米国では重度の肥満の人が医療を求める際、差別に直面する可能性が高いことが明らかになった。重度肥満者の診察をきっぱり拒否している施設もあるという。米ノースウェスタン大学ファインバーグ医学部のTara Lagu氏らの研究によるもので、「Annals of Internal Medicine」に9月30日にレターとして掲載された。 米疾病対策センター(CDC)は、BMI40以上を重度肥満と定義している。研究者らによると、そのような重度肥満者は、重大な健康問題に直面する可能性が2~3倍高いという。それにもかかわらず過去の研究から、重度肥満者は、がん検診を含む定期的な検査や予防医療を受ける頻度が低いことが示されている。論文の上席著者であるLagu氏は、「肥満であるためにがん検診を受ける機会が減り、それによってがんの発見が遅れる可能性がある。われわれはこれまで常に、肥満者の健康転帰が良くない原因を体重そのものにあると見なしてきたが、近年は肥満者に対するケアの質の低さ、ケアの機会の不足などが、その遠因となり得ることを指摘する研究が増えている」と語っている。 Lagu氏らの研究では、ボストンやヒューストンなど米国内の四つの大都市圏にある診療所(皮膚科、内分泌科、産婦人科、整形外科、耳鼻科という五つの診療科)に対して、体重が465ポンド(約211kg)あるが歩行可能で移動に介助は必要ないという患者を装い、診察の予約を取るという覆面調査を実施した。電話の際、「受付の人が『この人は受診させるべきだ』と思わせるような危険信号、例えばがんを示唆するような症状を伝え、緊急の検査の必要性をほのめかした」と、論文の筆頭著者である同大学のMolly Hales氏は述べている。 このようにして、計300カ所のクリニックを調査した。その結果、予約することができたのは全体の59%で、41%は診察を拒否した。また、半数以上(52%)のクリニックは、重度肥満の患者に対応可能な設備が万全でないことが明らかになった。例えば、診察台や椅子の重量制限、出入り口や廊下の幅の狭さ、検査着のサイズの上限などの問題が報告された。 予約を受け付けたクリニックも、その約6分の1(16%)は予約の際に、患者にとって不名誉ともなり得る対応を取ることの了解を要求した。その内容とは、検査中には座る場所がないため立ち続ける必要がある、または体格に合う検査着がないためシーツを身にまとってもらう必要があるといったことだ。 診療科別に見ると、耳鼻科は予約できる確率が最も低く48%だった。それに対して内分泌科は最も積極的に予約を受け付け、重度肥満患者にも対応できる設備を整えていることが多かった。 Hales氏は、「われわれの調査結果はおそらく、問題の重大さを過小評価している。なぜなら、実際に予約を取ろうとする患者は、医療機関が重度肥満患者の診察に対応できるかどうかを事前に尋ねる必要があることを知らない人が多いだろうし、仮に知っていたとしても社会的偏見のために質問をためらうだろう」と述べている。なお、研究者らによると、診療環境が肥満患者に対応可能かどうかを判断するためのチェックリストが既に開発されているが、あまり活用されていないという。(HealthDay News 2025年9月30日) https://www.healthday.com/health-news/general-health/patients-with-severe-obesity-face-medical-discrimination-study-says Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock