減量目的で使われているGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)の実臨床における有効性は、治験段階で認められたほどには高くないようだ。米クリーブランドクリニックのHamlet Gasoyan氏らの研究によるもので、詳細は「Obesity」に6月10日掲載された。 GLP-1RAは、血糖降下作用とともに、食欲抑制作用などを介して減量効果を発揮する薬。セマグルチド(商品名はウゴービ)やチルゼパチド(同ゼップバウンド)などがあり、それらが承認される根拠となった治験では、15~21%の体重減が報告されていた。しかし今回の研究では、実際に処方された患者の1年後の体重変化は、平均9%弱の減少にとどまっていた。研究者によると、実臨床では治療を中止する人や、治験で使われた用量より少ない量が処方されているケースが多いことが、有効性低下の理由として考えられるという。 この研究では、クリーブランドクリニックでGLP-1RAによる肥満治療を受けている患者7,881人を対象に追跡調査が行われた。そのうち6,109人にセマグルチドが処方され、1,772人にはチルゼパチドが処方されていた。1年後の体重減少率は8.7%だった。ただし、早期(3カ月以内)に治療を中止した患者の体重減少率は3.6%だったのに対し、後期(3カ月を超え12カ月以内)に中止した患者では6.8%減少。さらに、治療を継続していた患者は11.9%減少しており、治療期間が減量効果に影響を及ぼしている可能性が示された。 また、低用量(セマグルチドは1mg以下、チルゼパチドでは7.5mg以下)が処方されていた患者が81%を占めていた。高用量が処方されて、かつその治療を継続していた患者では、体重減少率がセマグルチドで13.7%、チルゼパチドでは18.0%に達していた。 全体的に見ると、治療を継続していること、高用量が処方されていること、セマグルチドでなくチルゼパチドが処方されていること、そして患者が女性であることが、1年後に体重が10%以上減少していることと有意に関連していた。なお、患者が治療を中止する理由としては、副作用や薬剤の品不足、薬剤費、医療保険の問題などが多く認められた。 このほかに本研究によって、GLP-1RAの糖尿病予防効果も見いだされた。肥満治療開始時点で前糖尿病状態だった895人のうち、治療を継続した患者の67.9%は血糖値が正常化した。また治療を早期に中止した患者でも33.1%、後期に中止した患者では41.0%が正常化していた。反対に2型糖尿病に進展したのは、治療を継続した患者の1.7%、治療を早期に中止した患者の6.5%、後期に中止した患者の4.4%だった。 Gasoyan氏は、「2型糖尿病は肥満者に最も多い合併症の一つであり、肥満に伴う糖尿病の予防は非常に重要だ。われわれの研究は、GLP-1RAによる肥満治療を開始後、特に早期に治療を中止した場合に、体重と血糖管理の双方において、それらの改善効果が限られたものになってしまうことを示している」と述べている。なお、現在、GLP-1RAによる肥満治療を患者が中止してしまう理由を、より詳細に把握するための追跡研究が続けられている。(HealthDay News 2025年6月11日) https://www.healthday.com/health-news/weight-loss/real-world-results-for-glp-1-drugs-underwhelm-study-says Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
減量目的で使われているGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)の実臨床における有効性は、治験段階で認められたほどには高くないようだ。米クリーブランドクリニックのHamlet Gasoyan氏らの研究によるもので、詳細は「Obesity」に6月10日掲載された。 GLP-1RAは、血糖降下作用とともに、食欲抑制作用などを介して減量効果を発揮する薬。セマグルチド(商品名はウゴービ)やチルゼパチド(同ゼップバウンド)などがあり、それらが承認される根拠となった治験では、15~21%の体重減が報告されていた。しかし今回の研究では、実際に処方された患者の1年後の体重変化は、平均9%弱の減少にとどまっていた。研究者によると、実臨床では治療を中止する人や、治験で使われた用量より少ない量が処方されているケースが多いことが、有効性低下の理由として考えられるという。 この研究では、クリーブランドクリニックでGLP-1RAによる肥満治療を受けている患者7,881人を対象に追跡調査が行われた。そのうち6,109人にセマグルチドが処方され、1,772人にはチルゼパチドが処方されていた。1年後の体重減少率は8.7%だった。ただし、早期(3カ月以内)に治療を中止した患者の体重減少率は3.6%だったのに対し、後期(3カ月を超え12カ月以内)に中止した患者では6.8%減少。さらに、治療を継続していた患者は11.9%減少しており、治療期間が減量効果に影響を及ぼしている可能性が示された。 また、低用量(セマグルチドは1mg以下、チルゼパチドでは7.5mg以下)が処方されていた患者が81%を占めていた。高用量が処方されて、かつその治療を継続していた患者では、体重減少率がセマグルチドで13.7%、チルゼパチドでは18.0%に達していた。 全体的に見ると、治療を継続していること、高用量が処方されていること、セマグルチドでなくチルゼパチドが処方されていること、そして患者が女性であることが、1年後に体重が10%以上減少していることと有意に関連していた。なお、患者が治療を中止する理由としては、副作用や薬剤の品不足、薬剤費、医療保険の問題などが多く認められた。 このほかに本研究によって、GLP-1RAの糖尿病予防効果も見いだされた。肥満治療開始時点で前糖尿病状態だった895人のうち、治療を継続した患者の67.9%は血糖値が正常化した。また治療を早期に中止した患者でも33.1%、後期に中止した患者では41.0%が正常化していた。反対に2型糖尿病に進展したのは、治療を継続した患者の1.7%、治療を早期に中止した患者の6.5%、後期に中止した患者の4.4%だった。 Gasoyan氏は、「2型糖尿病は肥満者に最も多い合併症の一つであり、肥満に伴う糖尿病の予防は非常に重要だ。われわれの研究は、GLP-1RAによる肥満治療を開始後、特に早期に治療を中止した場合に、体重と血糖管理の双方において、それらの改善効果が限られたものになってしまうことを示している」と述べている。なお、現在、GLP-1RAによる肥満治療を患者が中止してしまう理由を、より詳細に把握するための追跡研究が続けられている。(HealthDay News 2025年6月11日) https://www.healthday.com/health-news/weight-loss/real-world-results-for-glp-1-drugs-underwhelm-study-says Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock