これまで食卓に上ることなく捨てられてきた、野菜の皮や芯などの「野菜くず」が、近い将来、食糧生産の助けになったり、人々の健康のサポートに使われたりする可能性のあることが、新たな研究で示された。米化学会(ACS)が発行する3種類の学術誌に掲載された4報の研究論文で科学者らは、テンサイのパルプからココナッツの繊維に至るまで、幅広い食品廃棄物を農業および栄養源の貴重な素材として利用する方法を提案している。 「Journal of Agricultural and Food Chemistry」に9月15日に掲載された研究によると、テンサイ(サトウダイコン)のパルプ(砂糖を抽出した後に残る副産物)が、化学合成農薬の代替品として使える天然素材である可能性が示された。研究者らは、パルプに豊富に含まれているペクチンという繊維を、小麦の一般的な病気である「うどんこ病」に対する抵抗力を高める働きを持つ炭水化物に変えることに成功した。この方法を用いることで、合成農薬の散布量を減らすことができるという。 「ACS Omega」に9月13日に掲載された別の研究では、ヤスデによってココナッツ繊維の分解を促すことで作り出す資材が、植物の苗を育成させる際に必要な苗床の資材として広く使われているピートモスの代替になり得ることが報告された。ピートモスは脆弱な生態系から採取される希少性の高い資材で、採取に伴う環境負荷が懸念されている。新たに開発された資材は、ピーマンの苗の育成において、ピートモスと同等の性能を持つことが示された。研究者らは、この資材の利用によって、地下水の保全に重要な役割を果たすピートの使用量を減らすことができ、種苗生産の持続可能性向上に寄与できるのではないかと述べている。 1番目の報告と同じ「Journal of Agricultural and Food Chemistry」に、9月1日に掲載された別の論文では、使わずに捨てられることの多いダイコンの葉は、人々が普段食べている根よりも栄養価が高い可能性が報告されている。食物繊維および抗酸化作用を持つ生理活性物質などを豊富に含むダイコンの葉が、試験管内の研究や動物実験において、腸内細菌叢の健康をサポートすることが確認された。これらの結果から、将来的にはダイコンの葉を、腸の健康を促進する食品やサプリメントの開発に活用できる可能性があるという。 さらに、「ACS Engineering Au」に9月10日に掲載された4番目の論文では、やはり廃棄されることの多い、ビートの葉に含まれる栄養素の保存に焦点を当てている。この研究では、抗酸化作用を有するビートの葉の抽出物を、特殊な乾燥処理でマイクロ粒子として、微小なカプセルのように加工し、化粧品や食品、医薬品に利用する技術の開発が進められている。このような加工によって、抽出物の安定性を高め、かつ有効性も高められるという。(HealthDay News 2025年10月10日) https://www.healthday.com/health-news/nutrition/dont-toss-those-veggie-scraps-they-might-be-healthier-than-you-think Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock