近年、医療分野では人工知能(AI)の活用が急速に広がっている。米マサチューセッツ工科大学(MIT)のAdam Yala氏らは、AI技術を活用した乳がんリスクの予測モデルを開発。乳がんの予測精度が大きく向上したと「Radiology」5月7日オンライン版に発表した。これまで、乳がんリスクの予測には、乳腺濃度や乳がんの家族歴など特定の因子を考慮した手法が用いられてきた。特に家族歴は重要で、母親または姉妹が乳がんと診断された女性は、そのリスクは平均よりも高いと判定される。しかし、Yala氏によれば、現行の乳がんリスクの予測モデルの精度には限界があった。.これまでの研究では、メラノーマとほくろの判別など、一部の腫瘍の診断精度は、コンピューターが医師を上回る可能性が示されている。そこで、Yala氏らは、AI技術を活用して乳がんリスクの予測モデルの構築を試みた。.Yala氏らは、まず、脳の神経回路の仕組みを模した「深層学習(ディープラーニング)」を用いて、AIに乳がん検診を受けた女性の7万枚以上のマンモグラフィ画像を読み込ませて学習させた。同氏らは今回、マンモグラフィ画像のみを使用したモデルと年齢や家族歴、乳腺濃度といった従来の因子も考慮した「ハイブリッド」モデルの2つの深層学習モデルを開発した。.次に、Yala氏らは、これらの深層学習モデルによる乳がんリスクの診断精度を、「Tyrer-Cuzickモデル」と呼ばれる従来の乳がんリスク予測ツールと比較検討した。試験段階では別の約8,700枚のマンモグラフィ画像を使用し、このうち約3%はその後5年以内に乳がんと診断されていた。.分析の結果、深層学習モデルはいずれも、従来のモデルよりも乳がんリスクの予測に優れることが分かった。予測精度はハイブリッドモデルの方が高く、乳がんを発症した女性の約3分の1を上位10%の高リスクと判定していた。一方、従来のモデルでは、高リスクと判定できたのは全体の18%にすぎなかった。.さらに、これらの深層学習モデルでは、従来のモデルとは異なり、黒人女性でも白人女性と同程度に乳がんリスクを予測できることが明らかになった。このことから、「新しい深層学習モデルは、乳がんリスクの予測精度が向上するだけでなく、人種差の解消にもつながる可能性がある」とYala氏は指摘している。.一方、この研究には関与していない米IBMワトソン・ヘルスのArkadiusz Sitek氏は「現時点では、AIの実用性は確立していない」と述べている。例えば、AIがマンモグラフィ画像からどのように乳がんリスクを判定しているのか、その詳細を知ることができないといった問題が挙げられるという。「女性に『あなたは乳がんリスクがとても高いです。理由は分かりませんが、コンピューターがそう判定しています』と話している場面を想像してほしい」と同氏は話す。.また、Sitek氏は、深層学習モデルの精度については、別の施設で撮影したマンモグラフィ画像を用いて、さらに検証する必要があるとしている。同氏は「AIは医師に取って代わるものではなく、診断効率を向上させ、誤診を減らすための補助として役立つだろう」と述べている。(HealthDay News 2019年5月7日).https://consumer.healthday.com/cancer-information-5/breast-cancer-news-94/is-ai-a-new-weapon-in-breast-cancer-detection-746024.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.
近年、医療分野では人工知能(AI)の活用が急速に広がっている。米マサチューセッツ工科大学(MIT)のAdam Yala氏らは、AI技術を活用した乳がんリスクの予測モデルを開発。乳がんの予測精度が大きく向上したと「Radiology」5月7日オンライン版に発表した。これまで、乳がんリスクの予測には、乳腺濃度や乳がんの家族歴など特定の因子を考慮した手法が用いられてきた。特に家族歴は重要で、母親または姉妹が乳がんと診断された女性は、そのリスクは平均よりも高いと判定される。しかし、Yala氏によれば、現行の乳がんリスクの予測モデルの精度には限界があった。.これまでの研究では、メラノーマとほくろの判別など、一部の腫瘍の診断精度は、コンピューターが医師を上回る可能性が示されている。そこで、Yala氏らは、AI技術を活用して乳がんリスクの予測モデルの構築を試みた。.Yala氏らは、まず、脳の神経回路の仕組みを模した「深層学習(ディープラーニング)」を用いて、AIに乳がん検診を受けた女性の7万枚以上のマンモグラフィ画像を読み込ませて学習させた。同氏らは今回、マンモグラフィ画像のみを使用したモデルと年齢や家族歴、乳腺濃度といった従来の因子も考慮した「ハイブリッド」モデルの2つの深層学習モデルを開発した。.次に、Yala氏らは、これらの深層学習モデルによる乳がんリスクの診断精度を、「Tyrer-Cuzickモデル」と呼ばれる従来の乳がんリスク予測ツールと比較検討した。試験段階では別の約8,700枚のマンモグラフィ画像を使用し、このうち約3%はその後5年以内に乳がんと診断されていた。.分析の結果、深層学習モデルはいずれも、従来のモデルよりも乳がんリスクの予測に優れることが分かった。予測精度はハイブリッドモデルの方が高く、乳がんを発症した女性の約3分の1を上位10%の高リスクと判定していた。一方、従来のモデルでは、高リスクと判定できたのは全体の18%にすぎなかった。.さらに、これらの深層学習モデルでは、従来のモデルとは異なり、黒人女性でも白人女性と同程度に乳がんリスクを予測できることが明らかになった。このことから、「新しい深層学習モデルは、乳がんリスクの予測精度が向上するだけでなく、人種差の解消にもつながる可能性がある」とYala氏は指摘している。.一方、この研究には関与していない米IBMワトソン・ヘルスのArkadiusz Sitek氏は「現時点では、AIの実用性は確立していない」と述べている。例えば、AIがマンモグラフィ画像からどのように乳がんリスクを判定しているのか、その詳細を知ることができないといった問題が挙げられるという。「女性に『あなたは乳がんリスクがとても高いです。理由は分かりませんが、コンピューターがそう判定しています』と話している場面を想像してほしい」と同氏は話す。.また、Sitek氏は、深層学習モデルの精度については、別の施設で撮影したマンモグラフィ画像を用いて、さらに検証する必要があるとしている。同氏は「AIは医師に取って代わるものではなく、診断効率を向上させ、誤診を減らすための補助として役立つだろう」と述べている。(HealthDay News 2019年5月7日).https://consumer.healthday.com/cancer-information-5/breast-cancer-news-94/is-ai-a-new-weapon-in-breast-cancer-detection-746024.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.