加工食品として流通しているパンやピザなどの塩分が減ったとしても、それに気づく人はいないかもしれない。しかし、人々の体は間違いなくその変化に反応するようだ。減塩食品の普及によって、国民の心臓病や脳卒中のリスクが低下した可能性を示唆する欧州発の2件の論文が、「Hypertension」に1月26日掲載された。 一つ目の論文はフランス国立公衆衛生局のClémence Grave氏らによるもので、パンに含まれる食塩を減らすことで、毎年約1,200人のフランス人の命が救われただろうと推測している。同国では2022年に、政府とパン製造業界との間で食塩含有量を減らすための自主的な協定が結ばれており、今回の研究ではその潜在的な影響が調査された。なお、パンは意外なほど食塩含有量が多く、特にバゲット(最も一般的なフランスパン)には、1日当たり推奨摂取量の約25%の食塩が含まれているという。 2023年までに同国で製造されるパンの大半は新しい基準を満たしており、その影響もあり、フランス国民の1日の食塩摂取量は約350mg減少したとのことだ。その結果、心臓関連死は年間約1,186人減少したと推定され、心臓病や脳卒中による入院の減少という変化も現れている。 論文の筆頭著者であるGrave氏は、「この減塩対策は、フランス国民にほとんど気づかれなかった。われわれの研究結果は、そのようなわずかな変化にもかかわらず、このような対策が公衆衛生に大きな影響を与える可能性のあることを示している」と総括。また、「このアプローチは、個人の行動変容に依存しないという点で特に力強い。個人の行動変容を引き起こしてそれを持続させることはしばしば困難だが、この手法であれば、より健康的な食環境が自然に創出される」と解説している。 二つ目の論文は英オックスフォード大学のLauren Bandy氏らによるもので、同国の減塩施策の推進によって、20年間で約10万件の心臓病と2万5,000件の脳卒中を予防できると予測している。同国では2024年までに、さまざまな加工食品に含まれている食塩を削減する数値目標を設定していた。この施策の対象食品には、パン、チーズ、肉、スナックなどの食料品84品目に加え、ハンバーガー、カレー、ピザなどのテイクアウト食品24品目が含まれている。 Bandy氏らの試算によると、この減塩施策が完全に達成された場合、英国民の1日当たりの食塩摂取量は平均6,100mgから4,900mgへと、約18%減少すると考えられ、その結果、前記のように心臓病や脳卒中の発症が大きく減る可能性があるという。論文の筆頭著者である同氏は、「ほかの国と同様に英国でも心血管疾患が主要な死亡原因である。英国の食品会社が塩分削減目標を完全に達成することにより、英国民は食習慣を変える必要もなく、心血管疾患と死亡リスクを大きく抑制でき、医療費を削減できるはずだ」と述べている。その上で同氏は、「食品業界は減塩に関してまだ多くの進歩を遂げる必要があることも明らかであり、改善の余地は大いにある」と付け加えている。(HealthDay News 2026年1月28日) https://www.healthday.com/health-news/cardiovascular-diseases/cutting-salt-in-prepared-foods-can-protect-nations-heart-health-european-studies-find Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock