世界中の糖尿病患者の半数近くが、自分が糖尿病であることを知らずにいるとする研究結果が、「The Lancet Diabetes & Endocrinology」に9月8日掲載された。米ワシントン大学健康指標評価研究所のLauryn Stafford氏らの研究によるもので、全糖尿病患者の中で適切な血糖管理が維持されているのは5人に1人にとどまることも示されている。この研究により、世界の15歳以上の糖尿病患者の44.2%が、自身の病気を認識していないと推計された。論文の筆頭著者であるStafford氏は、「2050年までに世界の糖尿病患者数は13億人に達すると予想されている。もし、半数近くの患者が、命に関わることもある深刻な健康状態にあることに気付いていない状況がこのまま続いたとしたら、糖尿病という病気はサイレント・エピデミック(静かなる疫病)へと移行していくだろう」と述べている。さらに良くないことに、自分が糖尿病であると知っている人のうち、適切に血糖値をコントロールできている人は半数以下であることも明らかにされた。具体的には、糖尿病と診断された人の91.4%が何らかの薬を服用しているが、血糖値が適切にコントロールされているのはわずか41.6%だった。つまり、全体として、糖尿病患者のうち、血糖値をコントロールし潜在的な健康リスクを最小限に抑えられているのは、わずか21.2%に過ぎないと計算された。この現状に対して研究者らは、「糖尿病だと知らずにいたり、治療がおろそかだったりすると、合併症や早期死亡のリスクが高まる。できるだけ早い診断と適切な血糖管理が必要だ」と述べている。この研究は、2023年の世界疾病負担研究(GBD2023)のデータを用いて行われた。2023年時点で、世界の204の国や地域における糖尿病患者数は5億6100万人と推定され、各国の糖尿病診断率や治療状態に関する調査結果を統合した解析の結果、国によってそれらの状況が大きく異なることが明らかになった。特に、国民所得による格差が大きかった。糖尿病が診断されている割合が最も高いのは北米で、患者の約83%が適切に診断されていた。また、南ラテンアメリカ(80%)や西ヨーロッパ(78%)の診断率も高かった。それに対してサハラ以南の中央アフリカでは、わずか16%にとどまっていた。研究者らは、「世界保健機関(WHO)は2022年に糖尿病患者の80%が2030年までに臨床的な診断を受けられるようにするという目標を設定しているが、今回の研究結果によれば、その達成には糖尿病を発見するための健診プログラムへの投資が必要だ」としている。また、糖尿病治療薬へのアクセス、および自分の血糖値を測定できる環境の整備が、喫緊の課題だとも述べている。研究チームではさらに、「各国の保健システムは、糖尿病患者の合併症を減らすため、診断能力の向上と医療サービスの提供改善に向けた取り組みを優先し続ける必要がある」と付け加えている。(HealthDay News 2025年9月10日)https://www.healthday.com/health-news/diabetes/nearly-half-of-people-with-diabetes-unaware-of-their-illnessCopyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock