脊髄刺激療法(SCS)という治療により、脳卒中患者の腕の筋力と可動性が改善したとする報告が、「Nature Medicine」に6月4日付で掲載された。米ピッツバーグ大学医療センターのMarco Capogrosso氏らが行った小規模な研究によるもので、参加者の中には手や指の動きが良くなった人もいたという。論文の共同上席著者の1人である同氏は、「SCSは補助的な技術として機能するもので、脊髄を刺激することで脳と脊髄の間に残存する神経結合が効率的に機能し、人々はよりスムーズに動けるようになる」と説明。また、「このアプローチは、脳卒中発症から何年も経った患者の腕の動きを迅速に改善することを目的としている」という。研究者らによると、米国において脳卒中は腕のまひの主要な原因であり、毎年約40万人が慢性的な腕や手の筋力低下を発症しているとのことだ。そして、標準的なリハビリテーションでは、十分な改善を得るために必要な訓練量を確保することが難しく、それがSCSの可能性に着目した背景だとしている。SCSは、脊髄の神経線維に電気パルスを送り、脳と筋肉の連携を強化することを目指す治療である。脳卒中後の上肢機能の回復を目的にSCSを用いた臨床試験はこれまでになく、本研究は、この手法を検討した初めての臨床試験だと研究者らは述べている。本研究では、7人の参加者が頸髄に2本の電極リードを片側に埋め込む手術を受け、4週間留置した。その後、SCSを併用した運動活動を含む計8.6時間の訓練を行い、そのうち5.5時間はSCSをオンにした状態で実施した。その結果、障害の程度にかかわらず、参加者全員で刺激を与えると筋力が直ちに改善した。また、脳卒中によって損傷した神経に起因する筋肉の硬直も軽減された。さらに、7人中3人は、手や指の動きが改善した。論文の共著者の1人である同大学のGeorge Wittenberg氏は、「われわれが確認した改善の程度は、ごくわずかなもののように見えるかもしれない。しかし臨床的な視点に立てば、腕の筋力やコントロール能力が少し改善するだけで、脳卒中患者の日常生活に大きな違いをもたらす可能性がある。シャツのボタンを自分で留めたり、手を開いたりするなど、患者本人が大切にしていた活動の再開に役立つ変化が生まれるならば、それは非常に大きな意味を持つ」と話している。ただし研究者らは、SCSの効果を持続させるためには、刺激を継続する必要があることを付け加えている。今回の研究で、刺激装置のスイッチをオフにすると運動機能が低下することが示されたという。研究チームは現在、脳卒中後の症状に対するSCSの長期的な影響を評価するため、より大規模な臨床試験の参加者を募集している。Capogrosso氏は、「今回の論文は実現可能性を調査した研究初期段階の結論であり、臨床応用に向けた重要な一歩である。われわれのゴールは臨床の現場だけでなく、日常生活の中で患者が使える技術を開発することだ」と語っている。(HealthDay News 2026年8月20日) https://www.healthday.com/health-news/neurology/spinal-cord-stimulation-improves-arm-strength-mobility-in-stroke-survivors Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock (参考情報)Abstract/Full Texthttps://www.nature.com/articles/s41591-026-04435-1 Press Releasehttps://www.upmc.com/media/news/060426-pitt-spinal-cord-stimulation-stroke-arm-recovery