正規の医薬品が不足していたため、薬局において配合した製品(非正規品)の流通が認められていたGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)について、米食品医薬品局(FDA)は不足状態が解消されたと判断し、5月23日にその流通を停止する措置を取った。これにより、一部の専門家はGLP-1RAが再び不足する懸念があるとしている。 CNNの報道によるとFDAは、GLP-1RAのセマグルチド(オゼンピック、ウゴービ)およびチルゼパチド(マンジャロ、ゼップバウンド)について、薬局で製造しFDAの承認なしに販売される非正規品を、今後は合法的に製造・販売できないこととした。チルゼパチドについては流通可能な期限が今年の3月で既に過ぎており、セマグルチドについても5月22日がその最終日だった。 GLP-1RAは当初、血糖降下薬として発売されたが、肥満改善薬としても認可されて以降、需要が急速に拡大し、供給不足状態の医薬品リスト(drug shortage list)に掲載されていた。FDAでは「医薬品が不足している場合、米国連邦食品・医薬品・化粧品法の要件を満たすことを条件に、その医薬品の配合剤を調製できることがある」としている。これに基づきこれまで、セマグルチドやチルゼパチドを薬局で調剤し販売することが例外的に認められていた。また、そのような非正規品は通常、正規品よりも手頃な価格で流通していた。 CNNによると、GLP-1RA非正規品を供給していた企業の1社であるOlympia Pharmaceuticals社だけで、週に7万人以上に対して非正規品を販売していた。同社の最高財務責任者であるJosh Fritzler氏は、「流通許可期間の終了までに、できるだけ多くの患者に対応できるように努力している」とCNNの取材に対して語っている。また同社製品を使用していたテキサス州のMichelle Pierceさん(25歳)は、「非正規品のセマグルチドのおかげで高血糖が改善し、減量効果も得られた。しかしそれが供給されなくなると、私にはほかに選択肢がない。正規品のコストを自己負担し治療を継続するのは到底無理だ」と話している。 一方、非正規品についてはその安全性を不安視する声もある。米ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのJody Dushay氏は、「FDAの管理下にない非正規品は安心感が全くなく、そのような医薬品の処方に伴う責任を負いたくない」とCNNに述べている。同氏は非正規のGLP-1RAの使用を支持しないものの、今回のFDAの措置により、正規品の供給が再度窮迫するのではないかと懸念している。 大規模な調剤薬局を傘下に持つ団体(Outsourcing Facilities Association)の会長であるLee Rosebush氏も、「流通許可期間の終了とともに、患者および医療提供者が必要な医薬品を入手できなくなる事態が発生するのではないかと心配している」とCNNに対して話している。また前出のPierceさんは、「自分自身では6カ月分の非正規品を備蓄しているが、ほかの患者が心配だ。非正規品は間もなく手に入らなくなると知らずに、最近それを使い始めた患者もいるのではないか」と語っている。(HealthDay News 2025年5月23日) https://www.healthday.com/health-news/weight-loss/fda-halts-sale-of-off-brand-ozempic-and-other-glp-1-drugs Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock