論文の筆頭著者であるMcCarthy氏は、「若年女性の前糖尿病を無視すると、妊娠有害転帰を回避するための機会を逃してしまうことになる」と警鐘を鳴らしている。また同氏らの研究チームは、より具体的に、「若年女性に対して採血検査を行い、前糖尿病の兆候を見つけ出すことが、彼女たちが後年、妊娠した際に起こり得る問題から、彼女たちを守ることにつながるのではないか」と、妊娠前の女性を対象とするスクリーニングの必要性を述べている。 なお、前糖尿病をHbA1c5.7~6.5%、または、経口ブドウ糖負荷試験の空腹時血糖値が100~125mg/dLもしくは負荷2時間後血糖値が140~199mg/dLに該当する場合として定義すると、米国の12~19歳の若年層における前糖尿病の有病率は、1999~2018年の間に約2倍へと増加し、現在ではほぼ3人に1人が該当する可能性のあることが、研究背景として記されている。(HealthDay News 2024年9月24日) https://www.healthday.com/health-news/diabetes/prediabetes-in-teens-could-raise-odds-for-complicated-pregnancies-later Copyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock