糖尿病などの治療に用いられているSGLT2阻害薬(SGLT2-i)という薬に、老化した腎臓を保護するように働く可能性があることが報告された。米MDI生物学研究所のHermann Haller氏らの研究によるもので、詳細は「Kidney International」3月号に掲載された。 この研究では、寿命がわずか4~6カ月のアフリカンターコイズキリフィッシュという小魚が用いられた。この魚は非常に老化が速いため、わずか数週間の研究でヒトの数十年分に相当する加齢現象を観察することができる。研究の結果、SGLT2-iの投与によって、加齢に伴う腎臓の変化が抑えられ、腎臓の健康が維持されることが示された。論文の上席著者であるHaller氏は、「SGLT2-iは糖尿病の有無にかかわらず、心臓や腎臓に対して保護的に作用することが既に知られているが、その作用のメカニズムはこれまで十分明らかにされていなかった」と語っている。 SGLT2-iを投与しない場合、この魚の腎臓には人間の腎臓と非常によく似た加齢変化が観察された。具体的には、腎臓内の毛細血管が少なくなり、ろ過システムがダメージを受け、炎症が強まり、細胞のエネルギー産生に支障が生じた。しかしSGLT2-iを投与した魚では、これらの変化が少なく、血流やろ過機能、エネルギー産生機能も正常に維持されていた。また、炎症抑制や細胞間のコミュニケーション改善といった作用も観察された。Haller氏は、「これまでの研究でSGLT2-iは血糖降下作用を上回るメリットをもたらすことが示されてきているが、それは今回明らかになったさまざまな同薬の機序が、疾患の病態の上流に働きかけるためではないか」と述べている。 SGLT2-i投与の有無による最大の違いの一つは毛細血管に認められた。同薬を投与されていない魚は加齢とともに毛細血管が徐々に失われていき、その結果、腎臓の細胞は酸素を得ることが困難になり、エネルギー産生に支障が生じ始めた。一方で同薬を投与された魚はより多くの毛細血管が維持され、エネルギー産生の改善と炎症抑制に関連する遺伝子の発現が若い個体に近い状態を示した。 論文の筆頭著者であるハノーバー医科大学(ドイツ)のAnastasia Paulmann氏は、「急速に老化する動物モデルを用いた研究の結果、これほど明確なSGLT2-iの影響が現れたことは衝撃的だった。最も驚いたのは、機序が一見単純そうな同薬が、血管やエネルギー代謝、炎症をはじめ、腎臓内で互いに関連して働くさまざまなシステムに影響を及ぼすことだ」と、本研究のインパクトを強調している。 研究者らは、老化の速いこの魚を研究に用いることで、マウスなどを用いるよりも迅速に新しい治療法を検討できるのではないかと考えている。Haller氏らの研究チームでは今後、既にダメージが進行している腎臓の修復にもSGLT2-iが役立つか否かの検討、および治療開始のタイミングの重要性に関する研究を予定している。(HealthDay News 2026年2月5日) https://www.healthday.com/health-news/kidney-health/diabetes-drug-may-slow-kidney-aging-study-in-fast-aging-fish-finds Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock