ほとんど分解されず環境中に長期間存在し続けるため、「永遠の化学物質」と呼ばれているPFAS(ペルフルオロアルキル化合物やポリフルオロアルキル化合物)への胎児期の曝露と、出生後の小児期から思春期の血圧上昇との関連を示すデータが報告された。米ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生学大学院のZeyu Li氏らの研究の結果であり、詳細は「Journal of the American Heart Association(JAHA)」に6月12日掲載された。同氏は、「PFASが及ぼす潜在的な有害性は、生後何年も経過してから初めて明らかになる可能性がある」と述べている。 米国環境保護庁(EPA)は、PFASは飲料水のほか、ファストフードの包装、テフロン加工の調理器具、家具や衣類、化粧品など、幅広い製品に含まれているとしている。また環境研究グループの調査によると、PFASはそれを含む物を摂取したり呼吸で吸い込んだりすることで体内に取り込まれ、99%の米国人の体内に存在しているという。 Li氏らの研究では、子どもを出産後24~72時間に母親から採取した血液中のPFAS濃度を測定。その値と、子どもの医療記録から把握された血圧との関連を検討した。3歳以上13歳未満では血圧が同年齢の子どもの90パーセンタイル以上、13歳以上18歳未満では120/80mmHg以上の場合に「血圧高値」と定義した。 1,094人の子どもを中央値12年(四分位範囲9~15年)追跡し、1万3,404件のデータを解析した結果、母親のPFAS濃度が高いほど子どもの収縮期血圧が高いという関連が浮かび上がった。また、これらの関連性は、子どもの性別や発達段階などにより異なっていた。例えば男子では、母親の血液中のペルフルオロヘプタンスルホン酸という物質の濃度が2倍になるごとに、6~12歳で血圧高値のリスクが9%、13~18歳では17%高かった。 Li氏は、「本研究の報告が、より多くの研究者が思春期以降の子どもを追跡調査するきっかけになることを期待している。過去の研究は追跡期間が幼児期または思春期前で終わっているものが少なくなかった。それに対してわれわれの研究は、胎児期のPFAS曝露による健康への影響が、思春期以降に初めて現れる可能性があることを示している」と話している。なお、研究者らは、本研究は観察研究であるため、PFASと子どもの血圧上昇との直接的な因果関係について述べることはできず、あくまで関連性を示すのみであることを指摘している。 PFASは既に環境中に豊富に存在している。そのため残念ながら、母親が努力しても曝露を避けることが難しい。なるべくPFASフリーと表示されている製品を使ったり、水道水をろ過した上で利用したりするといったことで曝露量を抑えることはできるものの、研究者らは、根本的な解決のために規制が必要だと考えている。 論文の上席著者である米ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのMingyu Zhang氏は、「特に妊娠中や小児期のPFAS曝露を減らすために、一般消費財に使われるPFASを段階的に制限していき、水道水のモニタリングと規制を強化するという政策レベルの行動が必要だ。これらは個人の努力で解決できる問題ではない」としている。(HealthDay News 2025年6月13日) https://www.healthday.com/health-news/child-health/forever-chemicals-linked-to-elevated-childhood-blood-pressure Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock/Halfpoint
ほとんど分解されず環境中に長期間存在し続けるため、「永遠の化学物質」と呼ばれているPFAS(ペルフルオロアルキル化合物やポリフルオロアルキル化合物)への胎児期の曝露と、出生後の小児期から思春期の血圧上昇との関連を示すデータが報告された。米ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生学大学院のZeyu Li氏らの研究の結果であり、詳細は「Journal of the American Heart Association(JAHA)」に6月12日掲載された。同氏は、「PFASが及ぼす潜在的な有害性は、生後何年も経過してから初めて明らかになる可能性がある」と述べている。 米国環境保護庁(EPA)は、PFASは飲料水のほか、ファストフードの包装、テフロン加工の調理器具、家具や衣類、化粧品など、幅広い製品に含まれているとしている。また環境研究グループの調査によると、PFASはそれを含む物を摂取したり呼吸で吸い込んだりすることで体内に取り込まれ、99%の米国人の体内に存在しているという。 Li氏らの研究では、子どもを出産後24~72時間に母親から採取した血液中のPFAS濃度を測定。その値と、子どもの医療記録から把握された血圧との関連を検討した。3歳以上13歳未満では血圧が同年齢の子どもの90パーセンタイル以上、13歳以上18歳未満では120/80mmHg以上の場合に「血圧高値」と定義した。 1,094人の子どもを中央値12年(四分位範囲9~15年)追跡し、1万3,404件のデータを解析した結果、母親のPFAS濃度が高いほど子どもの収縮期血圧が高いという関連が浮かび上がった。また、これらの関連性は、子どもの性別や発達段階などにより異なっていた。例えば男子では、母親の血液中のペルフルオロヘプタンスルホン酸という物質の濃度が2倍になるごとに、6~12歳で血圧高値のリスクが9%、13~18歳では17%高かった。 Li氏は、「本研究の報告が、より多くの研究者が思春期以降の子どもを追跡調査するきっかけになることを期待している。過去の研究は追跡期間が幼児期または思春期前で終わっているものが少なくなかった。それに対してわれわれの研究は、胎児期のPFAS曝露による健康への影響が、思春期以降に初めて現れる可能性があることを示している」と話している。なお、研究者らは、本研究は観察研究であるため、PFASと子どもの血圧上昇との直接的な因果関係について述べることはできず、あくまで関連性を示すのみであることを指摘している。 PFASは既に環境中に豊富に存在している。そのため残念ながら、母親が努力しても曝露を避けることが難しい。なるべくPFASフリーと表示されている製品を使ったり、水道水をろ過した上で利用したりするといったことで曝露量を抑えることはできるものの、研究者らは、根本的な解決のために規制が必要だと考えている。 論文の上席著者である米ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのMingyu Zhang氏は、「特に妊娠中や小児期のPFAS曝露を減らすために、一般消費財に使われるPFASを段階的に制限していき、水道水のモニタリングと規制を強化するという政策レベルの行動が必要だ。これらは個人の努力で解決できる問題ではない」としている。(HealthDay News 2025年6月13日) https://www.healthday.com/health-news/child-health/forever-chemicals-linked-to-elevated-childhood-blood-pressure Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock/Halfpoint