老化やフレイル、そして糖尿病のリスクが、お尻(臀部)の形に現れているとする研究結果が、北米放射線学会年次総会(RSNA 2025、11月30日~12月4日、シカゴ)で発表された。研究者によると、臀部にある大臀筋に起きる萎縮や炎症は、座っている時間の長さ、脂肪の蓄積の程度などの影響で変化し、糖尿病やフレイルのリスクを反映している可能性があるという。また、この変化のパターンは、男性と女性で異なるとのことだ。 発表者の1人である英ウェストミンスター大学のLouise Thomas氏は、「大臀筋は人体で最も大きな筋肉の一つであり、代謝の健康に重要な役割を果たしている可能性がある」と研究背景を解説。実際、これまでにも臀部の形と疾患との関連が研究されてきた。ただし、共同発表者である同大学のMarjola Thanaj氏は、「筋肉の大きさや脂肪の量を測定していた過去の研究とは異なり、われわれは形状を3Dで評価する技術を使用して、筋肉の付き方の変化を精密に把握した」と、従来の研究にはなかった本研究の特色を語っている。 この研究では、英国の一般住民対象に行われている大規模疫学研究「UKバイオバンク」のデータベースが解析に用いられた。6万1,290件のMRIスキャン画像と、研究参加者の身体測定値、疾患罹患状況、ライフスタイルに関する詳細な情報を収集。全体として86項目の変数を評価し、臀部の筋肉の形状の変化とそれらの関連性が、時間の経過によりどのように推移するのかを追跡した。 Thanaj氏によると、解析の結果、「激しい身体活動の実施状況や握力を基に『フィットネスレベルが高い』と評価された人は、大臀筋が大きいことが分かった。一方で、加齢、フレイル、座位時間の長さは、筋肉の厚さ(筋厚)が薄く変化することと関連していた」という。また、フレイルと判定された男性は、同じくフレイルと判定された女性に比べて、大臀筋の筋厚がより薄くなっていることが示されたとしている。 さらに、2型糖尿病の男性は臀部の筋厚が顕著に薄くなっているのに対し、同じく2型糖尿病であっても女性の場合は筋肉量が多いという差が認められた。この差はおそらく、組織内への脂肪の浸潤の有無による違いと考えられるとのことだ。なお、研究者によると、本研究で示された結果は全て、臀部の「大きさ」よりも「形状」の方が、体の代謝の変化とより密接に関係していることを示唆しているという。Thanaj氏は、「臀部の形状の変化に男女差が見られるということは、同じ疾患でも性別によって、生物学的反応に異なる影響が生じることを意味している。このような差異は特に、2型糖尿病患者で顕著に現れるようだ」と述べている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。(HealthDay News 2025年11月25日) https://www.healthday.com/health-news/diabetes/your-butts-shape-might-predict-frailty-diabetes-risk Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock