2型糖尿病と慢性腎臓病(CKD)を併発している患者に対して、SGLT2阻害薬(SGLT2-i)と非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(non-steroidal MRA)という2種類の薬を併用すると、腎臓の保護効果がより高まることを示すデータが報告された。米インディアナ大学のRajiv Agarwal氏らの研究によるもので、詳細は「The New England Journal of Medicine(NEJM)」に6月5日掲載されるとともに、欧州腎臓学会議(ERA2025、6月4~7日、オーストリア・ウィーン)で発表された。 SGLT2-iは、体内の糖の排泄を増やすことで血糖値を下げる薬で、腎臓や心臓に対する保護効果もある。またnon-steroidal MRAは、腎臓や心臓の炎症を抑えるような働きを持っている。発表された研究では、これら二つの薬を併用することで、それぞれを単独で使うよりも腎臓に対する保護効果が高まるか否かが検討された。 2型糖尿病とCKDを併発している患者800人(平均年齢66.5±10.3歳、女性24.8%、eGFR54.2±17.1mL/分/1.73m2)を、SGLT2-i(エンパグリフロジン)とプラセボを服用する群、non-steroidal MRA(フィネレノン)とプラセボを服用する群、エンパグリフロジンとフィネレノンを服用する群の3群に割り付け。180日間での尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)の変化を比較した。 研究開始時点ではこの3群間の患者背景に有意差はなく、UACRは中央値579(四分位範囲292〜1,092)だった。なお、腎臓が健康であれば尿中にアルブミンは排泄されないため、UACRの値の大きさは腎臓が受けているダメージの強さを表し、UACRの低下は腎臓に対して保護的な作用が働いていることを表す。 180日間でのUACRの変化は、エンパグリフロジン単独群が29%の低下、フィネレノン単独群は32%の低下だったのに対して、両剤併用群では52%低下していた。両剤併用群の低下幅はエンパグリフロジン単独群より32%大きく、フィネレノン単独群より29%大きかった。なお、予期しない有害事象はいずれの群においても認めなかった。 Agarwal氏は、「両剤併用群の患者の70%が、米国糖尿病学会(ADA)が推奨するUACR30%以上の減少という目標を達成した。どちらか一方のみの薬剤より、併用の方がUACR抑制という点で優れていると言える。心不全や高血圧などの他の慢性疾患では、病状の進行に合わせて段階的に処方薬を増やしていくという従来のアプローチから、より早期に併用療法を行うように変化してきているが、CKDに対してもそれと同じ戦略が有効かもしれない」と述べている。また、「UACRは、CKDと心血管疾患の転帰に対する重要な予測因子であるため、本研究の結果は、臨床における意思決定の場面で非常に大きな意味を持ってくる」と付け加えている。(HealthDay News 2025年6月9日) https://www.healthday.com/health-news/diabetes/combo-drug-treatment-more-effective-for-kidney-disease-in-type-2-diabetics Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock