米国では妊婦の心血管疾患(CVD)リスク因子およびCVDの有病率が上昇してきており、妊娠中や出産後にCVDの合併症を起こす女性も増加している実態が報告された。米マサチューセッツ総合病院のEmily Lau氏らの研究の結果であり、詳細は「Circulation」10月14日号に掲載された。 研究者らは背景説明の中で、妊産婦死亡の3分の1以上をCVDが占めており、CVDは妊娠を契機に発症する主要な疾患であるとしている。そしてLau氏は、「われわれの研究結果は、リアルワールドにおいて妊娠関連のCVDが増加しているという憂慮すべき傾向を示しており、妊娠前から産後にかけての期間が、妊婦に対してCVD一次予防を実施する重要な機会であることを強調している」と述べている。 この研究では、2001〜2019年にわたるプライマリケアの電子カルテデータを用いて、妊婦の妊娠時点でのCVDリスク因子とCVDの有病率、および産後1年目までの妊娠関連CVD合併症(妊娠高血圧症候群、主要心血管イベント、死亡の複合アウトカム)の発生率の推移を解析した。解析対象女性は3万8,996人(妊娠時の年齢32±5歳)で、5万6,833件の妊娠が記録されていた。 妊婦のCVDリスク因子のうち、肥満有病率は2001年の2%から2019年に16%へと増加し、高血圧は3%から12%、脂質異常症は3%から10%、糖尿病は1%から3%へと、全て有意に増加していた。また、CVDの有病率は前記期間全体では4%であり(年齢で調整すると8%)、やはり経年的に有意に増加していた。 同様に、妊娠関連CVD合併症の発生率も期間全体で8,290件(15%)であり(年齢調整後17%)、経年的に有意に増加していた。妊娠関連CVD合併症は産後よりも妊娠中に多く発生しており(8,290件中7,000件)、妊娠高血圧症候群が多数を占めていた(6,539件)。妊娠関連CVD合併症は、妊娠時点でCVDリスク因子やCVDを有している女性で多く発生していた。具体的に発生率を比較すると、高血圧の有無では23%対5%、脂質異常症の有無では13%対10%、糖尿病の有無では6%対3%、CVDの有無では10%対3%であった。 ボランティアとして米国心臓協会(AHA)会長を務めるStacey Rosen氏はこの研究報告に関連して、「CVD合併症のリスク因子の大半は、生活習慣の改善や薬の服用によって対処可能だ。しかし、多くの女性が、自分がそれらの疾患を抱えていることを知らずにいる」と指摘している。また、「妊娠前から出産後までは、心臓の健康に良い行動を起こす貴重な機会であり、その行動が将来にわたってCVDの予防と長期的な健康維持に役立つ」と付け加えている。なお、同氏は本研究に関与していない。(HealthDay News 2025年10月9日) https://www.healthday.com/health-news/pregnancy/increasing-number-of-pregnancies-affected-by-heart-complications Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock