2型糖尿病の合併症の中で心血管疾患などについては、糖尿病の診断基準に至らない軽度の高血糖状態である「前糖尿病」の段階でも増加することが知られている。しかし前糖尿病が寛解(血糖値が正常化)すると、そのリスクが有意に低下することを示すデータが報告された。心血管死や心不全入院などが半減するという。英キングス・カレッジ・ロンドン(KCL)のAndreas Birkenfeld氏らの研究によるもので、詳細は「The Lancet Diabetes & Endocrinology」に12月12日掲載された。 前糖尿病では心血管疾患や心不全のリスクが高いため、主として減量を目指した食事療法や運動療法などの生活習慣改善が推奨されている。ただし、そのような生活習慣改善が、心血管疾患などのリスクの抑制につながるのかという点については、依然として十分なエビデンスがない。単に生活習慣を改善するだけでなく、それによって前糖尿病状態が寛解することが重要であるとする考え方もある。これらを背景としてBirkenfeld氏らは、糖尿病予防に関する2件の研究(米国で行われたDPPOSと中国で行われたDaQingDPOS)のデータを事後解析し、前糖尿病寛解の予後への影響を検討した。 DPPOSでは2,402人中275人(11.5%)が、介入の1年後に寛解に到達していた。中央値20年の追跡で、寛解に到達していた参加者の心血管死または心不全入院の発生率は1,000人年当り1.74であったのに対し、寛解に至らなかった参加者は同4.17であり、前者の方が有意に少なかった(P=0.013)。結果に影響を及ぼし得る因子を調整後、寛解に到達した参加者のリスクは5割以上低いことが分かった。同様の結果はDaQingDPOSでも確認され、寛解に到達していた参加者ではやはり、5割以上のリスク低下が示された。 これらの結果を基に著者らは、「前糖尿病の寛解達成は、その後数十年間にわたる心血管死や心不全入院のリスク半減と関連していた。前糖尿病に対する介入において、寛解達成を目標とすることが、心血管疾患予防への新たなアプローチとなる可能性がある」と結論付けている。 本研究の背景についてBirkenfeld氏は、「長年にわたり、前糖尿病の人は体重を減らし運動量を増やして健康的な食生活を送ることで、心臓の発作や早期死亡を予防できると言われてきた。そのような生活習慣の改善は確かに有益だが、それによって前糖尿病の人の心臓発作が減り死亡率が低下するというエビデンスはなかった」と語っている。実際、研究者によると近年は、前糖尿病の人の生活習慣改善では心臓病のリスクは低下しないと考えられるようになってきていたという。 このような状況の中で見いだされた今回の研究結果のインパクトについてBirkenfeld氏は、「現在の予防医学における最大の仮説の一つに疑問を投げかけるものだ」とコメントしている。その上で同氏は、「心臓発作や早期死亡を防ぐために今後は、血圧管理、コレステロール管理、禁煙と並び前糖尿病を寛解に導くことが、第4の主要な一次予防策として位置付けられていくのではないか」と述べている。(HealthDay News 2025年12月22日) https://www.healthday.com/health-news/diabetes/reversing-prediabetes-key-to-protecting-heart-health-experts-say Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock