GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)が肥満症治療に使われるようになったことで、肥満関連がんに対する同薬のリスク抑制効果に期待する声もあったが、そのような効果はほとんど認められないことを示唆する研究結果が報告された。米ノースウェル・ヘルスのCho-Han Chiang氏らが行ったシステマティックレビューとメタ解析の結果であり、詳細は「Annals of Internal Medicine」に12月9日掲載された。 この研究では、PubMed、Embase、Web of Science、Scopusなどの文献データベースに、それぞれのスタートから2025年8月までに収載された論文を対象とする検索が行われた。GLP-1RAの使用と13種類の肥満関連がん(甲状腺、膵臓、大腸、胃、食道、肝臓、胆嚢、乳房、卵巣、子宮内膜などのがん)のリスクとの関連を検討したランダム化プラセボ対照試験の研究報告を抽出。9万4,245人が含まれる48件の研究報告をメタ解析の対象とした。解析の結果、GLP-1RAは肥満関連がんのリスクに対して、ほとんど、あるいは全く影響を与えていないことが示された。 この結果についてChiang氏はNBCニュースの取材に対し、「われわれの研究手法では、GLP-1RAががんのリスクを抑制しないと結論付けられるものではない」と語っている。同氏はまた、「GLP-1RAはおそらく、がんのリスクを高めることはないと思う」と付け加えている。 これまでに行われた観察研究では、GLP-1RAががん予防に役立つ可能性を示唆する結果が報告されてきていた。しかしそれらの研究は比較対照試験ではなく、既にある患者データを解析したものであり、GLP-1RA治療の対象となりやすく、比較的健康状態の良好な患者が多く含まれていた可能性がある。 ただし、今回の研究結果を受けて複数の専門家が、より長期的な研究の必要性を指摘している。それらの専門家は、多くのがんはゆっくりと進行するため、追跡期間が1~2年程度に限られている研究では、がんリスクへの影響を把握できないと考えている。例えば、本研究には関与していない米バージニア・コモンウェルス大学(VCU)のKandace McGuire氏はNBCニュースに対して、「特に乳がんや甲状腺がんのような進行の遅いがんに対するGLP-1RAの影響を知ろうとする場合、はるかに長い期間にわたる追跡が必要だ」と語っている。 一方、Chiang氏は本報告に関連して、まれな甲状腺がんなどの既往歴または家族歴のある人は一部のGLP-1RAの使用を避けるよう、米食品医薬品局(FDA)が警告していることにも言及している。なお、FDAのこの警告はげっ歯類を用いた過去の研究に基づくものであり、動物実験の結果がそのままヒトに当てはまるとは限らない。 他方、今回の研究報告については別の角度からのコメントも聞かれる。VCU付属の医療ネットワークであるVCUヘルスで減量医療プログラムを統括するSusan Wolver氏は、「私のもとに『がんのリスクを下げるためGLP-1RAを処方してほしい』と訪れる患者はいない」と、NBCニュースの取材に答えている。また複数の医師が、血糖管理以外の目的でGLP-1RAを使用している患者の大半は、体重管理または心不全や睡眠時無呼吸の治療目的での使用だとしている。 いずれにしても研究者らは、GLP-1RAのがんリスクに対する影響に関して最終的な結論を得るために、より長期の臨床試験が必要であることを指摘している。(HealthDay News 2025年12月10日) https://www.healthday.com/health-news/cancer/glp-1-medications-show-little-effect-on-cancer-study-shows Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock