米国で進められてきた学校給食の無償化が、子どもたちの高血圧リスクの抑制につながっているとする研究結果が、「JAMA Network Open」に9月25日掲載された。米カリフォルニア大学アーバイン校のJessica Jones-Smith氏らの研究によるものであり、無償化を始めた学校では高血圧の子どもの割合が、5年間で約11%減少したと見込まれるという。研究者らは、給食無償化による栄養状態の改善に加えて、体重に及ぼした影響が、この改善を促進した可能性が高いとしている。 論文の上席著者であるJones-Smith氏は、「給食無償化は、高血圧リスクと密接な関連のある小児肥満の減少と関連している。より健康的な食事が直接的に血圧へ好ましい影響を与えることに加えて、BMIが高い子どもが減ることに伴う間接的影響という二つの経路で、高血圧リスクが抑制されたと言える」と解説している。なお、研究者らが背景説明の中で述べているところによると、小児期の高血圧は成人期まで継続することが多く、将来的に心臓病や腎臓病のリスクを高める可能性が高いとのことだ。 米国では2010年に学校給食に対する栄養要件が強化され、低所得地域の学校に給食を無償で提供するプログラムがスタートし、これを採用する学校が増加してきている。本研究は、12州(主としてカリフォルニア州とオレゴン州)の児童・生徒の医療記録を用いた縦断的観察研究として実施された。解析対象は1,052校の4~18歳の児童・生徒15万5,778人であり、給食の無償化の開始前後で高血圧の子どもの割合の変化を求め、無償化プログラム未導入の学校での変化と比較して、差分の差(difference in differences;DD)を検討するという手法で行われた。主要評価項目は、収縮期血圧または拡張期血圧が、年齢・性別・身長に基づく90パーセンタイル以上の子どもの割合とした。 その結果、主要評価項目である高血圧の子どもの割合は、給食無償化により-2.71パーセントポイント(PP)という有意な差(DD)が生じたと計算された(95%信頼区間-5.10~-0.31〔P=0.03〕)。このDDは、高血圧の子どもの割合が5年間で約11%減少するという変化に相当する(-10.8%〔同-20.4~-1.2〕)。また、副次評価項目の一つとして設定されていた、血圧が集団全体の95パーセンタイル以上の子どもの割合についても、DDが-2.48PPと有意であった(同-4.69~-0.27〔P=0.03〕)。 論文の筆頭著者である米ワシントン大学のAnna Localio氏は、「多くの州で給食無償化の拡大を目指す法案が検討されており、われわれの研究結果は各州の政策決定に役立つ可能性がある」と述べている。一方で研究者らは、「残念ながら食糧支援プログラムが縮小される動きもあり、無料で学校給食にアクセス可能な環境が脅かされている」と指摘。Localio氏も、「学校給食無償化への資金削減は、子どもたちの健康増進にはつながらない」と語っている。(HealthDay News 2025年10月3日) https://www.healthday.com/health-news/child-health/free-school-meals-linked-to-less-high-blood-pressure-among-children Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock