米国では、GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)のセマグルチドが肥満症治療薬として承認されて以降、中毒情報センターへの電話相談が急増しているという実態が報告された。その多くは、投与量を間違えてしまったという相談だという。米テキサス大学サンアントニオ校のJordan Miller氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Medical Toxicology」4月号に掲載された。GLP-1RAは当初、2型糖尿病(T2DM)の治療薬として上市されたが、米国では2021年に肥満症治療薬としても承認され、それを機に処方が拡大した。特に、週1回皮下注射するタイプのセマグルチドが承認された後に、より顕著な増加が生じた。GLP-1RAの副作用として、消化器症状が高頻度に生じることは、T2DM治療に用いられていた時点で明らかにされていた。しかし、肥満症治療目的で使用されるようになって以降に、薬の使用に伴う問題の発生状況がどのように変化したかは十分研究されていない。これを背景にMiller氏らは、中毒情報センターで受け付けた症例情報が集約されている、全米中毒データシステム(NPDS)のデータを用いた検討を行った。解析対象期間は2012~2023年とし、米食品医薬品局(FDA)が週1回投与タイプのセマグルチドを肥満症治療薬として承認した2021年6月4日以降の変化を評価するため、同年7月1日を境に承認前後の期間に分けた。GLP-1RA関連の相談件数や患者背景が、同薬の承認前後でどのように変化したかを解析した。対象期間中に報告されたGLP-1RA関連の相談は1万33件だった。このうち承認前は3,113件であったのに対して、承認後は6,920件であり約2.2倍となっていた。患者の年齢は、承認前が57.0±13.3歳、承認後は51.6±14.7歳と有意に若年化し、女性の割合は68.9%から78.2%へと有意に上昇していた(いずれもP<0.001)。報告件数をGLP-1RAの種類別に見た場合、承認前はリラグルチドが33.9%で最多であり、次いでデュラグルチドが29.5%、セマグルチドは24.6%で3位だった。しかし承認後はセマグルチドが64.2%を占め、次いでデュラグルチドが12.7%、リラグルチドが8.8%の順に変化していた。著者らは、セマグルチド関連の相談増加の背景として、同薬への注目度の高まりや利用者の急増が影響した可能性を挙げている。報告事例の多くは患者の意図的な不適切使用ではなく、投与量などを誤ってしまったことによるものだった。頻繁に報告されていた誤りには二つのパターンがあり、一つはセマグルチドを週1回ではなく毎日注射してしまったというもの、もう一つは段階的に増量する手順を守らず、最初から最大量を注射してしまったというものだった。報告された症状の大半は軽度の消化器症状であったが、医療機関で管理された、または医療機関への紹介を要した患者の割合は、承認前の23.0%から承認後は33.5%へ増加していた。著者らは、「報告に見られたミスの多くは予防できる内容であり、患者教育の改善によって減らすことができる」と述べている。(HealthDay News 2026年6月25日) https://www.healthday.com/health-news/public-health/glp-1-weight-loss-boom-linked-to-surge-in-poison-control-calls Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock (参考情報)Abstract/Full Texthttps://link.springer.com/article/10.1007/s13181-026-01121-z