健康増進のために推奨されることの多いウォーキングだが、その効果を期待するなら、速度を重視した方が良いかもしれない。より速く歩くことで、より大きな健康効果を得られる可能性を示唆するデータが報告された。米ヴァンダービルト大学のLili Liu氏らの研究の結果であり、詳細は「American Journal of Preventive Medicine」に7月29日掲載された。 ウォーキングと健康アウトカムとの関係を調べたこれまでの研究は、主に白人や中~高所得者を対象に行われてきたが、本研究では主に低所得者や黒人に焦点が当てられた。データ解析の結果、1日15分の早歩きで死亡リスクが約20%低下することが示された。この結果を基にLiu氏は、「早歩きを含む、より高強度の有酸素運動を日常生活に取り入れた方が良い」と勧めている。 この研究では、2002~2009年に米国南東部12州で募集された、低所得者や黒人を中心とする約8万5,000人のデータが解析された。ベースラインでは、ゆっくりした歩行(犬の散歩、職場内での歩行、軽い身体活動など)の時間、および、速い歩行(早歩き、階段を上る、運動など)の1日当たりの平均時間が調査されていた。死亡に関する情報は2022年末まで収集され、中央値16.7年(範囲2.0~20.8)の追跡期間中に、2万6,862人の死亡が記録されていた。 年齢、性別、人種、教育歴、婚姻状況、雇用状況、世帯収入、保険加入状況などを調整後、全死亡(あらゆる原因による死亡)のリスクは1日15分の早歩きにより19%低下し(ハザード比〔HR〕0.81〔95%信頼区間0.75~0.87〕)、1日30分の早歩きでは23%低下していた(HR0.77〔同0.73~0.80〕)。それに対してゆっくりした歩行は、1日3時間未満では全死亡リスクが有意に低下せず、3時間以上の場合にわずか4%のリスク低下が認められた(HR0.96〔0.91~1.00〕)。このような関連は、調整因子としてBMI、喫煙・飲酒習慣、余暇時間の身体活動量、座位行動時間、食事の質などを追加してもほぼ同様であった。 今回の研究結果は、主に中~高所得の白人を対象に行われた先行研究の結果と一致している。Liu氏はジャーナルのプレスリリースの中で、「人々の居住地の近隣に、早歩きができるような環境を整備するための計画立案と投資が必要ではないか」と述べている。 ところで、早歩きはどのようなメカニズムで健康を増進するのだろうか? 研究者らは、早歩きのような有酸素運動は、心臓のポンプ作用、酸素供給力などを高めるように働くと解説している。また、そればかりでなく、早歩きを習慣として続けることは、肥満や脂質異常症、高血圧の予防にもつながるという。 著者らは、「われわれの研究結果は、健康状態を改善するための実行可能性が高く、かつ効果的な戦略として、早歩きを推奨することの重要性を強調するものだ」と結論付けている。(HealthDay News 2025年7月29日) https://www.healthday.com/health-news/exercise-and-fitness/walking-for-health-a-faster-pace-boosts-benefits Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock