筋力増強を目的に利用されることも多いサプリメントの一つであるクレアチンは、うつ病の治療にも役立つのだろうか? このトピックに関する既報研究をまとめた、オタワ大学(カナダ)のBassam Jeryous Fares氏らによる短報が、「Brain Medicine」に6月30日付で掲載された。それによると、クレアチンがうつ病治療のサポートに有効な可能性はあるものの、十分なエビデンスはまだ得られていないという。クレアチンは、肉や魚などの食品に含まれているアミノ酸誘導体で、細胞のエネルギー代謝に重要な役割を果たしている。筋力増強作用があることから、筋力トレーニングをしている人の間で、サプリメントとして広く利用されている。このクレアチンは脳でのエネルギー利用にも関わっていて、気分障害や統合失調症などの精神疾患患者では脳内のクレアチン代謝の変化が観察されるという報告もある。そのため理論的には、クレアチンの摂取が精神疾患の治療をサポートする可能性もある。Fares氏らは、既報文献のレビューによりこの点を検討した。レビューの対象には、ランダム化比較試験(RCT)の報告が5件含まれていた。それらは、米国、イスラエル、韓国、インド、ブラジルで1件ずつ実施され、研究参加者は合計238人(クレアチン群126人、プラセボ群112人)、平均年齢36±14歳、男性26.0%だった。4件は大うつ病性障害(MDD)患者を対象とし、他の1件は大うつ病エピソードのある双極症患者を対象としていた。MDD患者を対象に実施された1件のRCTは、抗うつ薬であるエスシタロプラムにクレアチン5g/日を追加し8週間介入した結果、プラセボを追加した群よりもうつ病の症状が改善することを示していた。別のMDD患者対象RCTでは、認知行動療法(CBT)とクレアチンの並行介入が、CBTとプラセボによる介入よりも症状改善に有効であることを報告していた。ただし、双極症患者を対象とする研究を含む他の3件のRCTは、有意な効果を示していなかった。クレアチンの忍容性については全体的に見ておおむね良好で、副作用は胃腸の不快感などの軽度なものがほとんどであった。しかし、双極症患者対象研究において、クレアチン群の2人に軽躁状態または躁状態が発現したと報告されていた。今回のレビューの結果について研究者らは、「クレアチンは大うつ病の補助療法として有望な可能性がある一方で、エビデンスは一貫しておらず、より大規模かつ長期間のRCTが必要」と述べている。論文の筆頭著者であるFares氏も、「レビューで観察されたシグナルは興味深いものではあるが、結論を導き出すものではない。5件のRCTのうち2件では有効性が示された一方、残る3件では有意な効果は認められなかった」と総括。その上で、「このような結果は、臨床診療を変えるほどのエビデンスがまだ蓄積されていないことを意味するものだ。むしろこのトピックに、さらなる探求を進めるだけの価値があることを示唆する結果と言える」としている。(HealthDay News 2026年7月1日) https://www.healthday.com/health-news/mental-health/can-a-popular-muscle-supplement-help-treat-depression Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock (参考情報)Abstract/Full Texthttps://genomicpress.kglmeridian.com/view/journals/brainmed/aop/article-10.61373-bm026l.0039/article-10.61373-bm026l.0039.xml