大気汚染が進むと子どもの自閉症リスクが高まる可能性があることが、サイモンフレーザー大学(カナダ)のLief Pagalan氏らによる新たな研究で報告された。妊娠中に一酸化窒素などの自動車関連の大気汚染物質に曝露すると、生まれた子どもが5歳までに自閉症スペクトラム障害(ASD)と診断される確率が高いことが分かったという。研究の詳細は「JAMA Pediatrics」11月19日オンライン版に掲載された。米疾病対策センター(CDC)の調べでは、米国では小児の59人に1人に何らかの自閉症がみられる。症状の程度には大きな差があるが、一部の小児は社交面やコミュニケーションの問題を抱えている。研究者の間ではその発症に環境因子の関与が指摘されており、大気汚染に焦点を当てた研究も複数実施されている。.Pagalan氏らは今回、カナダのバンクーバーで2004~2009年に出生した小児とその母親13万2,256組を対象に、妊娠中の母親の微小粒子状物質(PM2.5)と一酸化窒素、二酸化窒素の3種類の大気汚染物質への曝露量と子どもの自閉症との関連を調べた。.その結果、調査対象とした小児のうち1%(1,307人)が5歳までにASDと診断されていた。子どもの性別や出生月、母親の年齢や出生地、居住地(都市部)、所得などの因子を考慮して解析した結果、妊娠中の一酸化窒素への曝露だけが子どものASDリスクと関連することが分かった。ただし、その影響は小さく、妊娠中の一酸化窒素の曝露量が11ppb増加するごとに子どものASDリスクは7%増加していた。一方、妊娠中のPM2.5または二酸化窒素への曝露と子どものASDとの間に関連はみられなかった。.この結果について、Pagalan氏は「これらの因果関係を裏付けるものではなく、他の大気汚染物質が自閉症リスクに関与する可能性を否定するものではない。また、バンクーバーの大気汚染レベルは世界的にも低いと考えられている」と説明している。その上で、「ASDには治療法がないため予防が重要となる。しかし、大気汚染は避けることが難しいため、これらの関連は公衆衛生上の重大な課題と考えるべきだ」と述べている。.自閉症と環境因子との関連については、研究が始まったばかりで解明されているわけではないが、今回の結果は米国やイスラエル、台湾で実施されたこれまでの研究結果と一致しているという。「環境因子が免疫系や内分泌系に影響を及ぼす以外にも、酸化ストレスや炎症を引き起こし、子どもの神経発達に影響するとの仮説が立てられている」とPagalan氏は説明している。.自閉症の啓発と研究を進める非営利団体の米国Autism SpeaksのThomas Frazier氏は「いずれの研究でもASDに対する大気汚染曝露の影響はわずかしか認められていないが、これは汚染レベルの評価の精度が低く、胎児への生物学的な曝露データが乏しいことによると考えられる」と指摘している。また、同氏は「妊婦の一酸化窒素の曝露量を減らせば子どもの自閉症リスクが低減するのか否かについては、さらに検討を重ねる必要がある」と付け加えている。(HealthDay News 2018年11月19日).https://consumer.healthday.com/cognitive-health-information-26/autism-news-51/does-air-pollution-raise-autism-risk-739809.html.Copyright © 2018 HealthDay. All rights reserved.
大気汚染が進むと子どもの自閉症リスクが高まる可能性があることが、サイモンフレーザー大学(カナダ)のLief Pagalan氏らによる新たな研究で報告された。妊娠中に一酸化窒素などの自動車関連の大気汚染物質に曝露すると、生まれた子どもが5歳までに自閉症スペクトラム障害(ASD)と診断される確率が高いことが分かったという。研究の詳細は「JAMA Pediatrics」11月19日オンライン版に掲載された。米疾病対策センター(CDC)の調べでは、米国では小児の59人に1人に何らかの自閉症がみられる。症状の程度には大きな差があるが、一部の小児は社交面やコミュニケーションの問題を抱えている。研究者の間ではその発症に環境因子の関与が指摘されており、大気汚染に焦点を当てた研究も複数実施されている。.Pagalan氏らは今回、カナダのバンクーバーで2004~2009年に出生した小児とその母親13万2,256組を対象に、妊娠中の母親の微小粒子状物質(PM2.5)と一酸化窒素、二酸化窒素の3種類の大気汚染物質への曝露量と子どもの自閉症との関連を調べた。.その結果、調査対象とした小児のうち1%(1,307人)が5歳までにASDと診断されていた。子どもの性別や出生月、母親の年齢や出生地、居住地(都市部)、所得などの因子を考慮して解析した結果、妊娠中の一酸化窒素への曝露だけが子どものASDリスクと関連することが分かった。ただし、その影響は小さく、妊娠中の一酸化窒素の曝露量が11ppb増加するごとに子どものASDリスクは7%増加していた。一方、妊娠中のPM2.5または二酸化窒素への曝露と子どものASDとの間に関連はみられなかった。.この結果について、Pagalan氏は「これらの因果関係を裏付けるものではなく、他の大気汚染物質が自閉症リスクに関与する可能性を否定するものではない。また、バンクーバーの大気汚染レベルは世界的にも低いと考えられている」と説明している。その上で、「ASDには治療法がないため予防が重要となる。しかし、大気汚染は避けることが難しいため、これらの関連は公衆衛生上の重大な課題と考えるべきだ」と述べている。.自閉症と環境因子との関連については、研究が始まったばかりで解明されているわけではないが、今回の結果は米国やイスラエル、台湾で実施されたこれまでの研究結果と一致しているという。「環境因子が免疫系や内分泌系に影響を及ぼす以外にも、酸化ストレスや炎症を引き起こし、子どもの神経発達に影響するとの仮説が立てられている」とPagalan氏は説明している。.自閉症の啓発と研究を進める非営利団体の米国Autism SpeaksのThomas Frazier氏は「いずれの研究でもASDに対する大気汚染曝露の影響はわずかしか認められていないが、これは汚染レベルの評価の精度が低く、胎児への生物学的な曝露データが乏しいことによると考えられる」と指摘している。また、同氏は「妊婦の一酸化窒素の曝露量を減らせば子どもの自閉症リスクが低減するのか否かについては、さらに検討を重ねる必要がある」と付け加えている。(HealthDay News 2018年11月19日).https://consumer.healthday.com/cognitive-health-information-26/autism-news-51/does-air-pollution-raise-autism-risk-739809.html.Copyright © 2018 HealthDay. All rights reserved.